産業医は中小企業にも必要です!選び方のコツと助成金について解説!

産業医がいない企業に選び方のコツ

執筆者

産業看護職兼ライターとして活動しています!

2017年に4年生大学を卒業し、看護師として循環器・呼吸器の急性期病棟に就職しました。最先端の治療を行なう医療機関のため、重症の患者様が入院されることも多く、状態の変化が激しいため、チームの一員として患者様の看護や治療の補助にあたり、時には命に関わる救命処置を行なうこともありました。

その中で、入退院を繰り返す患者様を多く見てきたため、退院後の患者様の生活や地域での医療と福祉に興味を持ち、地域包括支援センターの保健師として勤務しました。

忙しくも充実した毎日を過ごしていましたが、私自身が神経系の難病を患ったため、保健師を退職したのち、「今の自分にできることは何か」を考え、産業看護職兼ライターとしての仕事を始めることになりました。

2021年からライターとして活動を始め、産業保健分野を中心に、法律に基づく企業の法令遵守項目や産業保健活動の内容について、80本以上の記事を執筆しています。
記事を読んだ方がすぐに活用・実践できるような内容になるよう、意識して作成しています。

ライターの仕事は、文章を書く楽しさと知識が深まる嬉しさがあるので、今後も経験を重ね、産業保健分野の専門家として、「読んでよかった」と感じていただける文章を目指していきます。

趣味はストレッチ、家計管理、野球・サッカー観戦、ゲームです。どうぞよろしくお願いします!

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

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中小企業の健康経営に欠かせない、産業医の役割とは?

産業医の役割は「医学的専門家として労働者の健康保持・増進をサポートすること」です。産業医はストレスチェック、健康診断、労働者への面談、職場巡視などの業務を通して、労働者が継続して健康的に就労できるよう支援を行ないます。

特に、メンタルヘルス不調や長時間労働などに関するケースは、専門知識のない企業担当者だけで対応すると、事態を悪化させ、経営全体に悪影響を与える可能性があります。

そのため、医学の専門知識を持つ産業医は、労働者の健康増進を戦略の一つとして実践する「健康経営」には欠かせない存在です。

事業者が産業医とともに健康経営に取り組むことで、労働者の心身の健康維持を図ることができます。労働者が心身ともに健康であれば、生産性の向上、業績の拡大、企業価値の向上につながるでしょう。

産業医の業務内容・報酬相場などの基本情報や医師との違い、法改正による権限強化などについての詳細は、下記の関連記事をご参照ください。

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産業医の選任条件は、事業場の労働者数で決まる

産業医の選任は、「常時使用する労働者数が50人以上の事業場」で義務付けられています。

つまり、中小企業でも「事業場で常時使用する労働者数が50人以上」になると、法律に基づいて産業医の選任義務が発生します。(労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条)

産業医の選任をしない場合、罰則はある?

産業医は、「産業医の選任義務が発生した日から14日以内」に選任しなくてはなりません(労働安全衛生規則第13条)。

産業医の選任義務が発生しているにもかかわらず、選任をしない場合には、50万円以下の罰金が科されます(労働安全衛生法第13条第1項、第120条)。

その他、産業医としての業務を十分に行なっていない「名義貸し産業医」「名ばかり産業医」なども罰則の対象となるおそれがあるため、注意が必要です。具体的には、書類に名前があるだけで職場巡視をしていない、必要な面接指導を実施していない、といった状況がこれに当てはまります。

企業によっては、事業場で常時使用する労働者数が50人以上になったことに気付かず、産業医の選任期限を過ぎてしまうケースも少なくないため、この機会に確認することをおすすめします。

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労働者数50人未満の中小企業に、産業医はいらない?

事業場で常時使用する労働者数が50人未満の中小企業の場合、産業医の選任義務はありません。ただし、中小企業でも、大企業と同様に「安全配慮義務」が求められることには変わりありません。

安全配慮義務とは、労働契約法第5条に定められている、使用者が労働者の心身の安全を確保するために配慮すべき義務のことです。

メンタルヘルス不調や長時間労働などが起きているなかで、産業医面談やストレスチェックなどの対策を怠った結果、労働者に損失が生じた場合は、使用者の安全配慮義務違反にあたる可能性があります。

また、定期健康診断は、たとえ労働者が1人であっても事業者に実施義務があります(労働安全衛生法第66条第1項)。そして、健診結果で異常の所見がある労働者がいた場合は、事業者は産業医から必要な措置に関する意見を聴かなければなりません(労働安全衛生法第66条の4)。

上記のように、産業医の存在が必要となるタイミングは多々あるため、選任が努力義務であっても、産業医と連携できる体制をあらかじめ整えておくことが大切です。労働者の健康と安全を守り、事業拡大を目指すうえでは、できる限り産業医を選任することが望ましいでしょう。

