ストレスチェックを従業員に拒否されたらどうする?必ず受けさせるべき?
従業員が50人以上の事業場では従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、ストレスチェックの実施が義務化されました。ストレスチェックは1年以内ごとに1回(できれば毎年同じ月に)実施し、労働基準監督署に結果報告をしなくてはなりません。
しかし、従業員のなかにストレスチェックの受検を拒否する人がいた場合はどのように対応したらよいのでしょうか。
従業員はストレスチェック受検の義務がある?
国がストレスチェックを義務として命じているのは、事業所に対して従業員がストレスチェックを受検できる体制を整えるところまでです。つまり、その事業所で働く従業員に受検の義務はありません。
また、事業者には従業員へストレスチェックを実施するだけでなく、検査や医師による面談指導を受けた従業員数を報告する義務もあります。受検率が低い事業所に対する罰則規定はありませんが、報告を怠ると労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。
ただし、罰則がないとはいえ、事業所がストレスチェックを受検していない従業員を放置すると、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。安全配慮義務とは、事業者が従業員の健康に配慮し、心身の安全を守る義務のことです。
ストレスチェックは、定期的に従業員のストレス状況について検査を行ない、本人に結果を通知することで、自らのストレス状況に関する「気づき」を促し、セルフケアへの意識を高めることを目的に行なわれます。さらに、一連の検査を通じて高ストレス者を早期に発見し、適切な対応をすることで、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止することも、ストレスチェックが持つ重要な役割の一つです。
ストレスを抱えている従業員を早期発見して、医師による面談指導を推奨することで、メンタルヘルス不調の防止に大きな効果が期待できるでしょう。多くの従業員がストレスチェックを受検すれば、従業員の健康が守られるうえ、事業所の生産性向上にもつながります。
従業員に受検を強要するのはNG
安全配慮義務違反とならないよう、事業者には従業員にストレスチェックの受検を推奨する必要がありますが、一般の定期健康診断とは異なり、受検を強制することはできません。たとえ従業員にストレスチェックの受検を拒否されたとしても、強要しないように注意してください。
従業員に対する受検勧奨の方法は、事業所内の衛生委員会で調査審議したうえで決めるのが妥当です。就業規則で受検を義務付けたり、ストレスチェックを受けない従業員に対して懲戒処分を行なったりすることはできません。
なお、受検を拒否した従業員の分もストレスチェックの費用は発生するので、注意しましょう。
ストレスチェックの面談を拒否されたときの4つの対処法
従業員に対してストレスチェックの受検を強制できない以上、拒否する従業員がいるのも無理はありません。しかし、従業員の健康維持や職場環境改善のためには、できるだけたくさんの従業員に受検してもらう必要があります。
事業所として多くの従業員に受検してもらうには、どのように対応すればよいのでしょうか。
ストレスチェックの目的・メリットを正しく伝える
ストレスチェックは職場でのメンタルヘルス不調を未然に防止することや、職場環境の改善などが目的です。
ストレスチェックを受検した労働者が高ストレス者と判定された場合、面談指導の対象となります。面談指導を受ける労働者は、産業医や保健師などから必要なアドバイスをもらうことで、ストレスへのセルフケアができるようになるでしょう。
ストレスチェックを受検して自分のストレスの状態を知り、セルフケアができるようになることは、従業員が自身の健康を管理するために役立ちます。
ストレスチェックを実施する目的やメリットをしっかりと伝え、従業員が自ら進んで受検するようにできれば理想的です。
繁忙期の実施は避ける
ストレスチェックを受検しようと思っていても、仕事が忙しいと受けるのが難しい状況や心理状態になってしまうこともあります。ストレスチェックの実施時期は、従業員の負担とならないよう繁忙期を避けましょう。
