ストレスチェックで高ストレス者と判定された社員が発生し、面接指導(高ストレス者面談)をどう進めればよいか判断に迷う人事労務担当者は少なくありません。対応を誤ると安全配慮義務の観点でリスクが残る一方、慎重になりすぎて運用が形骸化するケースもあります。本記事では、高ストレス者面談の対象者要件・実施の流れ・面談で確認される事項・結果の扱いを、厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。
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この記事でわかること
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高ストレス者面談が労働安全衛生法上どの制度に対応するか -
面談の対象者要件と、本人が希望しない場合の扱い -
通知から就業上の措置までの5ステップの流れ -
面談で確認される3つの事項と、結果の取り扱い・守秘義務
高ストレス者面談とは?ストレスチェック後に行われる面接指導の位置づけ
高ストレス者面談とは、ストレスチェックで高ストレス者と判定された労働者に対する医師の面接指導です。担当者向けの通称であり、対応の要否や進め方を法令上の位置づけから正しく理解しておくことで、実施義務の判断や記録の管理を誤らずに進められます。
労働安全衛生法上は「面接指導」という制度に位置づけられており、「高ストレス者面談」は実務上使われる通称です。事業者は、ストレスチェックの結果、心理的な負担が高いと判定された労働者から本人の申出があった場合に、面接指導を実施する義務を負います。
産業医面談全般の基礎知識は産業医面談とは?話す内容や目的、メリットや注意点を解説した記事で解説しています。また、ストレスチェックで「高ストレス」と判定される基準についてはストレスチェックの基礎知識を解説した記事で確認できます。
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ストレスチェックの高ストレス者判定基準
ストレスチェックでは、労働者本人が回答した調査票(職業性ストレス簡易調査票等)の結果をもとに、実施者(産業医等)が高ストレス者を判定します。具体的な点数基準は事業場ごとに実施者が設定するため一律ではありませんが、心理的な負担が高く、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者が対象になります。自社の判定基準や運用について不明点がある場合は、産業医に相談してください。
実際に、事業場ごとの高ストレス者の割合は次のようにばらつきがあります。

(図:高ストレス者の割合_ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
(出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
高ストレス者面談は「医師による面接指導」の一種(法令用語との対応)
「高ストレス者面談」という呼び方は現場の通称であり、法令上の正式名称は「面接指導」です。労働安全衛生法第66条の10は、事業者に対して次のように面接指導の実施を義務付けています(第3項を抜粋)。
事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
この制度(ストレスチェック制度)は、平成26年6月25日に公布され、平成27年12月1日に施行されました。
高ストレス者面談は義務?対象となる労働者の要件
高ストレス者面談は、本人が面接指導を希望した場合に事業者が実施を義務づけられる制度です。ストレスチェックを受けただけで自動的に実施されるわけではなく、対象者本人の申出が実施の起点になります。
第五十二条の十五 法第六十六条の十第三項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であつて、同項に規定する面接指導(以下この節において「面接指導」という。)を受ける必要があると当該検査を行つた医師等が認めたものであることとする。
つまり、面接指導の対象となるのは「心理的な負担が高く、面接指導が必要と実施者が認めた労働者」であり、その労働者が実際に面接指導を受けるには本人からの申出が必要です。
面談を希望しない高ストレス者への対応
高ストレス者と判定された労働者が面接指導を希望しない場合、事業者に実施義務は生じません。ただし、放置すると心身の不調が進行するおそれがあるため、通常の産業保健活動の一環として相談を促すことは可能です。
実際に、高ストレス者のうち面接指導を申し出る割合は5%未満という事業場が大半を占めています。

(図:面接指導を申し出る者の割合_ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
(出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
厚生労働省のQ&Aでは、面接指導を希望しない労働者についても、実施者である産業医から通常の産業保健活動の一環として面談を受けるよう勧奨することは問題ないとされています。
面接指導を希望しない高ストレス者への具体的な対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。最終的な対応方針に迷う場合は、産業医に相談してください。
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ストレスチェックを拒否されたら?対応の基本と、面接指導拒否時の注意点
職場におけるさまざまなストレス要因が増加する中、ストレスチェックを活用することで、労働者のメンタルヘルス不調にいち早く対応することが重要です。
ストレスチェックの実施を検討中のご担当者様に向けて、産業保健師が監修した「はじめてのストレスチェックガイドブック」をご提供しますので、ぜひご活用ください。
高ストレス者面談の流れ(5ステップ)
高ストレス者面談は、対象者への通知から就業上の措置の決定まで、大きく5つのステップで進みます。全体の流れを事前に把握しておくことで、面談前後の対応漏れを防げます。以下の図は、ストレスチェックの実施から事後措置までの標準的な期限の目安を示したものです(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省)。

