派遣社員が在籍する職場では、ストレスチェックの実施義務を派遣元・派遣先のどちらが負うのか、判断に迷う人事労務担当者が少なくありません。結論として、派遣社員個人へのストレスチェックの実施義務は派遣元企業にあります。あわせて、近年は派遣社員のメンタル不調に気づいた際、派遣先がどこまで踏み込んで対応してよいか分からないという相談も増えています。本記事では、対象者の要件や派遣元・派遣先の役割分担、実施後の注意点に加え、メンタル不調時の連携方法までを整理して解説します。
この記事でわかることは以下のとおりです。
-
この記事でわかること
-
派遣社員のストレスチェックは誰が実施すべきか -
派遣元・派遣先それぞれが担う役割と注意点 -
派遣社員がメンタル不調のサインを見せたときの連携方法 -
産業医の派遣サービスとの違い
職場におけるさまざまなストレス要因が増加する中、ストレスチェックを活用することで、労働者のメンタルヘルス不調にいち早く対応することが重要です。
ストレスチェックの実施を検討中のご担当者様に向けて、産業保健師が監修した「はじめてのストレスチェックガイドブック」をご提供しますので、ぜひご活用ください。
ストレスチェックの対象者には、派遣社員も含まれる?
派遣社員のストレスチェックとは、派遣元企業が派遣社員に対して実施する心理的負担を把握するための検査です。労働安全衛生法施行令第5条に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場には実施義務が課されており、ここでいう労働者には正社員や契約社員だけでなく派遣社員も含まれます。ただし、派遣先企業に直接の実施義務はありません。以下では、対象となる「常時使用する労働者」の要件と、派遣元・派遣先それぞれの役割を詳しく解説します。
ストレスチェックの「常時使用する労働者」の要件
「常時使用する労働者」に該当するかどうかは、雇用契約の期間や所定労働時間などの要件によって判断されます。派遣社員も要件を満たせば対象になるため、次の2つの要件を確認しておきましょう。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者を含む)であること
- その者の1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
詳細は、厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルで確認できます。
ストレスチェックは派遣元・派遣先のどちらが行なうべき?
派遣社員個人へのストレスチェックおよび面接指導は、労働安全衛生法に基づき派遣元企業が実施義務を負います。根拠となるのは、労働安全衛生法第66条の10です。
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
したがって、派遣社員個人のストレスチェックや面接指導の実施責任を負うのは派遣元企業です。一方、派遣先企業には、派遣社員が就業する職場環境や勤務状況などの情報を派遣元へ提供し、必要に応じて就業上の措置に協力することが求められます。

(図:ストレスチェックの役割分担 派遣元と派遣先の違い)
(編集部作成)
派遣社員がいる事業場でストレスチェックを実施する際の注意点
派遣社員のストレスチェックを実施する派遣元企業には、いくつかの注意点があります。また、派遣先企業がストレスチェックを実施する場合にも、派遣社員については自社の従業員とは異なる対応が必要になる場面があります。以下では、集団分析の進め方、不利益取扱いの禁止、面接指導後の対応について解説します。
ストレスチェック後の集団分析は、派遣社員を含めた「集団ごと」に分析する
ストレスチェックの実施後、個々の結果をもとに職場環境の改善を目的として集団ごとに集計・分析を行うことは、事業者の努力義務とされています。派遣社員の場合、派遣元企業が実施しても、派遣社員はそれぞれ別の派遣先に配属されているため、職場単位の分析にはなりません。
そのため、派遣社員を含めた集団分析は派遣先企業で実施することが望ましいとされています。ただし、これは労働安全衛生法上の努力義務ではなく、指針が示す望ましい措置である点に注意が必要です。
法令に基づく努力義務ではなく、指針による望ましい措置となります。
ストレスチェックに関連して、不利益な取り扱いを行なってはならない
