産業医による従業員のメンタルヘルスケアは必要?流れや進め方をご紹介!

産業医による従業員のメンタルヘルスケア

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学生時代から治療と仕事の両立支援に関心があり、今まで産業保健師としてうつ病や適応障害、糖尿病、悪性腫瘍(がん)などさまざまな疾患を抱えながら働く従業員を支援してきました。

普段から心がけていることは、声をかけやすい存在になること、専門用語をなるべく使わずにかみ砕いて説明することです。産業保健師として働くなかで、集団の支援と個の支援、両方の視点が大切だなと感じています。

2021年からライターとして活動を始め、医療分野を中心に執筆しています。読者が「読んでよかったな」「困ったらサンチエで調べてみよう」と思ってもらえるような記事を目指します。

趣味はヨガ、温泉巡り、美味しいごはんを食べることです。よろしくお願いいたします。

【略歴 】
2018年3月 4年制大学看護学部を卒業、看護師・保健師免許取得
2018年4月 看護師として急性期病院の消化器内科病棟へ就職
2019年12月 産業保健師として企業に勤務
2021年2月 ライターとして活動開始
現在 産業保健師兼ライターとして活動中

2018年に4年制大学卒業後、急性期病院の消化器内科病棟へ就職しました。胃潰瘍や胆嚢炎、胃がん、すい臓がんなどさまざまな病気の治療に携わりました。40代~50代の働き盛りの患者さんも多く、「退院したあとお仕事はどうするのだろうか?」「会社で配慮をしてもらえるのだろうか」と気になっていました。特に、悪性腫瘍(がん)は手術後も抗がん剤治療や放射線治療を行なうことがあり、周囲のサポートが必要不可欠です。

2019年からはご縁があって産業保健師として企業に勤務しました。看護師としての経験を活かしつつ、産業医や人事担当者などの関係者と連携しながら治療と仕事の両立支援に取り組みました。勤務している企業ではメンタルヘルス対策に力を入れていたので、休職~復職に関わるガイドライン作成や管理職に対するラインケア研修などを実施しました。健康経営優良法人の取得にも貢献し、そのほかにも電子カルテ導入や障がい者支援にも携わりました。

監修者

元々臨床医として生活習慣病管理や精神科診療に従事する中で、労働者の疾病予防・管理と職業ストレス・職場環境の密接な関係認識するに至り、病院からだけでなく、企業側から医師としてできることはないかと思い、産業医活動を開始しました。

また、会社運営の経験を通じ、企業の持続的成長と健康経営は不可分であること、それを実行するためには産業保健職の積極的なコミットメントが必要であると考えるに至りました。

「頼れる気さくな産業医」を目指し、日々活動中しています。
趣味は筋トレ、ボードゲーム、企業分析です。

【保有資格】
・日本医師会認定産業医
・総合内科専門医
・日本糖尿病学会専門医
・日本緩和医療学会認定医

労働者のメンタルヘルス不調の原因は、さまざまありますが、労働者だけで解決することが難しい場合も少なくありません。メンタルヘルスケアは、産業医の業務のなかでも重要な仕事の一つです。産業医は、労働者が心身ともに健康に働けるよう指導や助言を行ない、効果的なメンタルヘルスケアを実施しています。

本記事では、メンタルヘルスにおける産業医の役割やメンタルヘルスケアの進め方、注意点について解説していますので、最後までご覧ください。

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職場におけるメンタルヘルスケアとは?産業医の大事な仕事の一つです!

私たちは、日々、さまざまなストレスとともに生活しています。職場で感じるストレスは、業務内容に関連するものや、人間関係によるものが挙げられます。プライベートで感じるストレスが仕事に影響する場合もあり、同じ環境で仕事をしていても、ストレスを強く感じる人とそうでない人がいます。

メンタルヘルスとは、文字通り「心の健康」のことです。メンタルヘルス不調とは、労働者が仕事やプライベートで強いストレスを感じ、その状態が続くことで、自分だけでは対処しきれなくなり、心身に不調をきたしてしまうことです。

メンタルヘルス不調の原因は人それぞれですが、職場にはさまざまなストレス要因があり、労働者だけで取り除くことが難しい場合も多く、企業による積極的なメンタルヘルスケアが不可欠です。

メンタルヘルスケアとは、すべての労働者を対象に、健やかでいきいきと働けるような気配りと援助を行なうこととされています。企業がメンタルヘルスケアを行なうことで、労働者の健康保持増進、事業場の健康リスクマネジメント、職場の活性化と生産性の向上など、さまざまなメリットがあります。

メンタルヘルスケアにおける産業医の役割は?

