労働安全衛生法の改正により、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が広がります。施行期日は2028年(令和10年)4月1日です。一方で、労働者数50人以上の事業場では2015年からすでに義務とされており、施行を待って動き出す話ではありません。
自社にいつ義務が及ぶのか、対象になる労働者をどう数えるのか、そして従業員の回答内容が自分の手元に届くことになるのか。この記事では、これらの疑問に厚生労働省の資料にもとづいて順に答えていきます。実施は1年ごとに1回であるため、施行後の初回実施に間に合わせるには準備の工程を逆算して押さえておく必要があります。
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この記事でわかること
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ストレスチェック義務化の施行期日と、事業場規模ごとの現在地 -
実施の頻度と準備の工程から逆算した、着手すべき範囲 -
ストレスチェックの対象者の数え方と、労働基準監督署への報告の要否を判断する別の基準 -
実施義務・報告義務・守秘義務のうち、どれに罰則があるのか -
個人の結果と集団の結果のうち、会社に提供されるのはどちらか
ストレスチェック義務化は2028年4月1日から50人未満の事業場にも適用される
ストレスチェック義務化とは、労働安全衛生法が事業者にストレスチェックの実施を義務づけることです。
2025年(令和7年)の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェックの実施が義務とされました。施行期日は令和10年4月1日です。押さえておきたいのは、この改正が新たに義務の対象となる事業場を増やすものであり、労働者数50人以上の事業場にとっては2015年から続く義務に変わりがない、という点です。自社がどちらの立場にあるのかを先に確定させてから、準備の内容を検討していきます。
施行期日は2028年(令和10年)4月1日
労働者数50人未満の事業場にストレスチェックの実施義務が及ぶのは、2028年(令和10年)4月1日からです。厚生労働省の資料は、2025年の労働安全衛生法の改正により労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されたこと、およびその施行期日が令和10年4月1日であることを示しています。改正法の公布は令和7年5月14日であり、令和7年が2025年に対応することから、令和10年は2028年にあたります。
なお、施行期日を「公布後3年以内に政令で定める日」と記載した資料もありますが、これは政令で日付が定まる前の記述です。社内の計画に落とすときは、日付が確定している2028年4月1日を基準にしてください。
現在は50人以上の事業場が義務、50人未満は努力義務
改正が施行される前の現在は、常時使用する労働者が50人以上の事業場でストレスチェックの実施が義務であり、50人未満の事業場は当分の間の努力義務とされています。ストレスチェックは2015年から労働安全衛生法により事業者に実施が義務づけられており、50人以上の事業場についてはすでに10年以上にわたって義務が続いている状態です。
つまり、労働者数50人以上の事業場にとって2028年4月1日は新しく義務が始まる日ではありません。2028年という年に目が向くことで、すでに義務の対象である事業場が「まだ対応しなくてよい」と受け取ってしまうと、現行の義務を満たしていない状態が続くことになります。どの労働者を対象に数えるのかは、ストレスチェックの対象者の範囲であらためて確認できます。
自社の事業場が50人以上か50人未満かによって、いま置かれている状況は次のように分かれます。
| 事業場の労働者数 | 現在(施行前) | 2028年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 50人以上 | ストレスチェックの実施は義務 | 義務(変更なし) |
| 50人未満 | 当分の間の努力義務 | ストレスチェックの実施は義務 |
義務化の対象になる事業場は「同一の場所」を単位に判断する
義務の対象かどうかは、企業全体の従業員数ではなく事業場ごとの労働者数で判断します。厚生労働省の資料では、事業場は原則として工場、事務所、店舗など同一の場所にあるものを一の事業場と考え、同一企業であっても場所的に分散している場合は別個の事業場となるとされています。
そのため、全社で200人規模の企業であっても、20人の営業所と30人の店舗はそれぞれ別の事業場として数えます。自社の該当判定を行う際は、まず拠点ごとの労働者数を洗い出すところから始めてください。
なお、事業場ごとの労働者数は採用や異動によって変わるため、該当判定は一度で終わりません。実施は1年ごとに1回であることから、拠点ごとの人数の確認と該当判定を毎年繰り返す作業が発生します。拠点数が多い企業では、この確認自体が担当者の工数になります。
施行までに準備が必要な理由
施行期日が2028年4月1日と聞くと、着手はもう少し先でよいと感じるかもしれません。しかし、ストレスチェックは1年ごとに1回実施するものであり、施行後の初回実施を法令に沿った形で終えるには、その前に済ませておかなければならない工程がいくつもあります。ここでは、準備に時間がかかる理由を実施の頻度と工程の数、そして公的な調査の数値から確認します。
