働きすぎはリスク大!企業が実施すべき過労死対策10選

働きすぎはリスク大!企業が実施すべき過労死対策10選

過労死等防止対策推進法とは

過労死とは、過度な業務量や長時間労働、精神的・心理的な苦痛などが原因で、労働者の命が奪われてしまうことです。過労死はたびたび社会問題になり、2014年11月には防止策として「過労死等防止対策推進法」が施行されました。

労働者の過労死は、会社にとって大きなダメージになります。また、社会全体から見ても大きな損失であり、過労死を放置してしまえば日本という国の衰退にもつながりかねません。

しかし、過労死等防止対策推進法の施行から年月が経過しても、各企業において過労死対策が徹底されているとはいえないのが現状です。そのため、最近の過労死対策の推進状況をもとに、政府による「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しも行なわれています。

企業が実施すべき過労死対策10選

企業にとって過労死対策を行なうことは、会社と労働者を守るために非常に重要なことです。ここからは、企業が実施すべき10の過労死対策を紹介します。

過労死対策(1)労働時間の適正化を行なう

長時間労働が常態化すると、労働者の心身の健康に重大な影響をおよぼします。したがって、労働時間の適正化は、過労死対策にとって必須の対策といえるでしょう。労働時間の適正化にあたり、まずは労働時間を把握することが必要です。

労働基準法で定められた労働時間の上限は、1日に8時間、1週間では40時間となっています。休日は、週に1日または4週間に4日以上与えなければなりません。まずは法律をしっかりと理解し、自社の労働者の勤務時間が、法律の範囲内であるかどうかを確認することが重要です。

労働時間はただ削減するだけではなく、適正化を意識することが大切です。労働時間の適正化とは、業務に優先順位をつけて、それぞれに適切な時間を配分し、労働時間を有効に使うことを指します。

労働時間の適正化を行なううえで、具体的には次のような意識や行動が求められます。

  1. 時間を有限な資源としてとらえる
  2. 優先順位の高い仕事を理解する
  3. 価値の高い仕事に配分する時間を自律的に増やす

過労死対策(2)年次有給休暇を取得しやすくする

「周囲の目が気になる」「同僚に負担をかけたくない」といった理由で、未だに有給休暇を取得しにくい職場もあるでしょう。少しでも有給休暇を取得しやすくするためには、半日(4時間)など、時間単位で休みを取れるようにするのも一つの方法です。

原則として、有給休暇の付与は1日単位で行なう必要がありますが、労使協定の締結などにより、年5日の範囲内で、時間単位で有給休暇を取得できます。

参考:年次有給休暇の時間単位付与 – 厚生労働省

子どもの行事に参加するため、通院のためなど、各自の事情に合わせて柔軟に時間単位での休暇を所得できるようにするとよいでしょう。

過労死対策(3)定期健康診断を受診させる

各企業で定期健康診断を実施することは、労働者の健康を守るための重要な取り組みです。近年の労働環境の変化などが影響して、将来に強い不安を抱えたり、日々の生活にフラストレーションを感じたりする労働者が増えています。このようなストレスは万病のもとであり、実際に、定期健康診断の結果で「何らかの異常所見がある」とされる労働者は、全体の5割を超えるともいわれています。

一次健康診断の結果に問題があったときは、二次健康診断の受診を勧めましょう。二次健康診断とは、労働安全衛生法に基づく定期健康診断のうち、直近に行なわれた一次健康診断において、脳や心臓疾患に関連する項目で「異常あり」と診断された労働者が受診できる健診です。

労働者は、脳血管および心臓の状態把握のための二次健康診断や、その結果に基づく脳や心臓疾患発症予防のための特定保健指導を、自己負担なしで受診することができます。

過労死対策(4)ストレスチェックを実施する

精神障害も労災認定の基準に含まれているため、過労死対策として、厚生労働省が義務付けているストレスチェックを確実に実施しましょう。

ストレスチェック制度とは、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行ない、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる制度のことです。さらに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止する役割も担います。

参考:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

ストレスチェックを実施することで、労働者本人がメンタルヘルス不調に早めに気付き、うつ病などの精神疾患や、精神障害の発症を未然に防止することにつながります。

過労死対策(5)メンタルヘルスケアの研修を行なう

メンタルヘルスケアに関する教育・研修を行なって理解を深めることも、過労死対策には効果的です。メンタルヘルスケアには、大きく分けて「セルフケア」と「ラインケア」の2つがあります。

