ストレスチェックの報告書とは?
ストレスチェック制度は労働安全衛生法第66条の10にかかわる制度として定められており、常時使用する労働者が50人以上の事業場は、毎年1回以上、ストレスチェックを実施しなければなりません。(労働安全衛生規則第52条の9)
ストレスチェックを実施した事業場は、その実施状況を労働基準監督署へ報告する必要があり、その際に使用する報告書のことを「ストレスチェック報告書」といい、正式名称は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」です。
ただし、一般的な名称として「ストレスチェック報告書」でとおるため、正式名称は確認してもらったうえで、本記事では「ストレスチェック報告書」として説明を行なっていきます。
ストレスチェック報告書提出は義務?提出しないと罰則がある?
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、1年以内に1回、ストレスチェック報告書、つまり、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を所轄労働基準監督署へ提出する義務が、労働安全衛生規則第52条の21に定められています。
また、都道府県労働局長や労働基準監督署長には、労働安全衛生法第100条に基づき、事業者に対して必要な報告をさせなければならないことが定められています。
仮に未提出の場合や虚偽の報告書を提出した場合は、規定違反に該当し、労働安全衛生法第120条第5号に基づいて50万円以下の罰金が科されます。
ストレスチェック報告書の提出時期については、事業場ごとに決めることができ、事業年度の終了後など、年度末にその他の報告書と一緒に提出する企業も多くあります。
ここでは、ストレスチェックの実施義務がある事業場には、ストレスチェックの報告義務もあることを押さえておくとよいでしょう。
ストレスチェックの報告書が簡易化!産業医の押印署名が不必要に?
令和2年8月からストレスチェック報告書への産業医の押印・署名(電子申請の場合は電子署名)が不要になり、記名のみとなりました。
その背景として、オンライン利用率が向上しているなか、産業医の署名や押印、電子署名を必要とする状況が電子化の進まない要因になっていることが挙げられます。
もちろん、事業者が産業医に対してストレスチェックに関する情報を提供する義務がなくなった、というわけではありません。あくまで、負担や手間を軽減するための措置である、ということを覚えておきましょう。
ストレスチェック報告書は、これまでどおり産業医と共有し、産業医の氏名の記載も必要です。変更の趣旨を正しく理解したうえで、ストレスチェック報告書を作成しましょう。
ストレスチェック報告書の書き方は?記入例とともに紹介
では、実際にストレスチェック報告書の書き方を詳しく解説します。
(1)ストレスチェック報告書の様式を入手する
ストレスチェック報告書は、以下の厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
参考:心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書|厚生労働省
印刷する場合は、白色度80%以上の印刷用紙を使用しましょう。また、印刷した紙をコピーして使用しないように注意しましょう。
もしくは、厚生労働省Webサイトを利用して、書類作成を行なうことも可能です。
参考:労働安全衛生法関係の届出申請等帳票印刷に係る入力支援サービス|厚生労働省
ストレスチェック報告書の様式には規定があるため、厚生労働省のものを活用することをおすすめします。
(2)ストレスチェック報告書を作成する
初めてストレスチェック報告書を作成する際には、記入内容を間違えてしまうケースが多くあります。そのため、記入する前に必要な情報を準備し、スムーズに記入できるようにすることが大切です。
※産業医氏名欄については、後述する「産業医に報告書を確認してもらう」をご参照ください。
報告書の内容をしっかり理解することで、時間をかけずスムーズに記入することができます。今回は特に注意が必要な項目について説明します。
労働保険番号
労働保険番号は、労働保険に加入していることを証明するための番号です。番号の確認方法は、労働保険加入証明書や確定申告の手続きの際の「労働保険概算や確定保険料申告書」などに記載されています。
もしくは、都道府県労働局や労働基準監督署へ問い合わせをして確認します。インターネットで検索することはできないため注意しましょう。
対象年
暦年で記載しましょう。
検査実施年月
ストレスチェックを複数月にわたって行なった場合は、検査実施の最終月を記載しましょう。
事業の種類
該当する日本標準産業分類の中分類を記入しましょう。どこに分類されるか不明な場合は、所轄の労働基準監督署に問い合わせてください。
事業場の名称、所在地
事業場の名称には、店舗名や工場名、営業所名などを記入しましょう。
在籍労働者数