(図:ストレスチェックから事後措置までの流れ_労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
各ステップの運用にあたっては、産業医面談の3つの基準と面談を拒否された場合の対処法を解説した記事も参考になります。
ステップ1:対象者への通知と面談の申し出受付
最初のステップは、対象者への通知と面談の申し出受付です。ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された労働者に対し、実施者から本人へ結果が通知されます。面接指導は、本人が希望を申し出た場合にのみ実施されるため、通知時に申出の手続き方法を明確に伝えておくことが重要です。
ステップ2:面談日程の調整と事前資料の準備
次に、面談の日程調整と事前資料の準備を行います。健康診断結果やストレスチェックの結果など、産業医が労働者の状態を把握しやすい資料をそろえておきましょう。面談の実施場所は、周囲の目を気にせず話せる、秘密が厳守される環境を選ぶことが望ましいとされています。
ステップ3:産業医(面接指導医)による面談の実施
面接指導を行う医師は、原則として当該事業場の産業医、または産業保健活動に従事する医師です。常時50人未満で産業医の選任義務がない事業場は、地域産業保健センターを利用できる場合があります。
例えば東京都港区(港区医師会が運営する港地域産業保健センター)では、次のようなサービスを提供しています。
当センターは、事業者が行ったストレスチェックの結果、高ストレスであるとされた労働者を対象に、当センターに登録している認定産業医が面接指導を行います。
この事例は東京都港区(港区医師会)における運用例であり、全国共通の手続きではありません。地域産業保健センターの運営主体・申込方法・提出書類は自治体・地区医師会によって異なるため、利用の際は最寄りの地域産業保健センターの手続きを確認してください。
ステップ4:医師の意見聴取と結果報告書の作成
面接指導の実施後は、遅滞なく医師から意見を聴く必要があります。意見聴取が遅れると就業上の措置の決定も遅れ、対象者の不調を放置することになりかねないため、社内の対応フローにあらかじめ組み込んでおくことが重要です。
第52 条の19 面接指導の結果に基づく法第66 条の10 第5項の規定による医師からの意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行わなければならない。
厚生労働省のマニュアルでは、意見を聴く時期の目安として「遅滞なく、遅くとも1月以内」が示されています。なお、一部の社内規程例に見られる「30日以内」という表現は、あくまで一企業の規程サンプルに記載された目安であり、法令が定める期限ではありません。
ステップ5:就業上の措置の決定・実施
医師の意見を踏まえ、事業者は就業上の措置を決定します。措置の内容には、作業の転換や労働時間の短縮、配置転換などが含まれます。措置の実施にあたっては、本人の意向を確認しながら、必要以上に不利益とならないよう配慮することが求められます。最終的な就業判定は、産業医などの医学的な意見を踏まえて決定してください。
高ストレス者面談で確認される3つの事項
高ストレス者面談で医師が確認する事項は、労働安全衛生規則第52条の17により、次の3点に整理されています。何を聞かれるか事前に把握しておくことで、対象者への説明資料の準備や、医師への事前情報提供の内容を的確に検討できます。
第52 条の17 医師は、面接指導を行うに当たつては、申出を行つた労働者に対し、第52 条の9各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について確認を行うものとする。①当該労働者の勤務の状況②当該労働者の心理的な負担の状況③前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況
以下、それぞれの内容を確認します。
勤務の状況(労働時間・業務内容)
1つ目は勤務の状況です。残業時間や業務内容、業務量の変化など、労働時間や働き方に関する事項を確認します。長時間労働が続いている場合は、業務量の調整や人員配置の見直しにつながることもあります。
心理的な負担の状況
2つ目は心理的な負担の状況です。気分の落ち込みや不安、不眠、職場の人間関係など、心理面のストレス要因を確認します。産業医は、こうした状況を踏まえて、心身の不調のサインがないかを見極めます。
その他の心身の状況
3つ目は、勤務の状況・心理的な負担の状況以外の心身の状況です。生活習慣や既往症、健康診断結果に見られる所見など、労働者の健康状態全体を確認します。医学的な判断が必要な場合は、産業医の意見を踏まえて対応してください。
高ストレス者面談の結果はどう扱われる?企業の対応と守秘義務
高ストレス者面談の結果は、本人の健康情報として厳格に管理する必要があります。企業側の対応と守秘義務の考え方を確認しておきましょう。
結果は5年間保管される(労働安全衛生規則第52条の18)
面接指導の結果は、記録を作成して5年間保存することが義務付けられています。保存期間や記載事項を誤ると法令違反となるおそれがあるため、担当者は保管の要件を正確に把握しておく必要があります。
第52 条の18 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
面談内容は本人の同意なく企業に共有されない
産業医には守秘義務があり、面談内容を本人の同意なく企業に共有することはありません。企業側の人間には話しにくい悩みも相談しやすい体制になっています。
不利益取扱いの禁止
面接指導の申出をしたことを理由に、企業が労働者へ解雇や不利益な配置転換などを行うことは法律で禁止されています。この規定を知らずに対応すると、申出を控えさせる雰囲気を生み、制度そのものが形骸化する原因になるため、担当者は周知の段階から留意する必要があります。
この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
産業医面談・保健師面談・医師面談は何が違う?