ストレスチェックは1年ごとに1回。施行後の初回実施から逆算して準備する
事業者は1年ごとに1回、ストレスチェック(検査)を実施します。実施の機会が年に一度であるため、施行後の初回実施は、その年度のどこか一時点に定めた実施時期に合わせて動くことになります。そして実施時期を決めるには、その前段の工程が終わっている必要があります。
厚生労働省の資料が示す準備の工程は、次の順序で並んでいます。
- 事業者が実施責任者として、制度導入の方針を表明する
- 社内の実施体制・実施方法について、労働者の意見を聴く
- 社内ルールを作成し、周知する
- 委託先との契約・連絡調整を行う実務担当者を指名する
- ストレスチェックの委託先を選定する
このうち2の意見聴取と3の周知は、労働者に説明して理解を得る工程であり、社内の合意形成の時間が読みにくい部分です。5の委託先の選定も、外部機関から提案を受けて比較検討する時間が必要になります。実施時期から逆算すると、着手すべき時期は施行期日よりかなり手前に来ます。
50人未満の事業場ではストレスチェックの実施が遅れている
厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)では、ストレスチェックの実施状況を事業場規模別に集計しています。労働者数10〜29人の事業所で53.7%、30〜49人で63.3%に対し、50〜99人では93.7%です。50人を境に実施率が大きく変わっており、努力義務とされてきた規模帯で実施が進んでいない状況が読み取れます。

(図:メンタルヘルス対策の現状と課題_ストレスチェック実施 状況(事業場規模別)_産業保健の現状と課題に関する参考資料|厚生労働省)
(出典:産業保健の現状と課題に関する参考資料|厚生労働省)
この数値は令和3年の調査によるもので、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所を100として集計した割合です。全事業所を分母にした実施率ではない点に注意してください。それでも、義務の対象であった50人以上と、努力義務であった50人未満との間に差があること自体は確認できます。
準備を先送りした場合に企業が負うコスト
メンタルヘルス不調が生じた場合、厚生労働省の資料は、その病休期間は平均で約3か月、復職後に再び病休になる割合も約半数であるとしています。小規模事業場にとっては大きな人材の損失となるほか、経営上のリスクにつながるとされています。
労働者数の少ない事業場では、1人が3か月離脱した場合の業務への影響が相対的に大きくなります。代替要員の確保、引き継ぎ、復職後の就業上の配慮といった対応は、いずれも人事労務担当者の工数を必要とします。
背景として、業務災害に係る精神障害の労災補償状況も参考になります。厚生労働省の集計では、令和7年度の請求件数は4,958件、そのうち業務災害と認定された支給決定件数は1,082件でした(いずれも全国集計)。請求件数と支給決定件数は別の指標であり、支給決定件数は当該年度中に決定された件数のうち業務災害と認定されたものを指します。件数の推移には認定基準の改正や請求の動向も関わるため、単一の要因に結びつけて読むことはできませんが、精神障害が労災の対象として扱われる場面が一定の規模で存在することは押さえておきたい点です。
ストレスチェック義務化の対象になる労働者と、労働者数の数え方
義務化への対応では、「誰にストレスチェックを実施するのか」と「自社は労働基準監督署への報告が必要なのか」という2つの問いが出てきます。この2つは、いずれも労働者数を数える話でありながら、数え方の基準が別です。混同すると、報告が必要な事業場が報告をしていないという事態につながります。ここでは対象者の要件を先に確定させ、そのうえで報告の要否の基準を並べて整理します。
対象者は契約期間1年以上かつ週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上
ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」は、次の2つの要件をいずれも満たす者です。一般定期健康診断の対象者と同様で、契約の名称や国籍は問いません。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者であること。期間の定めのある労働契約による者でも、契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者を含む
- その者の1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること
既存の解説では「契約期間が1年未満の労働者は対象外」「所定労働時間の4分の3未満は対象外」という否定形で示されることが多いですが、判定の際は上記の肯定形の要件で確認したほうが迷いません。なお、派遣労働者に対するストレスチェックは、派遣元に実施義務があります。
4分の3未満でも、おおむね2分の1以上の労働者には実施が望まれる
要件を満たさない労働者を対象から外して終わりにする必要はありません。厚生労働省の資料では、1週間の労働時間数が通常の労働者の4分の3未満である労働者であっても、前項1の要件を満たし、労働時間数が通常の労働者のおおむね2分の1以上である者に対しても、ストレスチェックを実施することが望まれるとされています。
