- 「安全衛生委員会とは?」
- 「安全委員会と衛生委員会の違いは?」
- 「安全衛生委員会に産業医の参加は必要?」
上記のような疑問はありませんか?
労働者が健康的かつ安全に働ける職場を実現するには、企業全体でリスクアセスメントを徹底することが重要です。そのリスクアセスメントを行なううえで重要な話し合いの場となるのが、安全衛生委員会です。
本記事では、労働者の健康と安全を守る安全衛生委員会に関する基礎知識を、まとめて紹介します。
産業医選任やオンライン・訪問面談、職場巡視、
衛生委員会の立ち上げ・運営など産業医と産業看護職2名体制で支援
安全衛生委員会とは?産業医に出席義務はある?
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生委員会を設置し、開催する義務があります。また、林業、鉱業、建設業など特定の事業場では衛生委員会に加え、安全委員会の設置も義務です。
それでは、安全衛生委員会とはどのようなもので、産業医に出席義務はあるのでしょうか。
安全衛生委員会とは?
安全衛生委員会とは、安全委員会と衛生委員会を統合したもので、安全衛生に関する労働者の意見を聞くために設置される委員会です。
安全委員会と衛生委員会、双方の設置が義務付けられている事業場はそれぞれを個別に設置する代わりに、統合して安全衛生委員会を設置することが認められています。
なお、安全衛生委員会では、医学の専門家としての意見や助言を得るために、事業場の産業医を出席させることが望ましいとされています。
安全衛生委員会の開催頻度
安全衛生委員会は、労働安全衛生規則第23条により、毎月1回以上開催する必要があります。
安全衛生委員会の開催日は、年間予定としてスケジュールに組み込んでおくとよいでしょう。議題は、直近の問題や季節に合わせたテーマから選びます。
安全衛生委員会では必ず議事録をとり、委員会で出た意見やそれを踏まえた措置の内容、委員会内における重要な内容などを記載し、3年間保管しなければなりません。
議事録は書面やデータで保管します。書面のみでは誤って破棄してしまう可能性があるため、すぐに出力できるようにデータも残しておくと安心です。
安全衛生委員会における産業医の役割
産業医は、安全衛生委員会の構成メンバーとして出席し、事業場に対して意見を述べるのが役割です。
産業医は基本的に、毎回安全衛生委員会に出席することが求められます。そして、専門家の立場から意見を出しますが、委員会の進行役にはなりません。産業医が欠席した場合は議事録を提供し、内容を共有できるようにしましょう。
もし産業医が安全衛生委員会に出席しているが専門家としての助言がない場合、下記の産業医の役割について問題がないか、労働者の安全や健康を守るために見直しを図るとよいでしょう。
| 安全衛生委員会 | 構成メンバーとして参加し、調査審議の内容や安全衛生上の課題・必要な措置などについて意見を出す |
| 職場巡視 | 要件を満たした場合、2ヵ月に1回の巡視(満たさない場合は1ヵ月に1回)が義務付けられており、職場の作業環境や作業内容、労働者の健康状態などを把握し、改善のための意見や指導を行なう |
| 健康診断の結果の確認と意見 | 健康診断の結果を個別に確認し、就業継続が可能か、健康上の問題がないかなどの意見を出す |
| 治療と仕事の両立支援 | 治療をしながら就業する労働者の就業の可否や適正な配慮の必要性についてアドバイスをする |
| ストレスチェックの実施者 | ストレスチェックの計画・実施・評価に携わり、ストレスチェックの中心的役割を担う |
| 長時間労働者・高ストレス者への対応 | 面談などを通して、労働者の健康状態や就業環境、労働条件などを確認し、本人および企業へ評価・必要な指導を行なう |
| 休職・復職相談 | 労働者の健康状態や就業環境、労働条件、企業側の必要な対応などを確認する。特に復職面談では「就業の可否」や「復職時の制限や配慮の確認」を行ない、本人や企業へ助言や意見をする |
| 各種届出の確認 | 労働基準監督署等への各種届出の確認や点検を行なう |
| 行政への対応 | 行政の指導や勧告への対処についての指導や助言を行なう |
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安全衛生委員会に産業医が出席しないとどうなる?