「医師面談」「保健師面談」という呼び方も検索で見られますが、法令上の面接指導を実施できるのは医師に限られます。それぞれの位置づけを整理します。
厚生労働省のQ&Aによれば、実施者である産業医や保健師が高ストレス者に対してまず通常の産業保健活動の一環として面談を実施し、その結果をもとに実施者が法律に基づく面接指導の対象者を選定する方法も認められています。この場合、保健師等が行う面談はあくまで補足的な位置づけであり、法律上の面接指導そのものは医師が行います。
産業医以外の心理職等が補足的な面談を行う場合は、実施事務従事者として選任し、面談内容が守秘義務の対象であることを理解してもらう必要があります。
高ストレス者面談を実施しないとどうなる?企業の安全配慮義務
高ストレス者が面接指導を申し出ないまま不調が悪化した場合、企業の対応が問われることがあります。安全配慮義務の考え方を確認します。
労働契約法第5条は、使用者に対して労働者の安全への配慮を義務づけています。
使用者には、「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮」をする義務があります(労契法5)。この安全配慮義務の具体的内容は、それが問題となる具体的状況によって異なります(陸上自衛隊八戸車両整備工場事件 最三小判 S50.2.25。川義事件 最三小判 S59.4.10)。
過重労働の防止(安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権)|厚生労働省「確かめよう労働条件」
電通事件など長時間労働を主因とする裁判例では、使用者が労働者の心身の不調を認識し、又は容易に認識できたのに適切な措置を取らなかった場合に義務違反が認められる、という判断枠組みが示されています。ただし、これらの裁判例はいずれも長時間労働(時間外労働)を主因とする事案であり、ストレスチェック後の高ストレス者面談(面接指導)そのものを直接の争点としたものではありません。面接指導の申出がなされないまま高ストレス状態が放置された場合の法的な判断は、個別の事情によって異なるため、断定はできません。運用に不安がある場合は、産業医や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問(高ストレス者面談Q&A)
高ストレス者面談についてよく寄せられる質問を、Q&A形式でまとめました。
Q. 高ストレス者面談はオンラインでも実施できますか?- A面談の実施方法自体は対面に限定されていませんが、実施にあたって配慮すべき点があります。オンライン実施の留意点は産業医面談のオンライン実施に関する記事で解説しています。
- Q. 高ストレス者面談にかかる費用は誰が負担しますか?
- A厚生労働省のQ&Aでは、ストレスチェック及び面接指導の費用は、法律で事業者に実施義務を課している以上、事業者が負担すべきものとされています。また、面接指導を受けるために要した時間についても、賃金を支払うことが望ましいとされています。
- Q. 高ストレス者面談を拒否したらどうなりますか?
- A本人が面接指導を希望しなければ、事業者に実施義務は生じません。ただし、放置すると不調が進行するおそれがあるため、通常の産業保健活動の一環で相談を促すなどの配慮が望まれます。
- Q. 高ストレス者面談を受けるデメリットはありますか?
- A「評価に影響するのでは」といった不安を感じる方もいますが、面談内容は本人の同意なく企業へ共有されません。具体的なメリット・デメリットはこちらの記事で詳しく解説しています。
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高ストレス者面談は、本人の申出を起点に、通知・日程調整・面談実施・意見聴取・就業上の措置という流れで進みます。対象者要件や確認事項、結果の扱いを事前に整理しておくことで、安全配慮義務への対応と運用負荷の軽減を両立できます。
自社に専属の産業医を選任し、社内だけで運用体制を構築できる企業もありますが、複数拠点への対応や面談後のフォローまで一貫して任せたい場合は、リモートで産業医・産業看護職の支援を受けられるサービスを活用するという選択肢も、多くの企業にとって現実的です。
高ストレス者面談を含む産業医面談は、産業医と産業看護職の2名体制で対応できます。ストレスチェックの実施や衛生委員会の支援にも対応しており、人事労務担当者の産業保健業務の負荷軽減に役立ちます。産業医の選任・交代を検討している企業にもおすすめです。