産業医は、労働者が心身ともに健康で働ける状態かどうか評価したうえで指導や助言を行ないます。そして、企業内で効果的なメンタルヘルスケアを実施できるように支援を行なっています。産業医は労働者の健康管理を行なう医師であり、メンタルヘルスケアは産業医の業務のなかでも重要な仕事の一つとなっています。

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産業医による労働者のメンタルヘルスケアの進め方!

ここからは厚生労働省の「「職場における心の健康づくり」をもとに、メンタルヘルスケアの進め方における4つのポイントを紹介します。

1つ目は、メンタルヘルスケアを推進するための教育研修や情報提供をします。労働者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等に対し、それぞれの職務に応じた教育研修や情報提供をします。

提供する具体的な内容は、自社のメンタルヘルスケアに関する方針や、ストレスおよびメンタルヘルスケアの基礎知識、事業場内外の資源に関する情報などです。対象者によって、セルフケアやラインケアの内容を入れ込むと効果的です。必要に応じて、事業場外資源が実施する研修などに参加する機会を作ってもよいでしょう。

2つ目は、職場環境などの把握と改善です。労働者の心の健康には、作業環境や作業方法、労働時間、仕事の量と質など、さまざまな要因が影響を与えます。日頃から労働者の意見を聞くほか、ストレスチェック制度を活用しましょう。ストレスチェックの集団分析結果や面接指導の結果を参考に、職場環境の問題点の把握と改善に努めることが大切です。

3つ目は、メンタルヘルス不調への気付きと対応です。メンタルヘルス不調にならないための予防策はもちろん大切ですが、万が一メンタルヘルス不調者が発生した場合には、早期発見と適切な対応が必要になります。

そのために、労働者が自ら相談できる窓口を設けるなどの環境整備をしたり、管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等による対応体制の構築を図ったりします。場合によっては受診勧奨も必要ですので、管理監督者や事業場内産業保健スタッフはよく連携しながら対応にあたりましょう。

ただし、管理監督者がメンタルヘルス不調への対応に慣れていないと、いざ発生したときにどうしたら良いかわからず、悩んでしまうかもしれません。管理監督者に対してラインケア研修を実施することで、管理監督者が自信をもって適切な対応をできるように支援しましょう。

4つ目は、職場復帰における支援です。メンタルヘルス不調により休業した労働者が、円滑に職場復帰し、就業を継続できるよう職場復帰支援プログラムを策定します。プログラム策定にあたっては、衛生委員会などで調査審議し、産業医の助言などを受けながら作り上げていきましょう。

また、メンタルヘルスケアにおいては、これから説明する3つの予防策や4つのケアについて意識することも大切です。
参考:職場における心の健康づくり|厚生労働省

一次予防

労働者がメンタルヘルス不調を発症することを未然に防ぐ予防的なかかわりが重要です。ストレスチェックを活用し、労働者が自身のストレス状態を知ることで、メンタルヘルスに対する意識を高めていきます。ストレスを抱えている労働者には、希望によって産業医面談を実施し、業務調整などの予防措置を検討します。

二次予防

メンタルヘルス不調が疑われる労働者に対しては、早期に気付き対応することが重要です。メンタルヘルス不調を自覚する労働者へは早期に産業医面談を実施することで、業務負担の軽減などの対応へとつなげます。

三次予防

メンタルヘルス不調によって休職していた労働者が復職する際には、産業医面談を実施し、復職後の業務調整などを検討する必要があります。

また、職場のなかでメンタルヘルスケアを進めていく際、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」の4つのケアを継続的かつ計画的に行なうことも必要とされます。

セルフケア

文字通り労働者自身が行なうケアのことです。セルフケアでは、まず自身のストレスに気付くことから始めます。自身のストレスに気付くためには、ストレスチェックを活用しながら、ストレスやメンタルヘルスに対しての正しい知識を持つ必要があります。

メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる出来事であり、特別なことではありません。正しい知識により適切な対処法を身に付けることで、心身を健康に保つことができます。