なお、地域産業保健センターでは、常時使用する労働者数が50人未満の事業場の事業者や労働者に対して、産業医面談や健康相談窓口など一部の産業保健活動を無料で提供しています。「産業医を選任する金銭的な余裕がない」という場合には、一度相談してみることをおすすめします。

中小企業も必見!産業医選任のメリット

産業医を選任する最大のメリットは、企業の経営維持と発展につながることです。法令順守という側面もありますが、それ以上に産業医は企業の永続と繁栄に貢献する存在といえます。

産業医の職務としては、おもに以下の9つが挙げられます。

  1. 健康診断の実施とその結果に基づく措置
  2. 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  3. ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
  4. 作業環境の維持管理
  5. 作業管理
  6. 上記以外の労働者の健康管理
  7. 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
  8. 衛生教育
  9. 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

出典:労働安全衛生規則第14条第1項|e-Gov法令検索

産業医を選任していない事業場では、上記に挙げた従業員の心身の健康管理や休職・退職の対応などを、すべて事業場内で行なわなければなりません。しかし、専門知識がなければ、従業員の体調不良時に適切な対処やサポートをするのは難しいでしょう。

従業員の健康管理や体調不良者のサポートが適切に行なわれないと、欠勤者や休職者が発生し、ほかの従業員に業務負担がかかります。その結果、さらなる体調不良者や休職者の発生につながる悪循環となり、最終的には企業の経営自体に支障をきたす問題に発展しかねません。

産業医を選任することで、そのような事態の発生予防が期待できます。産業医は、職場巡視の実施を通して職場環境と作業内容の確認を行ない、衛生委員会で改善に向けた働きかけを実施します。

また、健康診断や産業医面談で従業員の不調の兆候を早期に発見し、それぞれの業務や環境に合わせた適切な対応について判断することも、産業医の重要な役割です。

産業医の専門的知見から出された意見をもとに職場改善を行なえば、休職者や退職者の発生を抑制できるうえ、従業員の健康に配慮するホワイト企業として、社内外のイメージアップにもつながるでしょう。

産業医の選任は、このように大きなメリットを企業にもたらします。産業医と連携して、労働者の健康と安全を守り、企業の経営維持と成長を図りましょう。

中小企業向け|産業医選びのコツ4選

前述のとおり、労働安全衛生規則第13条第1項では、産業医を選任する必要が出たときから14日以内に、産業医を選任しなければならないとされています。したがって、産業医の選任が必要になったら、すみやかに産業医を探さなければなりません。

産業医の探し方としては、おもに以下の4つの方法があります。

  • 都道府県ごとの医師会に相談する
  • 近隣の医療機関に相談する
  • 健康診断を実施している健診機関に相談する
  • 産業医マッチングサービスを利用する

1.都道府県ごとの医師会に相談する

全国47都道府県にはそれぞれ医師会があり、その地域で働く医師が登録されています。そのため、医師会に相談すれば、その地域の産業医を紹介してくれることがあります。

ただし、産業医業務の依頼や報酬などの交渉などは、すべて企業側が行なわなければならないため、直接交渉する時間と労力が必要です。

2.近隣の医療機関に相談する

事業場の近くの医療機関に、直接依頼できる場合があります。事業場と医療機関の距離が近ければ連携しやすく、安心感もあります。しかし、産業医がいなかったり、医療機関に余裕がなく断られたりする可能性があります。

3.健康診断を実施している健診機関に相談する

健康診断はどの企業でも実施しているはずなので、その健診機関に相談することも一つの方法です。健康診断で接しているので連携がとりやすく、サポートの質も高いのが魅力です。また、医療機関を探す手間がかからず、普段からかかわっていることから交渉もしやすいでしょう。

しかし、その健診機関に産業医がおらず、断られることもあります。その他、健診機関の産業医が企業のニーズに合わなかったり、かえって交渉や相談がしづらかったりするおそれもあります。

4.産業医マッチングサービスを利用する

産業医マッチングサービスとは、事業場の特徴やニーズに合わせた産業医を紹介してくれるサービスです。サービスを活用することで、産業医を探したり交渉したりする手間がなくなります。

産業医は、医師の資格とともに、特定の研修を受けて産業医資格も取得しなければなりません。そのため、医師のなかでも産業医の数は限られており、探すだけでも大変な労力がかかります。また、産業医を見つけたあとも、企業のニーズに合わせた連携や日々のやり取りなどを長く続けていくことになるため、産業医との相性も重要です。