  • セルフケア
    セルフケアとは、自分ではなかなか気付きにくいストレスに労働者本人が気付き、自身で対応することです。セルフケアの研修では、ストレスに強くなるメンタルをつくる方法や、ストレスを受けた際の具体的な対処法を学びます。
  • ラインケア
    ラインケアとは、部下を抱える管理職が行なうべきメンタルヘルスケアのことです。ラインケアの研修では、部下のメンタル不調の兆候を早期発見・対応し、休職や退職といったリスクを予防するための知識を学びます。

研修でメンタルヘルスケアへの理解を深めるとともに、組織の活性化を目指しましょう。

過労死対策(6)職場でのハラスメントを防止する

職場においてハラスメントが発生した場合、被害者は大きな精神的苦痛を受けます。ハラスメントを防止する対策には、ハラスメント研修や意識調査のアンケートを行なうことが効果的です。

本人はハラスメントだと気付かずにハラスメント行為をしていたり、気を付けているつもりでもハラスメントになってしまったりすることもあります。研修を通して、労働者の知識や理解を深めることは非常に有効です。

また、労働者にアンケートを実施してハラスメントの実態を調査することで、労働者のハラスメントに対する意識向上が期待できます。アンケートを匿名で行なえば、他者を気にすることなく記載できるため、内容の精度が上がるでしょう。

過労死対策(7)会社のトップが指針を示す

長時間労働やハラスメントは、過労死と深い関わりがあります。企業のトップが率先して、長時間労働対策やハラスメント対策について発信すれば、労働者全体の意識改革にもつながるでしょう。

なお、メッセージは具体的であることが重要です。ただ「残業はやめましょう」というだけではなく、「1ヵ月に残業を○時間減らしましょう」など数値を用いることで、達成への意識が高まります。

そして、このようなメッセージを伝える際には、会社のためではなく労働者のためであるということを、トップ自らが意識することが重要です。トップが発したメッセージを、人事が社内の掲示板やメールなどを活用し、周知させることも大切です。

過労死対策(8)新しい勤務制度を柔軟に取り入れる

今までと同じようなことを続けていては、会社を変えることはできません。柔軟な姿勢で、新しい勤務制度を取り入れていきましょう。

例えば、各自で設定できる「ノー残業デー」、勤務と勤務の間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」、勤務時間を自由度高く設定できる「フレックスタイム制」、オフィス以外で働く「リモートワーク」などが挙げられます。厚生労働省の『時間外労働削減の好事例集』も参考に、ぜひ自社にあった制度の導入を検討してみてください。

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過労死対策(9)相談しやすい環境を整える

労働者が1人で悩みを抱えて思い詰めてしまうことが、過労死に至る要因の一つです。その対策として、いつでも悩みを相談できる窓口を設置しましょう。

社内の人間に悩みを打ち明けることを躊躇する労働者は少なくないため、窓口を設置する際には、外部に委託する方がよいでしょう。利害関係が一切ない第三者に対してなら、率直な本音を話しやすいはずです。

過労死対策(10)医療機関への受診を勧める

労働契約法第5条により、企業には労働者が安全に働けるよう配慮することが求められています。部下や同僚の様子が普段と違っていたり、小さなミスが増えていたりするなら、積極的に声をかけてみましょう。声かけをしたうえで、必要であれば医療機関への受診を勧めることも必要です。

真面目な労働者ほど責任感が強く、人に助けを求められずに1人で悩みを抱え込んでしまうことはよくあります。そうしたときに、周囲からの気遣いの声かけは大きな救いになるはずです。

まとめ

企業にとって、労働者の健康を守ることは非常に大切なことです。なかでも、過労死は命に関わることなので、より真剣に対策を講じなくてはなりません。この記事では、企業が実施すべき10の対策について具体的に解説しました。各企業で対策へ取り組み、労働者が安心して働ける安全な職場づくりに努めていきましょう。

とはいえ、「社内だけで過労死対策を講じるのは難しい」と感じる方もいるはずです。そのような場合は、「リモート産業保健」がおすすめです。リモート産業保健では、産業医と産業看護職の2名体制による充実したメンタルヘルスケアを実現できます。産業医やリモート産業保健について詳しく知りたい方は、以下のリンク先からお問い合わせください。

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