企業はセルフケアの重要性について、労働者が身近な問題として考えられるように産業医と連携しながら支援を行なうことが必要です。例えば、セルフケアについての研修を行なう際には、具体的に日常業務と関連づけて行なうと効果的です。また、セルフケアの対象はすべての労働者とされており、管理監督者も対象として含まれます。

ラインによるケア

労働者と日常的に接する管理監督者(上司)が行なうケアのことです。ラインによるケアでは、労働者の変化を早期発見することが重要です。

そのため、日頃から労働者とコミュニケーションを取るように心がけることで、いつもと違う変化に気付くことができます。例えば、遅刻が増えた、突然の無断欠勤、または、ミスが目立つなどにより、労働者の変化がわかります。

労働者の変化に気付いたときは、まず管理監督者が声をかけ、話を聞くように心がけましょう。管理監督者が日頃から積極的に声をかけることによって、労働者にとって相談しやすい雰囲気がつくられます。労働者のSOSに管理監督者がいち早く気が付き、速やかに産業医へと連携することでその後の労働者への細やかな対応が可能になります。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や保健師が行なうケアのことです。産業医は、事業場外資源との窓口となったり、管理監督者と連携し労働者と面談を行なったりするなど、職場のメンタルヘルスケアが効果的に実施できるよう、職場環境や業務内容に合わせて、中心的に支援を行なっています。

事業場外資源によるケア

事業場に産業保健スタッフがいない場合や、相談内容を社内の人に知られたくない場合など、さまざまな理由によって活用されています。

産業医による労働者のメンタルヘルスケアに注意点はある?

事業場がメンタルヘルスケアを行なう際に、注意すべき点がいくつかあります。産業医や企業担当者は、特に以下の点について配慮しましょう。

メンタルヘルスケアを推進にあたっての留意事項

労働者のメンタルヘルスケアを行なう際は、客観的な事実に基づき、冷静な判断を下すことが重要です。労働者と企業、周囲の人間の三者間それぞれの意見を尊重し、間をとって最良の判断と提案を行なう必要があります。そのうえで、労働者と企業、周囲の人間それぞれに対して、産業医が行なうことを明確にしましょう。

このとき、メンタルヘルスケアを行なう一つの手段としてコーチングツールが有用です。上手に活用することで、労働者や周囲の人間から潜在的な気持ちや能力を引き出し、最大限にパフォーマンスできるよう導けます。

なお、労働者から聞いた個人情報については、守秘義務および報告義務があるため、情報の取り扱いには十分気を付けましょう。

出典:職場における心の健康づくり|厚生労働省

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労働者が面談を拒否したときの対処法

産業医面談は、労働者にとってさまざまなメリットがありますが、労働者が産業医面談をためらってしまう、または、拒否してしまうときはどのように対処したらよいのでしょうか。

産業医面談を拒否する理由の一つとして、病気と診断されてしまうのではないか、人事評価に影響するのではないか、などのネガティブなイメージが先行していることが考えられます。

そのため、日頃から、産業医面談を従業員に身近に感じてもらえるような取り組みが必要です。

産業医面談は、従業員の身体的・精神的負担が大きくなって、働くことができなくなってしまう前に、自身の健康管理のために受けるものだと正しく認識してもらいましょう。
産業医面談を受けたことが人事評価に影響しないことを、従業員が正しく理解できるように周知していくことも重要です。

さまざまな理由によって企業内で産業医面談を行なうことに抵抗がある場合は、企業外にある窓口を活用する方法もあります。企業の外に相談窓口を置くことで、従業員は相談内容や人事評価などを気にすることなく、産業医と面談を行なえるメリットがあります。

窓口としては、社員支援プログラム(EPA)や、労災病院や診療所、独立行政法人労働者安全機構が運営している産業保健総合支援センター(さんぽセンター)、または、同法人が運営している地域産業保健センター(地さんぽ)などがあります。

メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる出来事であり、特別なことではありません。企業は従業員が安心して相談できる環境を整備するとともに、従業員がメンタルヘルス不調について正しい知識が持てるように、産業医をはじめとする産業保健スタッフと連携し教育することが重要です。

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まとめ

産業医は、労働者が心身ともに健康に働けるよう指導や助言を行ない、適切なメンタルヘルスケアを実施することが大切です。労働者のメンタルヘルス不調を改善することは離職防止にもつながるため、企業の経営に影響を与える重要な要素の一つともいえます。

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