組織サーベイは、組織の問題点や課題を把握する良い手段です。問題点や課題に対して早期に対策ができれば、事態が悪化する前に防ぐことができます。しかし、組織サーベイは具体的にどういったものなのか、どのように実施すればいいのかイメージしにくいという方もいるのではないでしょうか。本記事では、組織サーベイの目的やメリット・デメリット、実施手順について詳しく紹介します。
組織サーベイとは?
組織サーベイとは、自社の問題点や課題を把握するために行なわれる従業員アンケートです。調査内容は目的によって異なるため、何を調べたいのかによって使い分ける必要があります。例えば、従業員満足度調査では、職場環境や人間関係などの従業員満足度を把握することができます。ストレスチェックでは、集団分析によって職場におけるストレス要因を評価し、働きやすい環境づくりに役立てることができるでしょう。複数の組織サーベイを行なっていれば、より多角的な視点で組織をとらえ、効果的なアプローチへつなげることができます。
また、組織サーベイは1回実施して終わりではなく、定期的に実施することで、問題点に対する改善活動の成果が出ているか評価することが大切です。組織の問題点をより詳細に把握するために設問内容を見直し、次回以降の組織サーベイに反映するなど、より効果的なものにしていきましょう。
組織サーベイが注目される背景とは?
少子高齢化により企業の人材確保が課題となっているなか、近年は転職が身近になったことで、企業の人材確保の競争がますます激しくなっています。そこで、人材確保や定着のためのさまざまな施策が必要になってきました。施策を実施するにあたり、まずは組織の現状を把握しなければなりません。そこで組織サーベイが注目されているのです。
また、人材の問題だけでなく、潜在的な経営リスクを早期に発見して対策できれば、事態が深刻化する前に防ぐことができます。
組織サーベイと社内アンケートとの違い
サーベイとは、英語で調査するという意味です。組織サーベイの調査方法は社内アンケートと同じような形式ですが、調査だけでなく、分析や施策実行までを含む点で社内アンケートとは異なります。
組織サーベイの目的とは?
組織サーベイの目的は、調査により組織の問題点を把握し、改善することです。例えば、エンゲージメントサーベイで労働者のエンゲージメントを把握し、労働者と企業間の認識のギャップを知ることで、改善のための施策に活かすことができます。従業員満足度やストレスチェックなどほかの組織サーベイも同様に、まずは調査で現状を把握し、改善活動につなげます。
近年では、若年層の離職防止や人事施策に活かすために組織サーベイが注目されています。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックを実施することが義務化されていますので、 組織サーベイとして活用することで、メンタルヘルス対策や働きやすい職場づくりのための良い機会になるでしょう。
組織サーベイのメリット・デメリットとは?
組織サーベイを実施することで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか?デメリットも併せて解説していきます。
組織サーベイのメリット
組織サーベイのメリットを3つに分けて紹介します。
1つ目は、組織の目的達成にあたり、現状を可視化できることです。定量的なデータをもとに数値化できるため、施策を考える際もデータに基づいて考えることができます。ほかの関係者に説明する際も、データをもとに説明できるため説得力が生まれるでしょう。
2つ目は、組織全体の改善だけでなく、各労働者への対応も容易になることです。データをもとに組織の問題点の抽出と改善ができるのはもちろんですが、日頃見えにくい労働者のニーズも把握でき、課題を解決するための対応がしやすくなります。
3つ目は、組織の生産性向上や離職率低下につなげられることです。組織のマネジメント状態が可視化されるため、調査結果を組織改善に活かすことができれば、労働者のパフォーマンス向上や、離職・休職の防止が期待できるでしょう。
組織サーベイのデメリット
組織サーベイにはたくさんのメリットがありますが、デメリットもあります。実施者は現状分析や設問設定、回答の分析などに時間を割かなくてはならず、労働者も通常業務の合い間を縫って回答しなければなりません。そのため、組織サーベイの目的が明確でなければ、労働者から不満が出る、回答率が低下するといったデメリットがでてきます。
組織サーベイを行なう手順について
組織サーベイを自社で実施するにあたり、具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか?大きく5つの手順に分けて紹介していきます。