つまり、4分の3という線は「実施しなければならない範囲」の境界であって、「実施してよい範囲」の境界ではありません。パートタイム労働者を多く抱える事業場では、派遣社員やパートタイム労働者の取り扱いを整理したうえで、どこまでを実施範囲に含めるかを社内ルールに書いておくと運用が安定します。
労働基準監督署への報告が必要かどうかは、対象者の数え方とは別の基準で判断する
ここが実務上もっとも取り違えやすい部分です。労働基準監督署への報告の要否の基準となる「常時使用している労働者が50人以上」の「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者のように契約期間や週の労働時間によるのではなく、常態として使用されているかどうかで判断します。
そのため、労働時間数が短いアルバイトやパートタイム労働者、派遣先の派遣労働者であっても、継続して雇用し常態として使用していればカウントに含める必要があります。結果として、ストレスチェックの対象者が50人未満であっても、常時使用している労働者が50人以上となり、労働基準監督署への報告が必要となる場合があります。2つの基準の違いを並べると次のとおりです。
| 判断する場面 | 数える対象 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| ストレスチェックを実施する対象者 | 対象者となる労働者 | 契約期間が1年以上(相当)かつ週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上 |
| 労働基準監督署への報告の要否 | 常時使用している労働者 | 契約期間や週の労働時間ではなく、常態として使用されているかどうか。短時間のアルバイト・パートタイム労働者、派遣先の派遣労働者も算入 |
報告書の記載事項や提出の流れは、ストレスチェック結果の報告書の書き方にまとめています。自社が報告の対象かどうかを先に確定させてから、様式の確認に進んでください。
この2つの基準は、人員構成が変わるたびに見直しが必要になります。対象者の名簿と、報告の要否の判定という別の集計を、実施のたびに社内で維持していく作業が発生します。パートタイム労働者や派遣労働者の比率が高い事業場では、この2つの集計を取り違えないよう運用を決めておくことが実務上の課題になります。
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ストレスチェックとは?義務化で会社が求められることの全体像
ストレスチェックとは、労働者がストレスに関する質問票(選択式)に回答し、自身のストレスがどのような状態にあるのかを知ってもらうための簡単な検査です。事業者は1年ごとに1回これを実施し、労働者本人のストレスへの気づきとセルフケアを促すとともに、高ストレスの労働者には医師の面接指導の機会を提供し、集団分析を通じて職場ごとのストレス要因を把握して職場環境の改善につなげます。制度の枠組みを押さえるうえで、ストレスチェック制度の目的と労働者への周知の方法も併せて確認しておくとよいでしょう。
制度の目的はメンタルヘルス不調の未然防止であり、不調者の発見ではない
厚生労働省の資料は、ストレスチェック制度の目的をメンタルヘルス不調の未然防止であり、メンタルヘルス不調者の発見ではないと明記しています。ここを取り違えると、制度の運用そのものが誤った方向に進みます。
「誰が不調なのかを会社が把握するための制度」と理解したまま運用すると、担当者は個人の結果を見ようとし、労働者は正直に回答しなくなります。ストレスチェックは、労働者が安心してありのままを回答できることで本来の予防につながる仕組みであるため、プライバシーが保護される環境づくりが前提になります。会社に提供される結果の範囲は法令で限られています(詳細は後述します)。
義務になるのは検査の実施と面接指導、集団分析と職場環境改善は努力義務
義務化にあたって「どこまでが義務か」を確定させておくと、準備の優先順位が決まります。厚生労働省の資料では、それぞれの位置づけが次のように整理されています。
| 取り組み | 位置づけ | 補足 |
|---|---|---|
| ストレスチェック(検査)の実施 | 義務 | 1年ごとに1回 |
| 検査結果の本人への通知 | 義務 | 実施者から労働者本人へ通知される |
| 医師による面接指導 | 義務 | 高ストレスの労働者から申出があった場合に実施する |
| 集団分析・職場環境改善 | 努力義務 | 事業場規模に関わらず努力義務 |
集団分析と職場環境改善は努力義務ですが、制度の目的が未然防止である以上、個人のセルフケアだけでは対策が完結しません。厚生労働省の資料も、ストレスチェックの結果を集団ごとに分析して職場環境を改善することが重要であるとしています。集団分析の進め方と結果の活用方法を踏まえ、義務の範囲を満たしたうえで努力義務の部分にどこまで取り組むかを決めてください。
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義務化にあたって会社がやるべきことの全体像