それらを踏まえると、最もおすすめの方法はこの「産業医マッチングサービス」の利用といえるでしょう。

産業医のマッチングサービスには、仲介料などの費用がかかるため、敬遠する企業もあるかもしれません。しかし、その地域にいる質の高い産業医を見つけてもらえるうえ、企業のニーズにぴったり合った産業医を紹介してもらえるのは、見逃せないメリットといえます。

産業医の選任費用は、経営戦略における必要経費といっても過言ではありません。ぜひ、マッチングサービスを利用して、長く付き合える相性の良い産業医を見つけましょう。

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産業医選任後の手続き|届出に必要な書類と入手方法

産業医は、選任する必要が出たときから14日以内に選任し、遅滞なく産業医選任報告書を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

申請に必要なものは、産業医選任報告書、医師免許証のコピー、産業医の資格を証する書類(産業医選任報告書の別表に記載)のコピーです。免許証などは、選任した産業医に準備しておいてもらいましょう。

産業医選任報告書については、以下の方法で入手できます。

  • 労働基準監督署で直接もらう
  • 厚生労働省のホームページに「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」という様式があるため、ダウンロードして印刷する
  • 厚生労働省が作成した「労働安全衛生法関係の届出・申請など帳票印刷に係る入力支援サービス」で作成し、印刷する

3つ目のサービスは申請をオンライン化するものではないため、作成した書類は所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。選任報告書の記入と必要書類の準備ができたら、期限内に提出しましょう。

なお、産業医選任届の手続きの流れや記入例などについて詳しく知りたい方は、下記の関連記事もご参照ください。

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産業医選任後の手続き|労基署への届出方法

産業医選任報告の書類を揃えたら、労働基準監督署に届け出をしましょう。産業医選任届を提出する方法は以下の3つです。

1.労働基準監督署へ直接提出する

労働基準監督署の窓口へ直接提出します。休日や祝日、時間外は窓口が開いていないので、日数に余裕を持って提出しましょう。

2.労働基準監督署へ郵送で提出する

郵送での提出も可能です。労働基準監督署の受領印がある選任報告書の控えが欲しい場合には、選任報告書2部と返信用封筒(切手貼付、宛名記入)を忘れずに同封しましょう。

3.e-Govにて電子申請する

提出書類を電子ファイルにして、パソコンから申請することもできます。システムは24時間365日利用可能で、会社や自宅からでも提出できます。ただし、システムのメンテナンスや異常時には使えなくなることもあるため、提出は日数に余裕をもって行ないましょう。

産業医選任が必要になったタイミングから選任後の報告まではあまり時間がないため、スムーズに行なえるよう、事前に準備しておくと安心です。

中小企業の産業医選任は、助成金を活用しよう

産業医の選任が義務ではない企業のなかには、「うちには50人も労働者はいないし、お金もかかるし、まだいいかな」と、選任を後回しにしているところもあるでしょう。

たしかに、嘱託産業医でも報酬相場は月に7~15万円となかなかの料金で、簡単に捻出できる金額ではありません。中小企業等の産業保健活動を支援する助成金としては、「団体経由産業保健活動推進助成金」があります。

団体経由産業保健活動推進助成金とは、事業主団体等が傘下の中小企業等に対して、各種産業保健サービスを提供するために産業保健スタッフと契約した際に、活動費用の80%(上限100万円)を助成するものです。

なお、助成を受けられる産業保健活動は、以下のとおりです。

  1. 医師、歯科医師による健康診断結果の意見聴取
  2. 医師、保健師による保健指導
  3. 医師による面接指導・意見聴取
  4. 医師、保健師、看護師等による健康相談対応
  5. 医師、保健師、看護師、社会保険労務士、両立支援コーディネーター等による治療と仕事の両立支援
  6. 医師、保健師、看護師等による職場環境改善支援
  7. 医師、保健師、看護師等による健康教育研修、事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発

※上記1~3については、労働安全衛生法に基づくものに限ります
※上記の医師、保健師については、産業医又は産業医の要件を備えた医師や、産業保健について知識・経験のある保健師であることが望ましいです。

出典:団体経由産業保健活動推進助成金のご案内|厚生労働省

まとめ

中小企業でも、常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、産業医の選任が法律で義務付けられています。また、労働者数が50人未満でも、努力義務として産業医を選任することが推奨されています。

気付かないうちに労働者数が50人以上になっていることもあるため、まずは事業場の労働者数を確認しましょう。選任義務が発生していた場合は、14日以内に産業医を選任して労働基準監督署へ報告する必要があります。

産業医を選任することで、自社従業員の適切な健康管理や職場環境が可能になります。しかし、自社のニーズに合う相性の良い産業医を探すことは簡単ではありません。そこでおすすめなのが、リモート産業保健のサービス利用です。

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