派遣先企業に向けては、ストレスチェックに関連して派遣社員に不利益な取り扱いを行うことを禁止する事項が、厚生労働省の指針で示されています。具体的には、次の4つが挙げられます。
- 面接指導の結果に基づく就業上の措置について、派遣元企業から協力を要請されたことを理由に、当該派遣社員の変更を求めること
- 派遣元企業が本人の同意を得てストレスチェックの結果を提供した場合に、これを理由に当該派遣社員の変更を求めること
- 派遣元企業が本人の同意を得て面接指導の結果を提供した場合に、聴取した医師の意見や派遣社員の実情を考慮せず、当該派遣社員の変更を求めること
- 派遣先企業が集団ごとの集計・分析を目的に派遣社員にストレスチェックを実施した際、受検しないことを理由に当該派遣社員の変更を求めること
出典は、厚生労働省の労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(ストレスチェック指針より抜粋)です。
面接指導を受けた派遣社員に対しては、就業上の措置が必要
派遣先企業は、自社の従業員と同様に、ストレスチェックで高ストレス者と判定された派遣社員から申し出があった場合、医師による面接指導が実施されるよう協力する必要があります。ただし、面接指導の結果を踏まえて就業場所の変更や労働時間の短縮など、就業上の措置を講じる義務を負うのは、派遣元企業です。
派遣元企業が派遣先企業に協力を求める場合は、派遣社員本人の同意を得たうえで情報提供を要請する必要があります。集団分析・不利益取扱いの防止・就業上の措置と、注意すべき点は多岐にわたるため、派遣元・派遣先間の情報共有や体制づくりに工数がかかると感じる担当者も少なくありません。
人事必見!ストレス社会の今求められる「ストレスチェック」で若手社員からベテラン社員まで守る!
派遣先との連携にお悩みの方へ。ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルスを把握し、健康経営につなげるための重要なツールです。このセミナーでは、ストレスチェックの義務や必要性、効果的な利用方法、注意事項、現場でうまく活用できた事例などをご紹介します。
派遣社員がメンタル不調のサインを見せたとき、派遣元・派遣先はどう連携するか
ここまで解説してきたストレスチェック制度は、年に1回など定期的に実施するものです。しかし、派遣社員のメンタル不調は、ストレスチェックの実施タイミングを待たずに現れることもあります。派遣先の現場管理者は、雇用主でない自社がどこまで介入してよいか分からず、対応に迷うケースが少なくありません。ここでは、日常的な連携のポイントを整理します。

(図:不調のサインに気づいてからの連携フロー)
(編集部作成)
派遣先が気づいた変化は、産業医面談を待たずに派遣元へ共有する
派遣先の現場管理者が、遅刻・欠勤の増加や様子の変化など、派遣社員の不調のサインに気づいた場合は、高ストレス者判定や産業医面談の結果を待たずに、早めに派遣元企業へ情報を共有することが望ましいと考えられます。派遣社員の雇用主は派遣元企業であり、就業上の措置を判断・実施する主体も派遣元企業だからです。
ただし、健康情報を含む個人情報を取り扱うことになるため、本人の同意を得たうえで共有することが前提です。個々の症状の見立てや対応方針については、産業医への相談をおすすめします。ストレスチェックと産業医面談の関係については、産業医面談の仕組みを解説した記事もあわせてご覧ください。
【あわせて読みたい関連記事】
産業医とストレスチェックの役割とは?実施の流れと面接指導までわかりやすく解説
ストレスチェックの高ストレス者面談だけでなく、日常的な相談窓口を備えることが望ましい
ストレスチェックの高ストレス者面談は、年1回の実施タイミングでの気づきに限られます。日常的な変化に早期に対応するには、高ストレス者と判定されるのを待たずに相談できる窓口を備えておくことが望ましいといえます。
相談先は産業医による面接指導に限らず、産業看護職への相談も選択肢になります。管理監督者向けに、メンタルヘルスに関する基礎知識と対応のポイントをまとめた資料もあるため、社内研修などにあわせて活用を検討するとよいでしょう。
管理監督者、人事労務担当者必見!メンタルヘルスを職場で実践するための知識とヒントがつまった入門書としてご活用ください。
派遣社員のストレスチェックに関するよくあるQ&A
最後に、派遣社員のストレスチェックに関して、担当者からよく寄せられる疑問にお答えします。
派遣元の派遣社員が50人以上の場合、実施義務は発生する?
