企業が健康経営の取り組みを行うことで、従業員の活力向上、生産性の向上により組織の活性化をもたらし、業績や株価の向上につながることが期待できます。現在、大企業・中小企業に関わらず、健康経営について前向きに取り組みを行っている企業は増加傾向にあります。
本記事では、健康経営が株価に与える影響や、健康経営に取り組むメリット、健康経営に取り組むべき企業の特徴や健康経営の取り組み事例などについて詳しく解説します。
健康経営は株価に影響を与えるのか?
健康経営に取り組んでいる企業は、企業のイメージが上がることが期待でき、投資家から評価されやすくなるでしょう。健康経営に取り組むことにより、従業員の心身の不調におけるリスクを低減し、作業効率や仕事の質が上がることで業績や投資家からの評価が上がり、株価の上昇を期待できます。
実際に、経済産業省が認定した「健康経営優良法人」においては、従業員の離職率が低く株価が市場平均より高いことが示されています。
三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社が行った、健康経営銘柄に選定された企業の業績についての調査では、健康経営銘柄に選定された企業は株価のボラティリティが低く、純資産より純利益での株価対比の割安度が高いという結果が出ています。これは株価の変動が少なく、安定して利益を出していることを示しているため、投資家にとって安心して投資できるという評価を受けやすくなっています。
【健康経営】従業員の健康管理は「投資」の一つ
企業は、将来への「投資」の一つとして健康経営に注力すべきといえます。
各企業が従業員の心身の健康に投資すれば、従業員の健康増進だけでなく、組織の活性化や生産性・企業価値の向上につながり、結果的に業績や株価を上げることになります。
実際、健康経営を積極的に行い、「健康経営銘柄」として選定された企業はTOPIX(東証株価指数)と比較して株価が優位になり、市場で高く評価されるケースも多々あります。
このような状況から、従業員の健康管理を「投資」ととらえるか、「コスト」ととらえるかによって、健康経営の内容や結果は大きく異なるでしょう。
健康経営を導入する前に、健康経営を「将来への投資」として、企業主体で取り組むことを確認しておくことが大切です。
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企業が健康経営に取り組む4つのメリット
続いて、企業が健康経営に取り組む4つのメリットについて紹介します。
組織全体の活性化、業績向上が期待できる
健康経営を通して従業員の心身の健康維持をサポートすることで、労働生産性を向上させることができます。
従業員がいきいきと働き、仕事のパフォーマンスを高く保つことができれば、自ずと業績は向上し、組織全体も活性化するでしょう。
健康経営に取り組むことで、企業価値が高まり、社会的信用も得やすくなります。社会的信用があれば融資を受けやすくなるため、事業の縮小や倒産のリスクを下げることも可能です。
従業員との関係性を良好にし、ワークエンゲージメントを高められる
従業員の健康維持に役立つ取り組みを続けることで、従業員と経営者層の心理的な距離が近づき、ワークエンゲージメントを向上させる効果が期待できます。
ワークエンゲージメントとは、「仕事に対してポジティブな感情で満たされた状態」のことです。ワークエンゲージメントを高めることで、従業員の仕事への熱意や職場への愛着が高まり、生産性の向上や離職率の低下を実現できます。
企業にとって従業員はなくてはならない存在です。健康経営に取り組み、従業員を大切にする姿勢を示す企業や経営者は従業員からの信頼を得やすいため、大きなリターンが期待できるでしょう。
【あわせて読みたい関連記事】企業の社会的な評価が高まり、株価上昇、優秀な人材の確保につながる
健康経営に熱心に取り組むことで、対外的にも良い印象を与えることができます。「従業員を大切にするホワイト企業」という評判が広まれば、企業の社会的評価は高まるでしょう。
社会的評価が高まれば株価も上がり、自然と優秀な人材が集まるようになります。優秀な人材を確保できればさらなる業績の向上が期待でき、良い循環が生まれます。
医療費を削減できる
従業員が心身ともに健康であれば、病院にかかる機会は少なくなります。そうなれば、健康保険料(治療や投薬にかかるコストを含む)の会社負担分を削減できます。
このように、健康経営への取り組みは、従業員と企業の両者にとって、メリットが大きいといえるでしょう。
健康経営に取り組むべき企業の特徴
健康経営は企業規模や事業内容に関わらず、すべての企業が取り組むべきことです。ここでは、特に取り組む必要性が高い企業の特徴を紹介します。
従業員の平均年齢が高い
従業員の平均年齢が高い企業や事業場では、健康経営に早急に着手する必要があります。
