産業医と産業看護職2名体制/長時間労働者の面談対応から不調の再発予防までケア
日本における長時間労働の現状
近年は、働き方改革やテレワーク、在宅勤務などの増加により、我が国の長時間労働は緩やかに減少しています。しかし、日本における長時間労働の原因や労働環境の問題点は依然として残っており、長時間労働を強いられている人はまだまだいるのが現状です。
長時間労働者の割合
厚生労働省が発表した「令和3年版過労死等防止対策白書」で、「諸外国における「週労働時間が49時間以上の者」の割合(令和2年)」が紹介されています。そのデータによると、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国のうち、週の労働時間が49時間以上の者の割合が1番多いのは韓国の19.5%で、日本は第2位の15.0%となっています。第3位はアメリカの14.2%、割合が最も低いのはドイツの5.9%です。
男女別にみると、男性の1位は韓国の24.1%、日本は第2位の21.5%でした。また、女性の第1位も韓国で13.5%、第2位はアメリカの9.5%、日本は第3位の6.9%となりました。
男女別でも割合が1番少ないのはドイツで、男性が8.9%、女性はわずか2.6%でした。日本は韓国に次いで週の労働時間が49時間以上の者の割合が多く、主要な諸外国と比較しても、日本の労働時間が長いことがわかります。
長時間労働の基準
長時間労働には、明確な定義や基準が存在しません。
「36(サブロク)協定(時間外・休日労働に関する協定届)」を締結すれば、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させることは可能ですが、時間外労働は月45時間以内、年360時間以内に収める必要があります。
以前は、36協定の「特別条項」を締結することで、特別の事情がある場合に限り、基準以上の労働が可能となっていました。しかし、2019年に「働き方改革関連法」が施行されたことにより、残業時間に上限が設けられたのです。時間外労働の上限規制は以下のとおりで、上限を超えた場合は、大企業・中小企業を問わず罰則が科せられます。
- 年720時間以内
- 2~6ヵ月平均80時間以内(休日労働含む)
- 月100時間未満(休日労働含む)
- 月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで
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長時間労働を続けることによって、具体的にはどのような悪影響やリスクが発生するのでしょうか。
心身の不調を招く
長時間労働を続けていると、十分な休息時間や睡眠時間を確保できず、疲労が蓄積されて心身の健康を害するおそれがあります。脳疾患や心臓病など、重大な病気を引き起こすリスクも高まるため、注意が必要です。
また、長時間労働は精神的な負担も大きいため、うつ病などの精神障害を招き、過労死や自殺といった最悪のケースにつながることもあります。
生産性が低下する
長時間労働をすれば、それだけたくさんの仕事をこなせると思われがちですが、必ずしもそうではありません。一般的に労働者は、適切な労働時間の範囲内において生産性を発揮する、といわれています。つまり、労働時間があまりに長くなると、生産性の低下は避けられないということです。
日本では、長時間働くことを「美徳」ととらえる企業も未だ少なくありません。そのような環境下では、仕事がなくても帰りづらいという状態になり、結果的に生産性は大きく低下するでしょう。
プライベートがおろそかになる
長時間労働が続けば必然的に仕事中心の生活になり、家族や友人と過ごす時間や趣味を楽しむ時間がなくなります。プライベートの時間を奪われることで、日常生活の中で充実感や充足感を感じるシーンも少なくなるでしょう。
そのような状態が続くと徐々に精神的に追い詰められてしまい、結果としてメンタルヘルス不調を訴える労働者が増える、といった事態につながります。
日本では長時間労働が当たり前?労働時間が長くなるおもな原因
以上のような悪影響やリスクがあるにもかかわらず、なぜ労働時間が長くなってしまうのでしょうか。おもな原因について説明します。
人員がそもそも足りていない
日本では、仕事の量に対して人員が足りていない企業が多いため、労働者1人あたりの仕事量が増え、仕事が終わらず長時間労働を強いられているケースがあります。労働人口の減少により、新しい人材を採用しようとしてもなかなか確保が難しいことが原因です。
また、人件費の上昇により人員を増やしたくても増やせず、ギリギリの人数で回しているという企業もあるでしょう。
「残業が当たり前」という風潮がある
前述の通り、昔からの習慣が根強く残り、残業する必要がなくても「上司が残っているから帰りづらい」「全員の仕事が終わるまで帰れない」「遅くまで残業することで頑張っていると評価される」など、残業が当たり前という風潮がある企業は少なくありません。
このような風潮がある企業は、社内全体の意識改革が必要です。
マネジメントが不十分である
管理職のマネジメント能力の欠如や、意識の低さにより、長時間労働を強いられるケースもあります。このような環境下では、上司が部下の労働時間を把握しておらず、特定の人にばかり仕事が集中する、といったことも起こります。
また、管理職やリーダーに計画性がないと、急な指示や無茶なプランを出すことになり、予定外の残業を発生させることもあるでしょう。
余分な仕事が多すぎる
従来のやり方にこだわりすぎると、かえって非効率な働き方になる場合があります。したがって、時代の流れに合わせて、適宜業務の見直しを行ないましょう。
具体的には、書類への押印プロセスを簡素化したり、メールやビジネスチャットを活用したりするなどして工夫を重ねることで、業務の効率化・労働時間短縮を実現できます。
長時間労働が心身に悪影響を与える前に!労働時間を削減する3つの制度
前述したように、長時間労働が心身に与える悪影響は大きいため、企業には労働時間を削減する取り組みが求められます。そこで最後に、労働時間を削減するために検討したい3つの制度について紹介します。
ノー残業デー
「毎週水曜日」「毎月第3木曜日」など曜日を定めて、従業員を一斉に帰宅させる「ノー残業デー」を取り入れる会社も近年増えてきています。ただし、仕事の量や進捗具合はそれぞれ異なるため、労働者が個人で自分のノー残業デーを決められるようにするのが理想的です。柔軟にノー残業デーを設定できれば、仕事を調整しやすくなり、周りに気兼ねなく退社できるでしょう。
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、労働者がルールの範囲内で自分の始業時間や終業時間を自由に決めることができる制度のことです。自身の生活スタイルに合わせて柔軟な働き方が選択可能になるため、最適なワークライフバランスが実現でき、モチベーションアップやストレスの軽減にもつながります。
業務ローテーション
特定の労働者に仕事が集中し、個人の負担が増えることがないよう、業務をローテーション化するのも効果的です。ローテーション化することで、1つの業務を複数の労働者で担当することができ、互いにサポートをしやすくなるため、長時間労働の削減が期待できます。
さらに、労働者同士のコミュニケーションも活発化し、チームワークの向上、業務の効率化にもつながるでしょう。
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日本における長時間労働の現状は、以前に比べると大きく改善されつつあります。しかし、未だに長時間労働を美徳ととらえ、常態化したままの会社もあるでしょう。
労働者の心身の健康を守り、会社の生産性を上げるためにも、事業者は実態を正しく把握し、長時間労働を解消するための制度の導入を検討することが必要です。
長時間労働の解消や、長時間労働に対するメンタルヘルス対策には、産業医をはじめとする産業保健活動の専門家の助力が欠かせません。産業医や産業保健に関する情報が必要な方は、リモート産業保健の企業様向けガイドブックや、お問合せフォームをご活用ください。
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