ストレスマネジメントとは?コーピングなど効果的な対処法についても解説

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ストレスマネジメントとは?

ストレスマネジメントとは、生じたストレスを溜めこまず、適切に対処していくことです。誰でも日々のストレスを受けますが、過度に受けたり、対処できていなかったりすると心身に悪影響を与えます。

とはいえ、日々のストレスをすべてなくすことは難しいものです。しかし、ストレスを抱えたときの対処法を知っておくことで、心身への悪影響は防げます。ストレスマネジメントは、ストレスの要因が多い現場(看護、介護、教育など)でも広く活用されています。

ストレスの定義|ストレッサー、ストレス反応について

「ストレス」と聞くと良いイメージはあまりないかもしれませんが、実は日常で起こるうれしい出来事も「ストレス」の原因になります。ストレスマネジメントについて知る前に、ストレスの定義についてあらためて確認しておきましょう。

ストレスの定義

「ストレス」はもともと物理学の用語で、外部からの刺激により物体に圧力がかかり、歪みが生じた状態のことをいいます。これが転じて、外部からの刺激によって生じる、心身の緊張状態が「ストレス」と呼ばれるようになりました。

また、医学や心理学の領域では、外部から心や体にかかる刺激を「ストレッサー」、ストレッサーによって起こる心や体の反応を「ストレス反応」と呼びます。

ストレッサーの種類

心や体に影響を与えるストレッサーはさまざまですが、おもに下記の3つに分類されます。

  • 物理的ストレッサー:臭気、騒音、暑さ、寒さなど
  • 化学的ストレッサー:公害物質、薬物、一酸化炭素など
  • 心理・社会的ストレッサー:仕事、対人関係、家庭の問題など

私たちが「ストレスがかかっている」というものの多くは、「心理・社会的ストレッサーがある状態」のことを指しています。

ストレス反応の種類

ストレッサーによって起こるストレス反応は、心理面・身体面・行動面の3つに分けられます。具体的なストレス反応は下記のとおりです。

  • 心理面のストレス反応:不安、悲しみ、イライラなど
  • 身体面のストレス反応:体の痛み、疲れ、食欲低下、不眠など
  • 行動面のストレス反応:仕事でのミスの増加、暴飲暴食など

例えば、進学や就職の際に、うれしい気持ちがある一方で、「うまくやっていけるだろうか」と不安や心配を感じることがあるでしょう。このとき、進学や就職が「ストレッサー」となり、うれしい、不安といった「心理面のストレス反応」が起きているのです。

このように、喜ばしい出来事もストレッサーとなり、ストレス反応につながります。適度なストレスは集中力や判断力を向上させますが、強いストレス状態が長く続くと、心身に悪影響を与えるおそれがあります。

変化が激しい現代社会のなかでストレスとうまく付き合い、自身のパフォーマンスを高めるためにも、「ストレスマネジメント」を取り入れることが重要です。

職場におけるストレスマネジメントの種類

職場におけるおもなストレス要因としては、以下のようなものが考えられます。

職場環境

労働環境(職場の温度、湿度、換気、騒音、照明の明るさなど)や作業環境(机、いす、パソコンの高さや位置など)が整えられていない、配属先での立場や居場所がない、など。

人間関係

ミスをすると上司から大声で文句や悪口を言われる、肩や髪を触られるなどのハラスメントを受ける、どうしても苦手な人がいる、飲み会を断れない、いじめや陰口があって職場の人間関係が良くない、など。

労働時間

定時に帰れず残業が多い、休日出勤が多く休む時間がない、など。

業務量

仕事の量が多く業務時間内に終わらない、仕事が極端に少なく暇を持て余している、など。

実際、令和3年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、「仕事や職業生活に強いストレスを感じている」と答えた労働者の割合は53.3%という結果でした。ストレスの内容としては、仕事の量や質、仕事の失敗、対人関係などが挙げられています。