産業医は、労働安全衛生法第18条第2項で安全衛生委員会の構成メンバーの一人として位置付けられており、事業者に対して意見を述べる役割を果たします。基本的に出席することが求められますが、あくまで「任意」の扱いであるため、欠席しただけでただちに法令違反と判断されるわけではありません。
一方で、安全衛生委員会は事業場の安全対策や労働衛生に関する課題を話し合う場であり、医学的専門性を持つ産業医の視点は本来欠かせないものです。
産業医が参加しない状態が続くと、健康リスクの評価や改善策の検討が十分に行なえず、委員会としての議論が浅くなってしまう可能性があります。さらに、「産業医は選任されているが、実際には関与していない」と受け取られ、形式的な選任(名義貸し状態)であるとみなされるリスクも生じます。
こうした状況が積み重なると、企業の安全衛生管理への信頼が揺らぎ、結果としてコンプライアンス面で問題視される可能性も否定できません。
このような点を踏まえると、現場の実態を把握し助言するために、産業医が委員会へ積極的に参加することが望まれるでしょう。
安全委員会とは?基本情報を紹介
特定の事業場に設置が義務付けられている安全委員会について、基本情報を解説します。
安全委員会の設置義務
労働者が常時50人以上かつ、労働安全衛生法施行令第8条、第2条第1項および第2項で定められた業種の事業場には、安全委員会の設置義務があります。
指定の業種は、以下のとおりです。
- 製造業の一部(鉄鋼業、化学工業、木材・木製品製造業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、鉱業、建設業、林業、自動車整備業、機械修理業、清掃業
- 1を除く製造業および運送業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、通信業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等小売業、各種商品小売業、燃料小売業、ゴルフ場業、旅館業
出典:労働安全衛生法施行令第8条、第2条第1項および第2項|e-Gov法令検索
安全委員会の構成メンバー
安全委員会の構成メンバーは、以下のとおりです。
- 総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者以外で当該事業場において事業の実施を総括管理する者、もしくはそれに準ずる者のなかで事業者が指名した者(1人)
- 事業者が指名した安全管理者
- 当該事業場の労働者で、事業者が指名した安全に関し経験を有する者
総括安全衛生管理者とは、安全管理者や衛生管理者を指揮し、労働者の安全と健康を守る措置の統括管理を行なう者です。一定以上の規模かつ指定された業種の事業場は、総括安全衛生管理者を選任するよう定められています。
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安全委員会の調査審議事項
安全委員会で調査・審議すべきおもな内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 労働者の危険を防止するための基本対策に関すること
- 労働災害の原因および再発防止対策のうち、安全にかかわるものに関すること
- その他、労働者の危険の防止に関する重要事項
なお、3にある「重要事項」は、労働安全衛生規則第21条に主要付議事項として示されています。主要付議事項は以下のとおりです。
- 安全に関する規程の作成
- 危険性や有害性などの調査および結果に基づいて講ずる措置で、安全にかかわるもの
- 安全衛生に関する計画(安全にかかわる部分のみ)の作成、実施、評価、改善に関すること
- 安全教育の実施における計画の作成
- 官公庁より文書で命令、指示、勧告、指導を受けた事項で、労働者の危険の防止に関すること
出典:労働安全衛生法第17条
衛生委員会とは?基本情報を紹介
一定規模以上の事業場で設置が義務付けられている衛生委員会について、基本情報を解説します。
衛生委員会の設置義務
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生委員会の設置義務があります。安全委員会とは異なり、すべての業種が対象です。
衛生委員会の構成メンバー