ストレスチェック制度の実務は、細かな手順に分解すると10前後の作業になりますが、担当者が全体像を掴むうえでは、準備・実施体制の決定・実施・面接指導・集団分析の5段に束ねて捉えるとわかりやすくなります。ここでは各段で会社が何をするのかを順に見ていきます。委託先に任せられる作業と、事業者が自ら行う必要がある作業を切り分けながら読み進めてください。
準備:方針の表明、労働者の意見聴取、社内ルールの作成と周知
最初に行うのは、事業者が実施責任者として制度導入の方針を表明することです。そのうえで、社内の実施体制・実施方法について労働者の意見を聴き、その結果を踏まえて社内ルールを作成し周知します。方針の表明は、社内ルールの作成・周知の中で行うこともできます。
労働者の意見を聴く場面では、労働者数50人未満の事業場においては労働安全衛生規則第23条の2に基づき、安全または衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会を設けることとされているため、こうした機会を活用する方法が考えられます。
労働者数50人以上の事業場では、この意見聴取の場は衛生委員会等になります。厚生労働省の指針は、事業者がストレスチェック制度に関する基本方針を表明したうえで、事業の実施を統括管理する者、労働者、産業医および衛生管理者等で構成される衛生委員会等において、実施方法および実施状況、それを踏まえた実施方法の改善等について調査審議を行わせることとしています。自社の事業場がどちらに当たるかで、意見を聴く場が変わります。
社内ルールでは、とくに個人情報の取扱いを明確にしておくことが重要です。労働者数50人以上の事業場で作成されるような詳細な規程の形にこだわる必要はありませんが、誰が結果を取り扱い、誰が取り扱わないのかは文書で示しておいてください。より詳しい内容はストレスチェック制度の規程の作成方法を参照してください。
実施体制と委託先の決定:プライバシー保護の観点から原則は外部委託が推奨される
実施体制については、社内で担当者を選任することを前提に考えがちですが、厚生労働省の資料は労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部委託による実施を推奨しています。個人結果等の健康情報の取扱いを外部機関で完結させ、事業場内では取り扱わない形です。
とくに小規模の事業場では社内の人間関係が近く、個人が特定されるリスクが高くなります。自社内で実施事務従事者を選任して健康情報を取り扱う場合、役割の周知と運用の徹底がなされない限り、労働者に不安が生じて協力を得られず、適切な実施が難しくなるとされています。
事業場内には、委託先との契約・連絡調整を行う実務担当者を指名します。実務担当者には衛生推進者または安全衛生推進者を選任することが望まれます。委託先の選定にあたっては、外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、提案内容を確認します(詳細は後述します)。
実施体制に登場する3者の役割と、担える人の条件は次のとおりです。外部委託する場合、ストレスチェックの実施と実施の補助は委託先の外部機関側で担われ、事業場内には実務担当者が残る形になります。
| 役割 | 担うこと | 担える人 |
|---|---|---|
| 実施者 | ストレスチェックの実施 | 医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師。事業場または委託先の外部機関の中から選定する |
| 実施事務従事者 | 実施の補助(調査票の配布・回収、データ入力等)と個人結果の保存 | 健康情報を取り扱うため守秘義務が課される。検査を受ける労働者について解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事できない |
| 実務担当者 | 実施計画・実施管理、委託先との契約・連絡調整 | 衛生推進者または安全衛生推進者が望まれる。ストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないため、人事課長など人事権を持つ者を指名することもできる |
実施:調査票の配布・回収と結果の通知は委託先から直接行われる
労働者への調査票の配布・回収、および個人結果の通知は、委託先から直接行われます。紙の調査票の場合、内容が分からないよう密封された封筒に入れた状態で実務担当者を介して行うことは差し支えありません。
調査票は、法に基づくストレスチェックとして「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を含むことが必要です。独自の項目を選定する場合も3領域に関する項目をすべて含まなければならず、一定の科学的な根拠が求められます。国が推奨するのは57項目の「職業性ストレス簡易調査票」で、これを簡略化した23項目の例もありますが、集団分析が詳細にできない点に留意が必要です。調査票の項目数の考え方も判断の材料になります。
なお、事業者に実施義務がある一方で、労働者に受検義務は課されていません。制度を効果的なものとするため、できるだけ対象者全員が受検することが望まれます。
