健康診断の項目には何があるのか?健康診断の種類別に解説

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労働安全衛生法第66条に基づき、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならず、労働者は事業者が行なう健康診断を受診しなければなりません。健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があり、受診する労働者の業務内容によって受ける健康診断は異なります。

そこで本記事では、2種類の健康診断について、受診の条件や項目について詳しく解説します。

健康診断の項目【全11項目】

一般健康診断は、職種にかかわらずすべての企業が実施すべき健康診断で、その対象者は「常時使用する労働者」です。

「常時使用する労働者」とは、「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上」の労働者のことを指します。この要件を満たしていれば、契約社員やアルバイト・パートなどの短時間労働者も対象となります。

5種類ある一般健康診断のうち、定期健康診断は1年に1回、雇入時健康診断は労働者を雇用する直前または直後に実施します。

定期健康診断は年齢や条件次第で省略できる項目があるので、受診者に合わせて確認が必要です。

定期健康診断の項目【全11項目】

定期健康診断では、労働安全衛生規則第44条に基づき、以下の11項目が実施されます。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査、及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTPの検査)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの量の検査)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査

出典:労働安全衛生規則第44条|e-Gov法令検索

労働安全衛生規則第44条第2項により、平成30年4月から定期健康診断の項目の一部省略が可能になりました。医師が必要ないと認めたときに省略できる項目と対象者、条件は下表のとおりです。

診断項目 医師が必要でないと認めるときに診断項目を省略できる者
身長 20歳以上の者
腹囲 次のいずれかに当てはまる者
(1)40歳未満(35歳を除く)の者
(2)妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映し ていないと診断された者
(3)BMI(次の算式により算出したものをいう。以下同じ。)が20未満で ある者 〔 BMI=体重(kg)/身長(m)2 〕
(4)自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満の者に限る。)
胸部エックス線検査 40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
(1)5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の者
(2)感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者
(3)じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者
喀痰検査 次のいずれかに当てはまる者
(1)胸部エックス線検査を省略された者
(2)胸部エックス線検査によって病変の発見されない者又は胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
血液検査(貧血検査、 肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査) 心電図検査 35歳未満の者、及び36~39歳の者

雇入時健康診断の項目【全11項目】

雇入時健康診断では、労働安全衛生規則第43条に基づいて以下の項目を実施します。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTPの検査)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの量の検査)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査

出典:労働安全衛生規則第43条|e-Gov法令検索

検査項目はほぼ同じですが、雇入時健康診断には「喀痰検査」が含まれておらず、定期健康診断のように検査項目が省略されることもありません。

特定業務従事者の健康診断の検査項目は、定期健康診断と同じ

特定業務従事者健康診断とは、有害物質を扱う業務、深夜業務などに従事する労働者が受ける健康診断です。特定業務従事者健康診断は、定期健康診断や雇入時健康診断と同じく「一般健康診断」に該当します。

そのため、検査項目は定期健康診断と同様です。特定業務従事者の健康診断について詳しく知りたい方は、以下のリンクもご確認ください。

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各健康診断の違いとは?

前述のとおり、定期健康診断・雇入時健康診断・特定業務従事者の健康診断は、一般健康診断に該当します。一般健康診断は業種を問いませんが、健康被害が起きるリスクが高い業務の従事者は、「特殊健康診断」を受ける必要があります。

労働安全衛生法施行令第22条において、特殊健康診断の実施が義務付けられている業務は、以下のとおりです。

  • 高気圧業務
  • 放射線業務
  • 特定化学物質業務
  • 石綿業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤業務

上記の有害業務以外に従事する労働者を対象に実施する健康診断としては、じん肺健康診断(じん肺法第3条、7条~11条)、歯科特殊健康診断(労働安全衛生規則第48条)などがあります。詳細については、最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に問い合わせてください。

健康診断の結果によっては、事業者は労働者の配置転換や労働時間の短縮などの措置を講じる必要があります。「健康診断の種類」については、以下の記事でさらに詳しく説明しています。

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各健康診断の対象者

ここでは、健康診断の対象になる労働者の条件について解説します。従事する業務により、対象となる健康診断も変わってきます。

定期健康診断の対象者

定期健康診断の対象となる労働者は、業種を問わず「常時使用する労働者」です。正社員だけでなく、契約社員や条件を満たしているアルバイト・パートも含まれます。

アルバイトやパートといった短時間労働者が「常時使用する労働者」となる条件は、「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上であること」です。ただし、「特定業務」に従事する労働者は除きます。

なお、「特定業務」に該当するのは以下の業務です。

  • 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務

労働安全衛生規則第45条で、上記の業務に常時従事する労働者に対して、配置替えの際及び6ヵ月に1回の健康診断の実施が定められています。

出典:労働安全衛生規則第13条第1項第3号|e-Gov法令検索

雇入時健康診断の対象者

定期健康診断と同様に、雇入時健康診断の対象者も「常時使用する労働者」です。パートなどの短時間労働者の条件も、定期健康診断で解説した条件と同様になります。

なお、特定業務従事者の雇入時健康診断では、「6ヵ月以上使用されることが予定される、または更新により6ヵ月以上使用されている者」を対象とします。

出典:労働安全衛生規則第43条|e-Gov法令検索

健康診断はいつ実施する?

次に、健康診断をいつ実施すればよいか解説します。受診の漏れがないよう、スケジュールの管理を徹底しましょう。

定期健康診断は1年以内ごとに1回実施する

定期健康診断は1年以内ごとに1回、定期的に実施することが労働安全衛生規則で定められています。毎年同じ時期に日程を設定するなどして、1年以上の間隔が空かないよう、定期健康診断の実施期間を決める必要があります。

出典:労働安全衛生規則第44条|e-Gov法令検索

雇入時健康診断は入社時に実施する

雇入時健康診断は、入社の直前か直後に実施するのが基本です。しかし、本人が入社3ヵ月以内に健康診断を受け、診断書を会社に提出すれば、雇入時健康診断を省略できます。ただし、診断書による検査の内容が、規定の11項目をすべてカバーしている場合に限られるので、あらかじめ確認が必要です。

出典:労働安全衛生規則第43条|e-Gov法令検索

健康診断の項目以外に、押さえておきたいポイント

先述したように、定期健康診断と雇入時健康診断では、11項目の健康診断を受診する必要があります。

健康診断の実施は事業者の義務であり、労働者は健康診断を受ける義務があります。健康診断を実施しなかった場合、労働者が罰せられることはありませんが、事業者側が50万円以下の罰金を科せられる可能性があるので十分に注意しましょう。

そのほか、健康診断を実施するにあたり、健康診断結果の保管義務や診断結果の報告の義務、費用の負担者など、企業担当者の方が確認すべき点は多岐にわたります。さらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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まとめ

労働者の健康管理は事業者の義務であり、適切な健康診断の実施は人事労務および総務担当者の方の大きな任務です。

実施の詳細やスケジュール管理などに不安がある担当者の方は、ぜひリモート産業保健にご相談ください。リモート産業保健では、産業保健に関する専門知識が必要な健康診断のスケジュール管理や、実施にあたって発生する事務業務、事後措置などについても一括サポートします。

さらに、産業保健に役立つ各種ガイドブックもご用意しておりますので、お気軽にダウンロードやお問い合わせをしてみてください。

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