ストレスチェックの実施時点(実施年月の末日現在)でのストレスチェックの実施義務対象の労働者数を記入しましょう。1週間の所定労働数が通常の労働者の3/4未満であるパートタイム労働者や、派遣先における派遣労働者は含めません。
検査を受けた労働者数
ストレスチェックの実施対象者のうち、報告した対象年に検査を受けた実人数を記入しましょう。仮に、1人が1年間を通じて複数回、ストレスチェックを受けた場合にも、「1人」としてカウントします。
面接指導を受けた労働者数
ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師(産業医)の面接指導を受けた労働者数を記入します。
検査を実施した者
実施者を選択しましょう。実施者になれるのは、医師(産業医も含む)か保健師、もしくは厚生労働省が定める検査を行なうために必要な知識について研修を修了した看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師です。
なお、人事権を持つものは実施者になれません。
面接指導を実施した医師
面接指導を実施した医師を選択しましょう。その際、「面接指導を受けた労働者」がいない場合は空欄にするため、注意が必要です。
集団ごとの分析の実施の有無
労働安全衛生規則第52条の14の規定に基づき、集団分析の実施の有無について、該当する番号を選択しましょう。
産業医の記名欄
ストレスチェック報告書を産業医に確認してもらい、記名を行ないます。ただし、先述したとおり、法改正により産業医本人の署名押印は不要になったため、産業医に確認後、事業者側で記名を行なうことができます。
その際に、産業医の所在医療機関や所在地の記入が必要なため、事前に確認しておくとスムーズに記入できます。
事業者職氏名、提出先の労働基準監督署名などの記入
事業者職氏名の記入と押印をしましょう。なお、氏名を記入し、押印に代えて署名することができます。
ストレスチェック報告書は、必要な情報を事前に確認しておくことで、よりスムーズに作成できます。報告書を作成する担当者の負担を軽減するためにも、はやめに準備しておきましょう。
上記のポイントをもとに作成したストレスチェック報告書の完成例をご紹介します。実際に記入する際にお役立てください。
出典:ストレスチェック報告書の記入例|厚生労働省 静岡労働局
(3)産業医に報告書を確認してもらう
ストレスチェックの報告書は作成後、産業医に確認してもらいます。これまでは、産業医本人から確認した証明として、押印・署名が必要でした。
しかし、令和2年8月より産業医の押印・署名(電子申請の場合は、電子署名)が不要となり、記名のみになりました。
前述の通り、産業医の押印と署名が不要になったからといって、「産業医による報告書の確認を実施しなくてよい」ということではありません。産業医の氏名の記入は、産業医の確認後、事業場側で行なうことができます。
出典:健康診断個人票や定期健康診断結果報告書等について、医師等の押印等が不要となります。|厚生労働省
ストレスチェック報告書の提出方法、提出期限とは?
ストレスチェック報告書は、所轄の労働基準監督署に提出しましょう。報告書は1年ごとに1回提出することが法律で定められていて、提出時期は事業場ごとに決めることができます。
提出方法については、以下の3パターンがありますので、事業場ごとに便利な方法を選択するとよいでしょう。
直接提出
所轄の労働基準監督署の窓口に、直接書類を持参します。受付時間や休日などもあり、新型コロナウイルスの感染対策で、来訪を制限している場合もあるため、提出の際はあらかじめ電話で確認しておくとよいでしょう。
郵送提出
所轄の労働基準監督署に郵送で提出します。ストレスチェック報告書に監督署の受領印が押された報告書の控えが欲しい場合は、ストレスチェック報告書2通と返信用封筒(切手貼付、宛名記入)を忘れずに同封しましょう。
電子申請
ストレスチェック報告書の提出は、e-Gov上で電子申請することもできます。電子申請は24時間365日いつでも可能で、インターネットを介して自宅や会社のパソコンからでも行なうことができます。
ただし、サーバーのメンテナンスやシステムの不具合などが起こることもあるため、期限に余裕を持って手続きしましょう。
まとめ
ストレスチェックは実施して終了ではなく、1年以内に1回、報告書を労働基準監督署に提出する義務があります。報告書については、令和2年8月から産業医の押印・署名(電子申請の場合は電子署名)が不要になり、記名のみになりました。
ストレスチェック報告書を作成する際には、本記事で紹介した書き方を参考に、フォーマットに記入するとよいでしょう。完成した報告書は、直接提出、郵送提出、電子申請のいずれかの方法で、提出期限までに確実に提出してください。
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために必要な、健康経営の取り組みの一つです。健康経営が良好な企業は、生産性が向上したり、社会的な評価を得られたり、人材を確保しやすくなったりします。
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