結果の記録の保存についても押さえておきたい点があります。個人結果の保存は実施事務従事者が担います。そのうえで、ストレスチェック結果の事業者への提供について労働者から同意を得て、実施者からその結果の提供を受けた場合は、労働安全衛生規則第52条の13第2項に基づき、事業者が当該ストレスチェック結果の記録を作成して5年間保存しなければなりません。事業者への提供の同意に係る書面または電磁的記録についても、事業者が5年間保存するようにしてください。逆に、同意が得られなければ結果は事業者に渡らないため、事業者側での保存の対象になりません。
高ストレス者への医師の面接指導と、就業上の措置
高ストレスの労働者は、申し出ることで医師の面接指導を受けることができます。事業者は、申出があった場合に面接指導の実施を医師に依頼し、面接指導に必要な情報をとりまとめて医師に提供します。そして面接指導の結果に基づき医師の意見を聴取し、その意見を踏まえて必要な就業上の措置を実施します。
医師の意見を聴く時期については、厚生労働省の資料が目安を示しています。
事業者は、面接指導が実施された後、面接指導を行った医師から就業上の措置に関する意見を概ね1か月以内には聴くようにしましょう。
ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
就業上の措置として検討するのは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などです。労働者が面接指導の申出をしたことを理由として、当該労働者に不利益な取扱いをしてはならないと定められています。また、事業者は面接指導結果の記録を5年間保存しなければなりません。
高ストレス者を選定する基準は事業場で定めますが、その目安について厚生労働省の資料は次のように述べています。
この比率や割合は面接指導の対象者の選定方針や事業場全体の高ストレス者の比率を勘案し、変更することが可能です。
これは高ストレス者の割合を全体の10%程度とした場合の例と評価基準の点数を示したうえでの記述です。基準の調整には専門的な見地が必要になります。面接指導の実務については、高ストレス者への面談の進め方も参考にしてください。
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集団分析と職場環境改善に取り組む
集団分析は、委託先にストレスチェック結果を集団ごとに集計・分析してもらい、その結果を活用して職場環境の改善に取り組むという流れです。平均値や経年での比較といった方法で、職場のストレスの状況を調べます。
ただし、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません(後述します)。労働者数の少ない事業場では部署単位での分析が成立しないこともあるため、単位の取り方は委託先と相談してください。集団分析の結果の読み方と活用方法も併せてご確認ください。
ストレスチェックの結果はどこまで会社に開示されるのか
義務化の対応で担当者が気にかかるのが「従業員の回答内容が自分の手元に届くことになるのか」という点です。結論から述べると、個人の結果は事業者には提供されません。事業者に提供されるのは、個人が特定されない形で集団ごとに集計・分析した結果です。何が渡り、何が渡らないのかを先に確定させておくと、労働者への説明もしやすくなります。
個人のストレスチェック結果は事業者には提供されない
厚生労働省の資料は、個人結果は事業者には提供されないと明記しています。労働安全衛生法上も、検査を行った医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならないと定められています。
個人結果は委託先の実施者(医師、保健師等)から労働者本人へ通知されます。通知される内容は、ストレスプロフィール、セルフケアのアドバイス、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否かといったものです。
この線引きを支えているのが、実施の事務に従事できる者の限定です。ストレスチェックを受ける労働者に対して直接的な人事権を有する者は、実施事務従事者になれません。一方、個人情報を取り扱わない実務担当者については、人事課長など人事権を持つ者を指名することもできます。
事業者に提供されるのは、個人が特定されない集団ごとの集計・分析結果
事業者に提供されるのは、個人が特定されない方法で集団(事業場、職場等の単位)ごとに集計・分析した結果です。つまり会社が受け取るのは「誰がどう答えたか」ではなく、「どの集団にどのような傾向があるか」という情報です。
このため、職場環境の改善は個人を特定しない前提で進めます。特定の従業員を念頭に置いた対応を検討する場面では、本人からの申出に基づく面接指導や日常の相談対応が入口になります。
集団の単位が下限人数を下回る場合は、原則として提供を受けてはいけない
集団分析には人数の下限があります。集団の単位が10人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。この下限人数の「10人」は在籍労働者数ではなく、実際の受検者数(有効なデータ数)でカウントする必要があります。
労働者数の少ない事業場では、部署や職種で区切ると10人に届かないことが起こります。外部機関が集計・分析を行って事業場に提供する場合は個人を特定できない措置が自動的に講じられますが、単位の設定そのものは事業者側の判断に関わるため、委託先と事前に取り決めておいてください。
実施者と実施事務従事者には罰則付きの守秘義務が課されている
