そもそも離職率の定義とは?
離職率とは、ある一定の期間内に離職した人の割合を示すもので、人材がどれくらい職場に定着しているかを表す指標です。
離職率について定める法律はありませんが、厚生労働省の雇用動向調査では「常用労働者数に対する離職者の割合」と定義しています。
離職率の平均値が知りたい場合には、厚生労働省が発表している「雇用動向調査結果の概況」が目安になります。性別や年齢、就業形態、産業別の離職率が掲載されているため、参考にするとよいでしょう。
離職率の計算方法
厚生労働省の雇用動向調査では、下記の方法で離職率を算出しています。
離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)×100(%)
なお、常用労働者数と離職者については、次のように定義されています。
常用労働者数
「期間を定めずに雇われている者」「1カ月以上の期間を定めて雇われている者」のいずれかに該当する労働者
離職者
常用労働者のうち、調査対象期間中に事業場を退職したり、解雇されたりした者をいい、他企業への出向者・出向復職者を含み、同一企業内の他事業場への転出者を除く
離職率低下に取り組むべき理由
企業が離職率の低下に取り組むメリットは、おもに3つあります。
採用や育成にかかるコストを削減できる
新たな人材の採用や育成には、多くの時間と手間がかかります。人材が定着して離職率が下がれば、採用にかかる人件費や求人広告費、採用後の研修費といった経済的負担を減らすことができるでしょう。
就労意欲が高まり生産性が向上する
離職率の低い企業の多くは、労働時間の短縮や有給休暇の取得促進など、従業員が働きやすい環境づくりに取り組んでいます。労働条件や労働環境の改善は従業員の就労意欲を高め、生産性の向上につながります。
企業のイメージアップにつながる
離職率が低い企業に対して、「労働環境が良く働きやすい」「企業経営が安定している」といったイメージを持つ方は多いでしょう。人材が定着しやすい職場を作ることは、企業のブランディングにつながり、新たな人材を呼び込みやすくなります。
少子高齢化や団塊の世代の一斉退職により働き手が不足するなか、離職率の低下に取り組むことは企業にとって重要な課題の一つです。
離職率低下の取り組みを支援する、人材確保等支援助成金とは?
厚生労働省では、魅力ある職場づくりによって離職率の低下に取り組む企業のために、「人材確保等支援助成金」を設けています。
ここでは9つの助成コースについて、おもな受給要件や受給額を紹介します。
離職率低下の助成金(1)雇用管理制度助成コース
(※令和4年4月1日以降は整備計画の新規受付を休止中、令和5年度も引き続き休止予定)
雇用管理に関わる制度を新しく導入することにより、離職率低下に取り組んだ事業主に対して、57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)が支給されます。
受給には、事業主(雇用管理制度助成コースにおいて短時間正社員制度を導入する場合は保育事業主)が、下記の措置を実施することが必要です。
(1)「諸手当等制度」「研修制度」など、5つの雇用管理制度の導入を内容とする雇用管理制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること
(2)雇用管理制度の導入・実施
(3)離職率の低下目標の達成
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」
離職率低下の助成金(2)介護福祉機器助成コース
新たな介護福祉機器の導入などを通じて、離職率の低下に取り組んだ介護事業主に支給されます。
対象となる介護福祉機器の範囲は、「移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む)」「装着型移乗介助機器」「体位変換支援機器」「特殊浴槽」です。
受給には、介護事業主が下記の措置を実施する必要があります。
(1)介護福祉機器の導入・運用計画を作成し、管轄の労働局長の認定を受けること
(2)(1)の導入を実施し、適切な運用を行なうこと
(3)(1)、(2)の実施の結果、導入・運用計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、導入・運用計画を提出する前1年間の離職率よりも、目標値以下に低下させること
(ただし、離職率は30%を上限とする)
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」
介護福祉機器の導入費用(利子を含む)、保守契約費、機器の使用を徹底させるための研修にかかった費用の合計額の20%(生産性要件を満たした場合は35%)が目標達成助成として支給されます。なお、150万円が上限です。
離職率低下の助成金(3)中小企業団体助成コース
事業主団体が、その構成員である中小企業者(構成中小企業者)に対して、人材の確保や職場定着を支援する事業を行なう場合に支給されます。
下記(1)〜(3)のすべての措置を実施した事業共同組合などが受給できます。
(1)雇用管理の改善に関わる改善計画を策定し、都道府県知事の認定を受けること
(2)構成中小企業者に対して、4つの事業から構成される1年間の「中小企業労働環境向上事業」の実施計画を策定し、労働局長の認定を受けること
(3)(2)によって認定された中小企業労働環境向上事業を実施すること
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」
受給額は、1年間の中小企業労働環境向上事業の実施に要した経費の2/3の額です。ただし、構成中小企業者の数によって上限額が定められています。
離職率低下の助成金(4)人事評価改善等助成コース
(※令和4年4月1日より整備計画の受付休止、令和5年度も引き続き休止予定)
人事評価制度の整備により、生産性の向上や賃金引き上げを行ない、離職率低下を図る事業主に支給される助成金です。
受給には、事業主が下記(1)〜(5)の措置を実施する必要があります。
(1)人事評価制度等整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること
(2)(1)の計画に基づき、制度を整備し、実際に人事評価制等対象労働者に実施すること