衛生委員会の構成メンバーは、以下のとおりです。
- 総括安全衛生管理者、または総括安全衛生管理者以外で当該事業場において事業の実施を総括管理する者、もしくはこれに準ずる者のなかで事業者が指名した者(1人)
- 事業者が指名した衛生管理者
- 事業者が指名した産業医
- 当該事業場の労働者で、事業者が指名した衛生に関し経験を有する者
安全委員会との違いは、産業医が構成メンバーに追加されている点です。産業医はスケジュールの都合上、衛生委員会への参加が難しいケースも少なくありませんが、欠席が常態化しないよう注意しましょう。
衛生委員会の調査審議事項
衛生委員会で話し合うべき内容は、以下のとおりです。
2. 労働者の健康保持・増進を図る基本対策に関すること
3. 労働災害の原因および再発を防止する対策のうち、衛生に係るものに関すること
4. その他、労働者の健康障害防止および健康保持・増進に関する重要事項
出典:労働安全衛生法第18条
4の重要事項は、労働安全衛生規則第22条に主要付議事項として示されています。主要付議事項は以下のとおりです。
- 衛生に関する規程の作成
- 危険性または有害性などの調査・結果に基づいて講ずる措置のなかで、衛生にかかわるもの
- 安全衛生に関する計画(衛生にかかわる部分のみ)の作成、実施、評価、改善に関すること
- 衛生教育実施における計画の作成
- 新たな化学物質に対する有害性の調査および結果に基づく対策の樹立
- 作業環境測定の結果および結果の評価に対する対策の樹立
- 健康診断および医師の診断、診察、処置の結果に基づく対策の樹立
- 労働者の健康保持・増進を図るため、必要な措置に対する実施計画の作成
- 労働者の長時間労働による健康障害を防ぐため、必要な対策の樹立
- 労働者のメンタルヘルスを保持増進するため、必要な対策の樹立
- 労働者がばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること
※令和6年4月1日から上記項目に「該当する労働者に対する医師または歯科医師による健康診断の実施に関すること」が追加される。 - 官公庁により文書で命令、指示、勧告、指導を受けた事項のなかで、労働者の健康障害防止に関すること
出典:労働安全衛生規則第22条
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衛生委員会を立ち上げる方法
衛生委員会を立ち上げる際の具体的な手順は以下のとおりです。
- 衛生委員会を設置する目的を理解する
衛生委員会は、労働災害防止のために労使が一体となって取り組むことを目的として、常時50人以上の労働者を使用する事業場では設置が義務付けられています。違反した場合には罰則もあるため、設置する際は法的要件を十分に理解することが重要です。 - 規程やルールを定める
衛生委員会の開催頻度や委員の任期、議事録の管理方法などを定めます。衛生委員会に関する基本方針や手続き、欠員が出た場合の要件などについても明記しておくとよいでしょう。なお、労働安全衛生規則の第23条により、委員会は毎月1回以上の開催が必要であり、議事録は3年間の保管が義務付けられています。 - 参加メンバーを選出する
労働安全衛生法の第18条第2項で定められた構成メンバーを選出します。安全衛生委員会に必要なメンバーは以下のとおりです。
委員会の構成員の人数については、法令上の明確な規定はありません。事業の規模や作業の実態に応じて、適切な人数を柔軟に設定することが可能です。・議長(総括安全衛生管理者など)
・衛生管理者
・産業医
・労働者代表(各部署からバランスよく選出) - 年間計画を立てる
職場の課題や労働者の健康管理のニーズを分析し、年間計画を策定します。この計画には、健康診断やストレスチェックなどの定期的な議題のほか、熱中症やインフルエンザなどの季節に応じたテーマなども含めます。過去の労災事例やヒヤリハット報告を参考に、再発防止策の検討も盛り込むと実効性が高まるでしょう。
ポイントは、衛生委員会を形式上の会議ではなく、実効性のある取り組みにすることです。実際の労働環境について議論し、産業医の助言や労働者の意見を積極的に取り入れながら継続的に対策を実施することで、その効果を高めることができるでしょう。
安全衛生委員会を設置しなかった場合の罰則は?
