認定産業医って何?他の産業医との違いを解説
まず、日本医師会では認定産業医について、以下のように定義しております。
日本医師会は、産業医の資質向上と地域保健活動の一環である産業医活動の推進を図るために、所定のカリキュラムに基づく産業医学基礎研修50単位以上を修了した医師、または、それと同等以上の研修を修了したと認められる医師に申請に基づき日本医師会認定産業医の称号を付与し、認定証を交付します。
引用:日本医師会認定産業医制度 | 公益社団法人 東京都医師会
つまり、「認定産業医」とは、決められた研修を受けて医師会から認定を受けた産業医ということになります。詳しい研修内容については後ほど解説します。
では、認定産業医と他の産業医との違いは何でしょうか。
結論から言いますと、産業医は更新が不要ですが、認定産業医は更新が必要という事です。
具体的には認定産業医は5年毎に更新しなければならず、5年間に20単位以上の所定の研修を受けなければなりません。
したがって、認定産業医と産業医の違いは、認定産業医は5年ごとに講習を受けて更新していて、その際の更新料として一万円を支払っている、という事です。
認定産業医になるにはどうすればいい?研修内容や必要単位をチェック!
申請の流れについてご説明します。まずは産業医学基礎研修を50単位取得します。この際、産業医学研修手帳が必要となりますので、所属している都道府県の医師会に申請をします。(医師会の会員ではない産業医は勤務地の都道府県の医師会)より取り寄せる必要があります。
次に、所属している都道府県の医師会に申請をします。(医師会の会員ではない産業医は勤務地の都道府県の医師会)産業医学基礎研修を50単位取得してから5年以内に申請しなければならないので注意が必要です。
その後、申請した都道府県の医師会より日本医師会へ申請され、日本医師会において審査・認定が行われて認定証が交付されます。具体的な申請方法は都道府県によって異なるので確認が必要です。
申請をしてから実際に認定証が届くまでには数か月かかることもあるようです。なので、期日には余裕をもって申請しましょう。
つぎに、具体的な研修内容について解説します。
基礎研修(総論、健康管理、メンタルヘルス対策、健康保持増進、作業環境管理、作業管理、有害業務管理、産業医活動の実際)、実習見学などの実地研修、地域の特性を考慮した実務的・やや専門的・総括的な後期研修などです。(表1)
筆記試験などは無く、産業医業務の実務経験や、産業医業務の知識の有無は問われません。また、基礎研修は前期・実地・後期の3つから構成されていますが、受講する順番はとくに決められていません。
認定産業医になるための研修内容
基礎研修(表1)
研修区分 | 内容 | 取得単位数 | |
---|---|---|---|
前期研修 | 総論 | 2単位 | 14単位 |
健康管理 | 2単位 | ||
メンタルヘルスケア対策 | 1単位 | ||
健康保持増進 | 1単位 | ||
作業環境管理 | 2単位 | ||
作業管理 | 2単位 | ||
有害業務管理 | 2単位 | ||
産業医活動の実態 | 2単位 | ||
実地研修 | 主に職場巡視などの実地研修、環境測定実習や映画を見るなどの実務的研修 | 10単位 | |
後期研修 | 地域の特性を考慮した実務的・やや専門的・総括的な後期研修 | 26単位 |
次に、認定産業医を更新するための研修内容について説明します。更新するために受ける研修を「生涯研修」と呼びます。生涯研修には、更新研修・実地研修・専門研修が含まれます。 それぞれ1単位以上、合計で20単位以上を取得しなければなりません。(表2参照)
更新の際には5年間に20単位以上の研修を受ける必要があります。但し、コロナ禍により、決められた期限内に必要な単位を集めるのが困難な状況もあるため、日本医師会が特例措置を発表しています。今後、新たな情報更新の可能性があるので、こまめにホームページをチェックしましょう。
引用:コロナ禍により有効期限内に更新必要単位が充足できなかった認定産業医の取扱いについて | 日本医師会
生涯研修の内容(20単位)
更新に必要な生涯研修(表2)
研修項目 | 研修内容 | 単位 |
---|---|---|
更新研修 | 労働衛生関係法規と関係通達の改正点などの研修 | 1単位以上 |
実地研修 | 主に職場巡視などの実地研修、作業環境測定実習などの実務的研修 | 1単位以上 |
専門研修 | 地域特性を考慮した実務的・専門的・総合的な研修 | 1単位以上 |
更新期限の3〜4か月前に更新手続きの案内が送付されてきますので、更新するつもりがある認定産業医の方は忘れず更新手続きをしましょう。そのため、住所などが変更になった際には忘れずに手続きをする必要があります。
ところで、なぜこんなにも研修を受ける必要があるのでしょうか。
なぜなら、産業医としての知識と能力の向上に努めなければならない、と安全衛生規則第14条7項に定められているからです。
企業の人事・労務担当の方必見!認定産業医を選任するメリットをご紹介
産業医が企業で働く際には、認定産業医がなくても働けますし、産業医の資格があれば十分なようです。しかし、産業保健に関連する法令の改正を産業医が知っておくことは、リスク回避する上で重要ともいえるでしょう。
では企業にとって認定産業医を選任するメリットはあるのでしょうか。
産業医と認定産業医の違いのところでも触れましたが、認定産業医は5年ごとに講習を受けて免許を更新していますので、その都度知識をアップデートしています。
最近では働き方改革などが注目されていますが、認定産業医は労働衛生関係法規と関係通達の改正点などの研修を受けていますので、そういった法令の変更にも柔軟に対応できるでしょう。
また、コロナの知識なども産業医としては必要ですので、よりその時代に合った産業保健活動が期待できる点です。
更に、認定産業医は更新料として一万円払っていますので、時間とコストをかけてその資格を更新していることになります。それだけ産業保健に対するモチベーションがあるとも考えられます。
ですので、企業の人事担当者が認定産業医を選任するメリットを理解しておくことも大切でしょう。
認定産業医を選任するにはどうしたら良い?
産業医であっても、認定産業医であっても選任方法に変わりはありません。
最後に、認定産業医を選任する際に紹介会社に相談するメリットについて述べたいと思います。
紹介会社には様々な産業医や認定産業医が登録しているため、自社の希望に合った認定産業医を紹介してもらえますし、選任後も産業活動をサポートしてくれたり相談に乗ってくれるなどの利点があります。
また、契約料や契約内容などについて、直接言いにくいことも紹介会社が間に入って調整してくれます。
ここまで認定産業医についてご紹介してきました。産業医の選任については、認定産業医という資格以外にも、産業医としての経験やコミュニケーション能力など自社の企業課題に対応できる産業医を選任することをお勧めします。
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