実施者および実施事務従事者は、労働者のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うため、守秘義務が課されており、違反した場合の罰則があります。
条文で確認すると、労働安全衛生法第105条は、ストレスチェック(同法第66条の10第1項の規定による検査)または同条第3項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないと定めています。この第105条に違反した場合、同法第119条第1号により6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。
実施の体制を労働者に説明する際は、結果を取り扱う者が限定されていることと、その者に罰則付きの守秘義務が課されていることの2点を伝えると、受検への理解を得やすくなります。
ストレスチェックを実施しなかった場合のリスクと報告義務
「実施しなかったらどうなるのか」を調べると、罰則の説明が混在して見つかることがあります。労働安全衛生法の罰則を条文で確認すると、罰則が置かれているのは実施義務そのものではなく、報告義務と守秘義務です。ここを切り分けておくと、自社が何を守らなければならないのかが明確になります。
労働基準監督署への報告義務があるのは50人以上の事業場(50人未満は不要)
ストレスチェックの実施結果の労働基準監督署への報告は、労働者数50人以上の事業場に義務付けられており、労働者数50人未満の事業場は不要です。2028年4月1日に実施義務が50人未満の事業場へ広がったあとも、報告義務の対象が50人以上であるという点に変わりはありません。
この報告は労働安全衛生法第100条に基づくもので、報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合は、同法第120条第5号により50万円以下の罰金の対象となります。
前述のとおり、報告の要否を判断する「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者の数え方とは別の基準です。対象者が50人未満であっても報告が必要になる場合があるため、実施の可否とは切り離して確認してください。
守秘義務違反には罰則がある
罰則が明確に置かれているもう1つの義務が守秘義務です。ストレスチェックまたは面接指導の実施の事務に従事した者は、労働安全衛生法第105条により、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないとされ、違反した場合は同法第119条第1号により6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。
この守秘義務は実施の事務に従事した者に課されるものであり、事業者が検査を実施しなかったことに対する罰則ではありません。なお、これらの違反行為が法人の業務に関して行われた場合、行為者を罰するほか、その法人に対しても各本条の罰金刑が科されます(同法第122条)。
罰則以外に事業者が負うリスク
ストレスチェックの実施を定める労働安全衛生法第66条の10は、同法第十二章(罰則)の罰則条文の列挙に現れません。したがって、実施義務そのものに直接の罰則はありません。ただし、罰則がないことは義務がないことを意味しません。
労働契約法は、使用者が労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものと定めています。厚生労働省のQ&Aも、ストレスチェック結果が把握できないからといって、メンタルヘルスに関する企業の安全配慮義務が一切なくなるということはないとしています。実施義務に罰則がないという理由で対応を後回しにしても、事業者が負う配慮の義務は残るという整理になります。
50人未満の事業場が施行までに使える外部の支援
労働者数50人未満の事業場では、産業医を選任していないことも多く、実施体制を社内だけで組み立てるのは負担が大きくなります。厚生労働省の資料も、こうした事業場では原則として外部委託による実施を推奨しています。ここでは委託先を比較するための手順と、公的な支援機関について整理します。
委託先の比較は外部機関に作成を求める書面で行う
委託先の選定にあたっては、外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、提案内容を確認します。この書面をそろえることで、複数の外部機関を同じ観点で比較できるようになります。
確認する観点は、ストレスチェックおよび集団分析を当該外部機関に委託するのか、医師の面接指導はどこに依頼するのかという役割分担が第一です。あわせて、実施方法と料金体系についても確認します。料金については、どこまでが標準サービスでどこからがオプションサービスなのか、別料金とされている内容が適切かという観点で読み比べてください。
調査票については、国が示すもの以外を用いる場合に科学的な根拠が示されているかを確認します。提案を受けてから比較検討し、契約に至るまでには一定の期間が必要になるため、この工程は施行期日から逆算して早めに着手しておきたい部分です。詳しい比較の観点はストレスチェックの外部委託先の選定方法にまとめています。
地域産業保健センターで無料で受けられるのは医師の面接指導などの産業保健サービス