年間で繁忙期・閑散期がある程度決まっているなら、なるべく閑散期に実施するのがおすすめです。
結果の取り扱い方法について説明する
従業員のなかには、職場に自分のストレス状態を知られたくない気持ちから、受検を拒否する方もいるでしょう。
ストレスチェック結果は、実施者または実施事務従事者により封書や電子メールなどで個別に直接通知されます。そのため、従業員本人の同意なしで事業者に通知されたり、第三者に結果が漏れたりすることは決してありません。そのことを従業員にしっかりと周知しましょう。
人事に影響はないことを強調する
従業員が受検を拒否するのは、「ストレスチェックの結果が良くないとき、人事や昇進への悪影響が心配」という理由もあります。
ストレスチェックの実施事務に従事できるのは、人事権のない職員のみです。社長や専務、人事部長など、人事権を持つ場合はストレスチェックの結果を閲覧できません。
案内文書や実施規定などに、ストレスチェック結果によって不利益な取り扱いを受けることはない旨を明記し、従業員にしっかりと伝える必要があります。
ストレスチェック後の面談も従業員に拒否されるケースがある
ストレスチェックの実施者は、受検の結果、高ストレスと判定された従業員に対して医師による面談を受けるように勧めます。ただし、これに強制力はなく、あくまでも機会の提供です。
ストレスチェックを受けなくても、不利益な取り扱いをされないことと同じく、高ストレス者と判定された従業員が面談を受けなくても不利益を被ることはありません。
しかし、ストレスの程度が高いと判定された従業員はうつ病といった精神疾患を発症する可能性があるため、速やかに産業医による面談を受けるのが理想的です。そのために、従業員にどのような働きかけを行なうとよいのでしょうか。
高ストレス者への面談は本人の申出で実施される
ストレスチェックの受検結果は従業員本人に直接通知されるので、高ストレスとの通知を受けた従業員が、医師の面談指導を受けるかどうかは本人の申出次第です。面談を受けないからといって無理やり受けさせたり、不利益な取り扱いをしたりすることはできません。
ストレスチェックの結果、面談が必要と判定された従業員に対しては、面談指導の対象者を把握している産業医ら実施者が申出を推奨しましょう。推奨する方法には以下の3つがあります。
- ストレスチェックの実施者が結果を通知するときに、本人に面談の対象者であることを伝え、推奨する
- スレレスチェックの結果通知から一定の期間を空けたのち、本人に封書またはメールでその後の状況を確認し、面談を申し出るよう推奨する
- 事業者から面談対象者の情報提供を受け、まだ申し出ていない対象者に推奨する
従業員本人の同意により事業者が面談の必要性を把握している場合は、不利益な取り扱いにならないよう注意しながら、事業者が推奨することも可能です。なお、面談はストレスチェックの結果通知後、おおむね1ヵ月以内に申し出る必要があります。
ストレスチェック後の面談をスムーズに受けてもらうには?
ストレスチェック後の面談を拒否する従業員には、「面談を受ける時間がない」「面談の内容を会社に知られたくない」など、何らかの理由があるはずです。面談を拒否する従業員に理由を聞いて、把握・対応しましょう。
多忙で受ける時間が取れないなら、業務配分を見直すといった面談を受けやすい環境を整えることが大切です。面談に対して不安や抵抗を感じているのであれば、それらを取り除くように配慮し、面談を受けるメリットを説明しましょう。
まとめ
ストレスチェックの実施は事業者にとって義務であり、従業員の健康を守る重要な取り組みです。
しかし、従業員に受検を強制することはできません。従業員の立場に立ってストレスチェックの目的やメリットを丁寧に説明し、お互いに気持ち良くストレスチェックを実施できるような職場の環境作りや雰囲気作りを心がけましょう。
ストレスチェックについてより詳しく知りたい方は、リモート産業保健による企業向けガイドブックや、問い合わせフォームから請求できる資料を活用してみてください。
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職場におけるさまざまなストレス要因が増加する中、ストレスチェックを活用することで、労働者のメンタルヘルス不調にいち早く対応することが重要です。
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