組織の現状を分析する
組織サーベイを実施する前に、まずは自社の問題点は何かを調べ、仮説を立てましょう。経営層や人事部だけでなく、できれば現場の担当者も交えて意見を出し合うことで、より多角的に問題点を把握することができるでしょう。過去に社内アンケートなどを実施していれば、その結果も参考にすると良いかもしれません。
例えば、早期離職者の増加が問題で、職場でのコミュニケーションや教育方法に原因があるのではないか、というように仮説を立てます。
調査の対象と項目を設定する
問題点と仮説をもとに、対象者と調査項目を考えていきます。例えば、問題点を若年層の早期離職と考え、職場でのコミュニケーションが原因ではないかと仮説を立てているのであれば、対象を若年層の労働者とし、コミュニケーションに関する設問を入れ込むのがよいでしょう。
ただし、設問が多すぎると回答する労働者に負担がかかり、回答率が低下してしまいます。設問はある程度絞り、負担を最小限にしましょう。
調査方法を選定する
次は実施時期や実施頻度、調査方法を決めましょう。特に、実施時期が繁忙期にあたると回答率が低下する恐れがあるので、いつ行なうかは慎重に決めましょう。
調査方法については、「オープンアンケート」と「クローズドアンケート」の2つがあります。オープンアンケートは無記名による調査のことです。個人が特定されないので回答への心理的ハードルが下がり、正直な回答が得られやすいといわれています。ただし、部署別や年代別などの属性項目に限定した分析であり、調査後にそのほかの分け方で分析ができない点に注意しましょう。属性の誤入力や、個人の特定がされないために信憑性に欠けるといったことも考慮する必要があります。クローズドアンケートは記名による調査のことであり、回答者の所属部署や年代などがわかるので、より詳細な分析が可能です。
目的や調査内容、施策実施まで考慮しながら、最適な方法を選択しましょう。
組織サーベイの実施と分析をする
いよいよ組織サーベイを実施します。回答率を上げるためにも、対象者には事前に調査目的や回答結果の取り扱いなどをしっかり説明し、理解を得るようにしましょう。
また、回答率が低いと組織の状態を反映しているとはいえないため、調査途中で回答率を確認し、低ければ再度協力を呼びかけ、実施期間を延長するなど状況に応じて工夫しましょう。
改善策を実施する
得られた回答をもとに組織の問題点を抽出し、効果的な改善策を検討しましょう。あらかじめ、施策の効果をどのように評価するのかも決めておくのがポイントです。
その後、問題点に対する施策を実施し、定期的に評価します。調査から施策の実施までが組織サーベイに含まれていますので、しっかりと施策実施までつなげましょう。
組織サーベイ導入事例
ここでは、組織サーベイを実際に導入している組織を紹介します。ぜひ導入する際の参考にしてください。
デジタル庁
2021年9月に約600名で立ち上げられたデジタル庁は、さまざまな省庁からの出向者や自治体職員に加え、立ち上げまでの8ヵ月で130名もの新規採用をするなど、急激なスピードで組織をつくりあげていきました。
このような状況で、データに基づいた継続的な組織改善が必要という判断から、立ち上げから3ヵ月で組織サーベイの実施に踏み切ります。大臣・副大臣・政務官を含む幹部が、サーベイ結果から明らかになった課題の改善に組織一丸となって取り組むことを意思決定し、改革のためのプロジェクトを立ち上げました。
半年後に2回目の組織サーベイを実施したところ、職員満足度に関するすべての項目が前回よりも改善するとともに、ベンチマークとしている国内民間組織の平均値を上回る項目も出てきました。一方で、「他チームと協働する仕組み」や「行政人材を中心とする十分な人材確保」といった次に取り組むべき課題も明らかとなり、組織の課題把握に役立っています。
参考:多様な人材が一枚岩となって前進する「組織カルチャー」を創る|デジタル庁
参考:デジタル庁が直面してきた組織課題・改革。発足10ヶ月の歩み|デジタル庁
まとめ
組織サーベイは、組織の問題点を把握し、改善へとつなげることができる良い手段です。本記事で紹介した5つの手順を意識しながら、ぜひ自社に取り入れてみてはいかがでしょうか。変化が早い現代だからこそ、組織サーベイをうまく活用して労働者のニーズや職場環境などの現状を把握し、早期に対策していきましょう。
当社のリモート産業保健では「ストレスチェックサービス」を提供しています。ストレスチェックによって労働者のストレス状況を把握できれば、職場環境の改善に活かすことができます。組織改善のために力を入れたいと考えている企業担当者の方は、ぜひご検討ください。