(3)人事評価制度等整備計画認定申請日の属する会計年度の前年度と、その3年後の会計年度を比較した生産性の伸び率が6%以上であること
(4)賃金の増加および増加した賃金を引き下げていないこと
(5)離職率の低下
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」
受給要件をすべて満たすことにより、目的達成助成として80万円を受給できます。
離職率低下の助成金(5)建設キャリアアップシステム等普及促進コース
指定要件を満たした建設事業主団体が、建設キャリアアップシステム等普及促進事業(CCUS等普及促進事業)に関わる、最大1年間の事業年間計画を作成・実施することで助成が受けられます。
事業の実施にあたっては、事業推進委員会の設置と事業推進員の選任が必要です。
中小建設事業主団体の場合は支給対象費用の2/3、中小建設事業主団体以外の場合は支給対象費用の1/2が助成されます。
離職率低下の助成金(6)若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
「事業主経費助成」「事業主団体経費助成」「推進活動経費助成」の3種類があり、助成対象や助成額、上限額はそれぞれ異なります。
事業主経費助成
指定要件を満たした建設事業主が、若年者や女性の労働者の入職・職場定着を図るための事業を実施した場合に支給されます。
助成額は、中小建設事業主の場合は支給対象経費の3/5(生産性要件を満たした場合は3/4)、中小建設事業主以外の場合は支給対象経費の9/20(生産性要件を満たした場合は3/5)で、支給上限額は200万円です。
なお、雇用管理に関して必要な知識を習得させる研修などを実施した場合には、対象労働者1人あたり8,550円/日(生産性要件を満たした場合は10,550円/日)が支給されます。
事業主団体経費助成
指定要件を満たした建設事業主団体が、若年者や女性の労働者の入職・定着を図るための事業を実施した場合に支給されます。
事業推進委員会の設置と事業推進員の選任を行なったうえで、国が指定した「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業」を最大1年間実施する必要があります。
助成額は、中小建設事業主団体の場合は支給対象費用の2/3、中小建設事業主団体以外の場合は支給対象費用の1/2です。なお、「全国団体」「都道府県団体」「地域団体」によって上限額が異なります。
推進活動経費助成
受給対象は、建設工事における作業について、広域的な職業訓練を実施する職業訓練法人です。
建設工事に関わる職業訓練についての広報や啓発、調査など、職業訓練を振興するために必要な活動を実施することで、支給対象費用の2/3が助成されます。なお、受入規模ごとに上限額が異なります。
離職率低下の助成金(7)作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
「作業員宿舎等経費助成」「女性専用作業員施設設置経費助成」「訓練施設等設置経費助成」の3種類があり、助成対象や助成額、上限額はそれぞれ異なります。
作業員宿舎等経費助成
指定要件を満たす中小建設事業主が、被災三県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する工事現場で、作業員宿舎や賃貸住宅、作業員施設の賃借を行なう場合に助成されます。助成額は支給対象費用の2/3で、上限額は一事業年度あたり200万円(賃貸住宅については3万円/月)です。
女性専用作業員施設設置経費助成
指定要件を満たす中小建設事業主が、自ら施工管理する建設工事現場に、女性専用の作業員施設を賃借により整備する場合に受給できます。
助成額は支給対象費用の3/5(生産性要件を満たす場合は3/4)で、上限額一事業年度あたり60万円です。
訓練施設等設置経費助成
受給対象は、建設工事における作業について、広域的に職業訓練を実施する職業訓練法人です。
認定訓練の実施に必要な、職業訓練施設や職業訓練設備の設置・整備などを行なうと、支給対象費用の1/2が助成されます。
離職率低下の助成金(8)外国人労働者就労環境整備助成コース
外国人労働者に配慮した就労環境の整備を行ない、職場定着に取り組む事業主に対して支給されます。
受給には、下記(1)〜(3)の要件を満たす必要があります。
(1)外国人労働者を雇用している事業主であること
(2)認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
(3)就労支援環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
生産性要件を満たしていない場合は支給対象経費の1/2(上限額は57万円)、生産性要件を満たす場合は支給対象経費の2/3(上限額は72万円)が支給されます。
離職率低下の助成金(9)テレワークコース
良質なテレワーク制度の導入や実施により、人材確保や雇用管理改善などについて効果を上げた中小企業事業主に支給される助成金です。
「機器等導入助成」と「目標達成助成」の2種類があり、それぞれの受給要件や受給額は下記のように規定されています。
機器導入助成
テレワーク実施計画を作成し、テレワーク実施対象労働者全員が評価期間内に1回以上テレワークを実施するなどの要件を満たすことが必要です。
1企業あたり、支給対象となる経費の30%が支給されます。
目標達成助成
評価時離職率が、計画時離職率以下であることなどの要件を満たすと受給でき、1企業あたり支給対象となる経費の20%(生産要件を満たす場合は35%)が支給されます。
人材確保等支援助成金には、新規受付を休止しているコースや、一部廃止されているコースがあります。最新の情報については、厚生労働省の案内を必ずチェックしましょう。
まとめ
離職率を低下させるための取り組みは、企業と労働者の双方にさまざまなメリットをもたらします。
国からの助成金を上手に活用しながら、従業員が長く働き続けられる環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
「健康経営に力を入れて従業員の離職を防ぎたい」という場合には、ぜひリモート産業保健にご相談ください。
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