派遣元企業と雇用契約を結んでいる派遣社員が50人以上いる場合、派遣元企業にはストレスチェックを実施する義務が生じます。また、派遣先企業に正社員と派遣社員が在籍し、合計人数が50人以上になる場合は、派遣先企業にも正社員に対するストレスチェックの実施義務が生じます。この場合、派遣先企業に派遣社員へのストレスチェックの実施義務はありませんが、集団ごとの分析の観点からは、派遣社員も含めて実施することが望ましいとされています。
50人以上の事業場における実施義務の基本的な考え方は、こちらの記事でも解説しています。
派遣元の派遣社員が50人未満の場合、ストレスチェックの実施義務はない
常時50人以上の労働者を使用する事業場に該当するかどうかは、派遣元企業・派遣先企業それぞれの労働者数で判断します。派遣元企業と雇用契約を結んでいる派遣社員が50人未満であれば、派遣元企業に実施義務は生じません。
厚生労働省のストレスチェック制度に関するQ&Aでは、次のような例が示されています。派遣元企業に200人の派遣社員が在籍している場合、実際にどこへ何人派遣していても、派遣元企業には200人分の実施義務が生じます。一方、派遣先企業に60人の労働者(うち20人が派遣社員)が就業している場合、事業場の人数は派遣社員を含めてカウントするため、正社員が40人しかいなくても、派遣先企業には40人の正社員に対する実施義務が生じます。
対象者の考え方全般については、ストレスチェックの対象者に関する記事もあわせてご確認ください。
【あわせて読みたい関連記事】
ストレスチェックの対象者とは?役員・取締役も対象に含む範囲を徹底解説
ストレスチェック実施後の報告には、派遣社員の人数もカウントすべき?
ストレスチェックの実施後は、労働基準監督署への報告が必要です。報告様式(様式第6号の2)の「在籍労働者数」欄には、ストレスチェックの実施義務の対象となる常時使用する労働者数を記載しますが、この欄には、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満のパートタイム労働者や、派遣先における派遣労働者は含めません。
派遣元・派遣先の間で、ストレスチェックの結果の提供は可能?
本人の同意があれば、派遣先企業が実施したストレスチェックの結果を派遣元企業が入手して利用することも可能です。ただし、派遣社員に対するストレスチェックの実施義務は派遣元企業にあるため、派遣先企業の結果を利用する場合は、派遣元企業が派遣先企業へ実施を委託し、実施費用も派遣元企業が負担する必要があります。本人の同意を得て派遣先企業が実施した結果の写しなどを入手するだけでは、派遣元企業がストレスチェックを実施したものとはみなされません。
派遣社員のストレスチェック対応と、産業医を派遣してもらうサービスは何が違う?
本記事で解説してきたのは、派遣社員に対するストレスチェックの実施義務や役割分担についてです。一方、「自社に産業医がいない」「産業医を交代したい」といった、産業医そのものを新たに迎え入れたいというニーズは、ストレスチェック対応とは別の課題です。産業医の探し方や選任の進め方については、産業医の派遣サービスを紹介した記事で解説しています。
【あわせて読みたい関連記事】
【2026年最新】産業医の「派遣」は違法? 紹介との違いや報酬相場、5つの探し方を徹底解説!
まとめ
派遣社員のストレスチェックは、原則として派遣元企業に実施義務があります。ただし、派遣先の事業場規模によっては派遣先企業にも実施義務が生じる場合があり、集団分析やメンタルヘルス対応の場面では派遣元・派遣先の連携が欠かせません。制度の理解だけでなく、日常的な相談体制を整えることが、派遣社員が安心して働ける職場づくりにつながります。
そのような対応にお悩みの場合は、リモート産業保健にご相談ください。
産業医と産業看護職の2名体制で、派遣社員を含むストレスチェックの実施や高ストレス者面談、衛生委員会の支援まで人事労務担当者様の産業保健業務を一括でサポートします。基本プランは月額3万円〜。産業医の選任・交代をご検討中の企業様にもおすすめです。