安全衛生委員会の設置は、労働安全衛生法で義務付けられています。安全衛生委員会の設置が必要な事業場で設置をしなかった場合、罰則として50万円以下の罰金が科せられます。(労働安全衛生法120条)
また、安全衛生委員会を設置しているにもかかわらず、月1回の開催をしていないなど、適切な運用ができていない場合にも、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があるため、十分に注意しましょう。
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安全衛生委員会における注意点
ここでは、安全委員会と衛生委員会を統合した安全衛生委員会について、押さえておきたいポイントを6つに分けて解説します。
産業医との連携が大切
安全衛生委員会には産業医が構成メンバーとして出席することが可能であることは前述しました。
産業医が出席した場合、産業医に任せきりにしてほかの人が意見をいわなかったり、逆に産業医がまったく意見を出さなかったりする事態は避けましょう。
安全衛生委員会の進行や最終決定は、あくまでも事業場側主導で行なう必要があります。
発言者が偏らないようにする
安全衛生委員会で意見を述べる人が毎回同じというのも、良いことではありません。同じ人ばかりが発言していると、活発に意見や情報が交換できず、一方的な情報共有になってしまいます。
事業場側と労働者側の両方が、それぞれ意見を出して話し合うことが大切です。各々の立場で意見を述べ、労働者の安全と健康のために建設的な場となるように心がけましょう。
内容のマンネリ化に注意
安全衛生委員会は、毎月1回以上の実施が必要であるため、毎月テーマを考えなければなりません。回を重ねるごとに話すべきテーマがなくなってきて、内容がマンネリ化してしまうケースも多いでしょう。
特に花粉症や熱中症、インフルエンザなどの季節に関する内容は一般的なテーマである分、毎年取り上げるとマンネリ化につながります。毎年同じ内容では、議論の幅が広がりません。その時々の時事ネタを適宜取り入れ、マンネリ化を防ぐ工夫が必要です。
テーマがマンネリ化する原因は、現場の労働者の声をくみ取れていないケースが多いといわれています。今、まさに現場で起きていることや労働者が困っていることを議題にすると、委員会の効果を最大化できるでしょう。テーマとして取り上げてほしい意見を、社内から募集するのもおすすめです。
また、構成員の目的意識・当事者意識がない、事業場の衛生環境の向上に消極的であるといった意識の問題で、委員会全体の士気が低下することもあります。そうなると、安全衛生委員会が単なる雑談の場で終わったり、開催すること自体が目的になったりして、本来の役目を果たせなくなるおそれがあります。
安全衛生委員会のマンネリ化を防ぎ、活性化させるには、風通しのいい組織づくりに加え、トップが率先して取り組むことが大切です。また、委員会で話し合って決めたことを、アクションプランを設定して速やかに行動に移すことも重要です。

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NGネタを知っておく
マンネリ化を防ぐ工夫は大切ですが、そのために何でもテーマに挙げて良いわけではありません。例えば、抽象的過ぎる内容や一部のメンバーしか理解できないような専門的な内容は避けましょう。
その他、特定の個人にフォーカスした話題を取り上げるのは、個人情報保護の観点から不適切です。また、現場をよく知らない人事や労務などの担当者が構成メンバーになると、実情とはかけ離れた机上の空論で終わってしまう場合もあります。
安全衛生委員会が有意義なものになるよう、各事業場の課題に合ったテーマを適切に選出することが大切です。
委員会開催後は話し合った内容を周知する
安全衛生委員会を開催したあとは、その都度話し合った内容を労働者に周知しなくてはなりません。例えば、話し合った内容を全員が見やすい場所に掲示する、社内報といった誰もが手に取れる形で備え付ける、書面を交付するなどの方法があります。
事業場ごとにスムーズに周知できる方法を考えておくとよいでしょう。
安全衛生委員会の議事録は3年間保管する
安全衛生委員会で作成した議事録は、3年間保管しなくてはなりません。産業医が欠席した場合は、議事録の内容をきちんと産業医に伝え、意見を聞く必要があります。
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安全衛生委員会はオンライン化も可能
コロナ禍の2020年8月27日に厚生労働省労働基準局長より書面で発表があり、安全衛生委員会は情報通信機器を用いての開催、すなわちオンラインでの開催も可能となりました。各事業場の状況に応じて、オンラインでの開催も検討しましょう。
ただし、オンラインで行なうためには、以下の開催要件を満たす必要があります。
安全委員会などの開催に用いる情報通信機器についての要件
イ :映像、音声などを常時安定的に送受信可能で、構成メンバー相互の意見交換を円滑に実施できること
ウ: 外部からの不正アクセスや取り扱う個人情報漏洩の防止措置が講じられていること