医師の面接指導の依頼先には、外部機関のオプションサービス、地域産業保健センター、産業保健に対応する医療機関等(別途契約)といった選択肢があります。このうち地域産業保健センターは、厚生労働省が設置する小規模事業場の支援機関で、全国350か所に置かれています。面接指導など、医師による産業保健サービスを無料で受けられます。
産業医を選任していない事業場にとって、医師の面接指導の依頼先を確保できる点は実務上の助けになります。一方で、無料で受けられる範囲は面接指導など医師による産業保健サービスです。ストレスチェックの委託先については、前項のとおり外部機関に「サービス内容事前説明書」の作成・説明を求めて比較検討を進めてください。
なお、地域産業保健センターは企業規模として50人未満の小規模事業場を優先して支援を提供しています。大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られる場合には、利用できないことがあります。自社が利用の対象になるかは、最寄りのセンターに確認してください。
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ストレスチェック義務化に関するよくある質問
最後に、義務化の時期や対象、結果の開示範囲について、担当者から挙がりやすい問いをまとめました。
【Q1】ストレスチェック義務化はいつから50人未満の事業場に適用されますか?
2028年(令和10年)4月1日からです。2025年の労働安全衛生法の改正により、努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場についても実施が義務とされました。労働者数50人以上の事業場は2015年からすでに義務であり、この施行を待つ立場ではありません。
【Q2】義務の対象かどうかは、企業全体の従業員数で判断しますか?
事業場ごとに判断します。事業場は原則として同一の場所にあるものを一の事業場と考え、同一企業であっても場所的に分散している場合は別個の事業場となります。まず拠点ごとの労働者数を確認してください。
【Q3】2028年4月以降は、50人未満の事業場も労働基準監督署への報告が必要になりますか?
報告義務があるのは労働者数50人以上の事業場で、50人未満の事業場は不要です。ただし報告の要否を判断する「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者とは別の基準(常態として使用されているかどうか)で数えるため、対象者が50人未満でも報告が必要になる場合があります。
【Q4】ストレスチェックの個人結果は誰が知ることになりますか?
回答した労働者本人と、実施者および実施事務従事者です。個人結果は事業者には提供されません。実施の事務に従事した者には、労働安全衛生法第105条により罰則付きの守秘義務が課されています。
【Q5】医師の面接指導に申し出た場合、個人結果が会社に伝わりますか?
面接指導を申し出た場合には、ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意したものとみなされます。また、面接指導の結果、必要がある場合は就業上の措置につながる可能性があります。なお、労働者が申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定められています。
【Q6】集団分析を行う場合、個人結果が会社に伝わりますか?
事業者に提供されるのは、個人が特定されない方法で集団ごとに集計・分析した結果です。ただし集計・分析の単位が10人を下回る場合は、原則として提供を受けてはいけません。
まとめ
ストレスチェックは、労働者がストレスに関する質問票に回答し、自身のストレスの状態を知るための検査です。2025年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場についても実施が義務とされ、施行期日は2028年(令和10年)4月1日と定められています。労働者数50人以上の事業場は2015年からすでに義務であり、施行を待つ立場ではありません。
準備の面では、実施が1年ごとに1回であることが起点になります。方針の表明、労働者の意見聴取、社内ルールの作成と周知、実務担当者の指名、委託先の選定という工程を経てはじめて初回の実施にたどり着くため、施行後の実施時期から逆算して着手する時期を決めておくと計画が立てやすくなります。
対象者の数え方(契約期間と週の労働時間)と、労働基準監督署への報告の要否を判断する数え方(常態として使用されているかどうか)は別の基準です。また、事業者に提供されるのは個人が特定されない集団ごとの集計・分析結果であり、個人結果は提供されません。罰則が置かれているのは報告義務と守秘義務であって実施義務そのものにはありませんが、事業者が負う配慮の義務は別に残ります。
労働者数50人未満の事業場では、実施体制を社内だけで組み立てるのは負担が大きく、外部委託や地域産業保健センターの活用が現実的な選択肢になります。自社の拠点ごとの労働者数の確認から進めてみてください。
ストレスチェックへの対応を含めて産業保健の体制構築を検討されている方は、以下の資料もご活用ください。
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