出典:厚生労働省「令和3年労働安全衛生調査(実態調査)」

本章では、上記のような問題に対処するストレスマネジメントを紹介します。

ラインケア

ラインケアとは、部長や課長、チームリーダーなどの管理監督者が、部下に対して精神面のケアを行なうことをいいます。

ラインケアで重要なのは、部下の「いつもと違う」様子に、管理監督者がいち早く気付くことです。以下のような兆候を見逃さないよう注意しながら、効果的なラインケアを行なうのが望ましいでしょう。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 残業、休日出勤が急激に増える
  • 思考力・判断力が低下し、仕事のミスや遅延が増える
  • 職場での会話が極端に少なくなる、または多くなる
  • 活気や元気がない、または不自然に明るい
  • 不自然な言動が目立つ
  • 服装が乱れている

上記のような兆候を見逃さないためにも、日頃から密なコミュニケーションを心がけることが重要です。部下の表情や仕事に取り組む様子、行動パターンなどに気をつけながら、より良い関係を構築していきましょう。

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セルフケア

セルフケアとは、従業員本人が行なうストレスマネジメントのことをいいます。セルフケアに取り組むには、まずは自身のストレスに気付くことが大切です。

ストレスへの対処法を知っていれば、自身の不調に速やかに対処し、ストレスをうまく解消することができます。

また、メンタルヘルスの問題には、生活習慣が大きく影響するといわれています。カリフォルニア大学のブレスロー教授が提唱した「7つの健康習慣」を参考に、健康的なライフスタイルを実践するのも、立派なセルフケアの一環です。

  • 喫煙をしない
  • 定期的に運動をする
  • 飲酒は適量を守るか、しない
  • 1日7~8時間の睡眠を
  • 適正体重を維持する
  • 朝食を食べる
  • 間食をしない

参考:ブレスローの7つの健康習慣を実践してみませんか?|厚生労働省 e-ヘルスネット

専門家によるケア(事業所内)

専門家によるケアとは、先述したラインケアやセルフケアが効果的に行なえるよう、産業医、保健師、カウンセラーなどの専門家が行なうケアのことです。

事業所内の専門家が中心となって、企業の具体的なメンタルヘルスケアの対策を立案したり、従業員や管理監督者からの相談に対応したりします。企業規模によっては、人事労務担当者が担当するケースもあります。

専門家によるケア(事業所外)

「社内の人間への相談を躊躇する従業員が多い」「企業が適切なケアを実施することが難しい」といった事情で事業所内の専門家で対応できない場合には、外部の専門家を活用して支援を受けます。例えば、労災病院、都道府県産業保健推進センター、地域産業保健センター、従業員支援プログラム(EAP)などが挙げられます。

ストレスマネジメントで何が変わる?期待できる効果・メリットを紹介

効果的なストレスマネジメントを実施することは、従業員・企業の双方にメリットがあります。期待できるおもな効果は以下のとおりです。

【従業員側のメリット】

  • 自身が無意識に抱えているストレスに気付ける
  • ストレスによる心身の健康の悪化を予防できる
  • ストレスに対する解決策を導き出せる
  • 仕事・家庭の両方で、安定したパフォーマンスを発揮できる

効果的なストレスマネジメントは、自身のストレスへの気付きや対処につながり、結果的にストレスによる休職や退職を防ぐことができます。心身ともに健康で長く働き続けるために、従業員のストレスマネジメントは必要不可欠といえます。

【企業側のメリット】

  • 従業員の休職や離職を防げる
  • 職場全体の雰囲気が明るくなり、組織が活性化する
  • 従業員のモチベーションや生産性が向上する

従業員の健康状態と企業の業績には、密接な関係があります。個人任せではなく、ストレスマネジメントを通して職場環境の改善やトラブルの未然防止などを行ない、従業員の心身の健康を守ることは企業の役割ともいえます。