イ :情報通信機器を使用した安全委員会などは原則アによって開催するが、以下の(ア)~(エ)に掲げる事項に配慮し、事前に安全委員会などで定められている場合は、電子メールといった即時性のない手段を用いた開催も認められる
(ア) 構成メンバーに資料を送付後、意見の検討に必要な期間を十分設けること
(イ) 構成メンバーの質問や意見が遅滞なくメンバー間で共有され、円滑な意見交換を行なえること
(ウ) 意見表明がない構成メンバーに対し、資料の確認状況や意見提出を行なう意思の有無を確認すること
(エ)構成メンバー同士の意見を調整する作業が煩雑になるときは、同作業に必要な連絡を行なう担当者を事前に決定するといった対策を講じ、調査審議に支障がでないようにすること
なお、情報通信機器を活用してオンラインで安全衛生委員会を開催しても、重要な記録は書面で保存しておきましょう。データで作成・保存する場合は、速やかに写しが提出できるシステムを使用する必要があります。
出典:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について
産業医に安全衛生委員会へ出席してもらうためのポイント
産業医に出席してもらうためには、事前の計画と調整が重要です。ここでは、出席をスムーズにするための具体的な工夫として、4つのポイントを紹介します。
- 契約書に職務・訪問頻度などを明記する
- 年間の開催日の計画を立てる
- 職場巡視の日に開催する
- 開催時間のうち対応可能な時間帯のみ参加とする
契約書に職務・訪問頻度などを明記する
年間の開催日の計画を立てる
職場巡視の日に開催する
開催時間のうち対応可能な時間帯のみ参加とする
①契約書に職務・訪問頻度などを明記する
産業医に安全衛生委員会へ出席してもらうためには、契約段階で依頼する役割を明確にしておくことが大切です。契約書には、安全衛生委員会出席を含む職務内容や、委員会を含む訪問頻度を具体的に記載しておくと、お互いの認識をそろえやすくなります。
事前に産業医と業務範囲や対応方針を共有しておくことで、今後のトラブル防止やスムーズな委員会への参加につながります。
②年間の開催日の計画を立てる
安全衛生委員会を継続的に実施するには、あらかじめ年間スケジュールに組み込んでおくことが大切です。毎月の開催日を事前に設定しておくことで、産業医やほかの委員が予定を立てやすくなり、出席率の向上につながります。
開催の都度調整を行なうよりも、年初に全体の計画を共有しておくことで、会議の準備や資料作成もスムーズになります。下記のように、季節や時期に合わせて計画を立てることもおすすめです。
| 月 | 例 |
|---|---|
| 4月 | 健康診断について |
| 5月 | 高血圧について |
| 6月 | 不妊治療について |
| 7月 | 食中毒について |
| 8月 | 防災について |
| 9月 | 男女の更年期について |
| 10月 | 健康経営について |
| 11月 | 過労死等防止対策について |
| 12月 | ストレスとの付き合い方について |
| 1月 | 睡眠時無呼吸症候群について |
| 2月 | 腸活・菌活について |
| 3月 | がんについて |
このように年間計画を立てておくと、産業医もテーマを事前に把握でき、より実践的な助言がしやすくなります。
③職場巡視の日に開催する
産業医は、毎月1回(所定の条件を満たす場合は2ヵ月に1回)の職場巡視を行なうことが、労働安全衛生法により義務付けられています。この巡視のタイミングに合わせて安全衛生委員会を開催することで、産業医が参加しやすくなります。
また、巡視で確認した現場の状況を踏まえて意見交換できるため、より実践的な議論にもつながるでしょう。事前に産業医と巡視日・滞在時間を含めて日程をすり合わせ、双方向でコミュニケーションを取ることが重要です。
出典:労働安全衛生法|e-Gov法令検索
④開催時間のうち対応可能な時間帯のみ参加とする
産業医は複数の企業や医療機関で兼務していることが多く、限られた時間のなかで多くの業務を行なっています。そのため、安全衛生委員会のすべてに出席することが難しい場合もあります。
このようなときは、委員会の開催時間のうち、産業医が対応可能な時間帯のみ参加してもらう方法も有効です。会議の冒頭で医学的な助言をもらう、または重要議題の報告時に限定して出席を依頼するなど、柔軟に時間を調整することで、参加のハードルを下げることができます。
まとめ
安全衛生委員会とは、安全委員会と衛生委員会の両方の開催が必要な事業場において、2つを統合して実施する場合の委員会の名称です。開催頻度や構成メンバー、審議内容には法的な規定があるため、事前に確認しておくことが重要です。
委員会を効果的に運営するためには、産業医との連携が欠かせません。医学的な助言を得るためにも、産業医の積極的な参加が望まれます。
そのための工夫として、契約書に職務や訪問頻度を明記する、年間の開催計画を立てる、職場巡視と同日に開催する、参加可能な時間帯のみ出席を依頼する、といったポイントを押さえておくと、産業医も参加しやすくなるでしょう。
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安全衛生委員会に関するよくあるQ&A
Q.どうしても産業医が衛生委員会に参加できない場合は?