平均年齢が40代、50代と高くなればなるほど、従業員が病気にかかる可能性も高まります。また、その年代の従業員は管理職やプロジェクトの中心メンバーであるケースが多く、適切なケアを行わなければ、事業全体が滞るおそれもあります。
企業の生産性を落とさないようにするためにも、中高年の従業員が多い企業はすぐにでも健康経営に取り組むべきです。
労働時間が長い
長時間労働や休日出勤が当たり前となっている企業は注意が必要です。長時間労働は脳・心臓疾患、精神障害との関連が認められているうえ、病院を受診する時間が取れずに重症化するケースも珍しくありません。
従業員が体調不良となって休職・離職すれば、残された従業員の負担が大きくなり、さらに不調者が増える、といった悪循環に陥るリスクもあるでしょう。
長時間労働が常態化している企業は、従業員の命に関わる非常事態であるととらえ、本気で健康経営に取り組むことが重要です。
高ストレス者が多い
ストレスチェックで高ストレス者が多く出た場合にも、積極的に健康経営に取り組むべきといえるでしょう。ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場で実施が義務付けられていますが、50人未満の事業場でも、できる限り行うことが望ましい(努力義務)とされています。
ストレスチェックの結果をもとに、高ストレス者が多い原因を把握して職場改善を行ったり、高ストレス者に産業医面談を行ったりする取り組みが必要です。ストレスチェックを実施するだけにとどめず、そのあとの健康経営に生かしていきましょう。
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最後に、経済産業省と東京証券取引所が令和3年度に選定した「健康経営銘柄2022」より、健康経営の事例を5つ紹介します。
健康経営の事例(1)富士フイルムホールディングス株式会社
富士フイルムホールディングスでは、健康経営を社会に価値を提供するための基盤と位置付け、グループが一体となって健康増進活動を行っています。
- 5つの重点領域(生活習慣病・がん・喫煙・メンタルヘルス・長時間労働)を設定
- 7つの健康行動(体重測定、休肝日設定、一日30分歩行、禁煙など)に関する専門医のオンラインセミナーやeラーニングを配信
- 就業時間内禁煙を規則化し、全社敷地内の喫煙所を撤去することで禁煙をサポート
健康経営の事例(2)アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒグループホールディングスでは、「アサヒグループ健康推進会議」を設置し、会社・労働組合・健保組合が一体となって健康経営に取り組んでいます。従業員やその家族を含めた一人ひとりの行動変容を促し、健康と生産性のボトムアップを図るため、下記の取り組みを実施しています。
- 「生活習慣改善キャンペーン」の継続実施
- 適正飲酒の理解、実践に向けて「アルコールに関するeラーニング」の実施
- 卒煙したい従業員向けの個別指導
健康経営の事例(3)花王株式会社
花王では、「花王グループ健康宣言」の下、データヘルスを活用した施策やプロジェクトを実施しています。在宅勤務により体重が増加した従業員に合わせた減量イベントを行うなど、個人の健康状態に寄り添いながら、新たな取り組みを展開しています。
- 適切な休憩を取り入れる「休み休みWorkstyle」の推奨
- 生活習慣改善のための減量イベント(オンラインラジオ体操など)
- オンラインセミナーによるヘルスケア情報の提供
健康経営の事例(4)株式会社大和証券グループ本社
大和証券グループ本社では、女性特有の健康課題を解決することで、女性管理職の比率を向上させる取り組みを行っています。更年期や不妊治療といった女性特有の悩みに向き合い、10年以上に渡り女性活躍支援を進めています。
- 女性特有の健康課題に対応するための「Daiwa ELLE Plan」の運営
(休暇制度、健康リテラシー研修、管理職への理解促進、不妊治療との両立支援など) - フィットネスアプリの提供をはじめとする健康増進イベント「KA・RA・DAいきいきプロジェクト」を開催
健康経営の事例(5)東急不動産ホールディングス株式会社
東急不動産ホールディングスでは、企業価値の持続的向上のためには従業員の健康と活力が不可欠と考え、生産性低下の一因とされる「睡眠」の改善に積極的なアプローチを行っています。
- 眠気による生産性低下を防ぐためのPCシャットダウンシステム導入
- 疲労軽減やパフォーマンス向上のための仮眠室の設置
- 禁煙のための施策(禁煙セミナー、禁煙達成者・非喫煙者へのインセンティブ付与など)の実施
まとめ
今回は、健康経営が「投資」として注目される背景やメリット、健康経営に取り組む企業の実例を紹介しました。
従業員が健康でなければ、企業経営は成り立ちません。そのことを理解し、全社一丸となって健康経営に取り組むことが重要です。
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