ストレスの程度を測る「ストレスチェック制度」について

ストレスの程度を知る方法として、「ストレスチェック制度」があります。ストレスチェックの目的は、労働者が自身のストレスに気付き、自ら積極的に対処・予防することです。

常時50人以上の労働者を使用する事業場には、1年以内ごとに1回のストレスチェックの実施義務があります。(労働安全衛生法第66条の10)

そしてストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された者から申し出があった場合、事業者は産業医などの医師による面談を実施しなければなりません。

また企業側は、ストレスチェックの集団分析を活用して、従業員のストレッサーになっている事業場の問題を洗い出し、職場改善などの措置を行なうことが望ましいでしょう。

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ストレスマネジメントの方法「コーピング」とは?

ここからは、ストレスマネジメントの手法である「コーピング」について解説します。「コーピング」には「問題に対処する、対応する」という意味があり、ストレスに対処するための行動を「ストレスコーピング」といいます。

ストレスコーピングはおもに下記の3つに分類することができます。

ストレス解消型コーピング

ストレスを受けたあと、ストレスの原因から離れて、他のことに気持ちを向けることでストレスを解消していく方法のことをいいます。

多くの人が無意識に取り入れていて、マッサージ・ヨガ・アロマテラピーを受けて癒される、食事や運動、買い物などで気晴らしをするなど、人によってさまざまなリフレッシュの方法があります。

問題焦点型コーピング

名前のとおり、原因となっているストレッサーに目を向けて、問題を解決していく方法のことをいいます。例えば、「仕事が多く、業務時間内に終わらないことがストレスになっている」場合は、「上司と相談して仕事量を減らしてもらう」といった解決方法をとります。

「職場に苦手な人がいてストレスを感じている」場合には、「ストレスの要因である人と距離を置く」といった方法をとるのも問題焦点型コーピングです。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングとは、自分の感情を見つめて、ストレスに対する考え方や感覚を変えていく方法です。

例えば、「上司が威圧的な態度で辛い」場合は、「自分だけに威圧的なわけじゃない、ただ怒りっぽいだけだ」「期待されているから、指導に力が入っているんだ」とポジティブに考えることで、自身のストレスを軽減します。

ネガティブな物事も、見方を変えるとポジティブになるものです。物事へのとらえ方を変えて気持ちを整理することで、自然と前向きになり、次の行動を考えることができます。

上記3つのストレスコーピングを状況に応じて使い分けることで、強いストレスにも対処でき、自分自身を守れるようになります。従業員から相談を受けたときも、ストレスコーピングを活用すれば適切なアドバイスや問題解決ができます。

ストレスへの対処方法の基本として、ぜひストレスコーピングを押さえておきましょう。

ストレスマネジメントの方法「セルフモニタリング」とは?

「セルフモニタリング」とは、自身の心身の状態を記録して適切な対処法を見つけていく方法のことで、有効なストレスマネジメントの一つとして位置づけられています。

実践方法に特に決まりはなく、紙に書く、スマートフォンやパソコンのメモや日記を使用するなど、自身が取り組みやすい方法で行ないます。

書き方にも決まりはありませんが、ストレッサーは何だったのか、ストレスを感じたときの気分、考えたこと、行動、体調の変化などを記録して、客観的な分析を行ないます。

継続して記録すれば、自分がどのようなときにどのような感情になり、どのような対処を行なうと楽になるのか、といった行動の指標になるため、自身をコントロールしやすくなります。

まとめ

今回は、ストレスマネジメントの意味や効果的なストレスマネジメントの方法について解説しました。私たちは日々ストレスを感じながら生きていますが、強すぎるストレスは心と体の健康を害するため、ストレスと向き合い、うまく解消していくことが大切です。

そして企業には、従業員のストレスを軽減させ、自身でストレスマネジメントを行なえるようにサポートすることが求められます。健康経営の一環として、従業員のストレスマネジメントに積極的に取り組み、従業員の心身の健康を守りましょう。

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