やむを得ず産業医が衛生委員会に出席できない場合でも、連携を途切れさせない工夫が重要です。まず、委員会終了後に議事録を産業医へ提出し、内容を確認してもらいましょう。
議事録に記載された課題や提案事項について、医学的な視点から意見やアドバイスをもらうことで、委員会の実効性を高めることができます。得られた助言は、必ず委員会の構成メンバーにも共有し、今後の改善や対策に反映させることが大切です。
このようなやり取りを継続することで、委員会への出席が難しい場合でも、産業医との連携を維持できます。
Q.安全衛生委員会の立ち上げに迷った場合は?
初めて安全衛生委員会を立ち上げる際は、開催要件や進め方など、わからないことが多いものです。そのような場合は、まず厚生労働省のホームページや、都道府県労働局・労働基準監督署に確認してみましょう。法令上の基準や手続き方法を正確に把握できます。
また、産業医紹介サービスを活用するのも有効です。委員会の立ち上げに対応していることが多く、産業医の選任から体制づくりまでサポートしてもらえます。自社だけで一から進めるよりも工数を大幅に削減でき、安心して安全衛生管理体制を整えることができます。
Q.安全衛生委員会での産業医の巡視頻度は?
労働安全衛生規則第15条では、産業医による職場巡視は、原則として「毎月1回」実施することが定められています。ただし、一定の条件を満たす場合には「2ヵ月に1回」に変更することも可能で、その条件は下記のとおりです。
- 産業医に対して毎月、衛生管理者の職場巡視結果など所定の情報が提供されていること
- 事業者がこの変更に同意していること
なお、2ヵ月に1回の巡視へ変更する場合は、安全衛生委員会で審議したうえで、「巡視の頻度」と「その頻度を適用する期間」を明確に決めておく必要があります。また一定期間ごとに、2ヵ月に1回の巡視頻度で問題ないかを、産業医を含めて確認することが望まれます。
出典:労働安全衛生規則|e-Gov法令検索
出典:産業医制度に係る見直しについて|厚生労働省
出典:労働安全衛生規則が一部改正されました!|厚生労働省 静岡労働局・各労働基準監督署
Q.従業員代表はどのような人がいいの?
従業員代表に特別な資格は必要ありませんが、安全や衛生に関する経験や知識を持つ労働者が望ましいとされています。例えば、過去に安全衛生に関する職務を担当したことがある人や、職場のリスクや作業環境をよく理解している人が適任です。
実際に現場で働き、従業員の意見や状況を把握できる立場の人を選ぶことで、委員会での議論がより実情に即したものになります。
Q.安全衛生委員会での会社側と従業員側のメンバーは同じ人でもいいの?
安全衛生委員会において、会社側(事業者側)と従業員側(労働者側)のメンバーを同じ人が兼任することはできません。兼任を認めてしまうと、「会社と従業員が対等な立場で意見を交わす」という安全衛生委員会の基本的な目的が果たせなくなるためです。
労働安全衛生法第17条および第18条でも、会社側と従業員側の委員は、それぞれの立場から選任することが明確に定められています。
出典:労働安全衛生法|e-Gov法令検索
Q.安全衛生委員会はどのような議題を挙げればいいの?
安全衛生委員会で審議すべき議題は、労働安全衛生規則第21条および第22条で定められています。おもな内容は、労働者の安全確保や心身の健康障害防止に関する対策などです。
これに加えて、季節や社会的トレンドを踏まえたテーマ(熱中症予防、感染症対策など)を取り上げるのも効果的です。毎回同じ内容になってしまう場合は、現場で実際に起きている課題や労働者の声を議題にすることで、より実践的で活発な委員会の運営につながります。
出典:労働安全衛生規則|e-Gov法令検索
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