健康経営とは、「従業員等の健康保持・増進の取組が将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、経営的視点から考え、戦略的に実践すること」です。経済産業省が2016年度より「健康経営優良法人制度」を推進してから、健康経営度調査の申請数や認定数も右肩上がりとなっています。
しかし、自社でも健康経営を推進したいと考えているものの、具体的にどのように進めたら良いのかわからないという方もいるかと思います。本記事では、健康経営のメリットや進め方について具体的に解説します。
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健康経営の目的
労働者の健康の保持や増進に取り組むことは、労働者の活力や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績や組織としての価値の向上へつながることが期待されます。また、少子高齢化が進む現代において、健康経営の推進により人的資本に投資することは、優秀な人材の獲得や定着率の向上にもつながるでしょう。
国においても、日本再興戦略のなかで「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つに健康経営は位置付けられており、日本全体で取り組むべき課題といえます。
健康経営の効果・メリット
企業が健康経営に取り組むことで、どのような効果やメリットがあるのでしょうか?おもなものは以下の4つです。
生産性が向上する
労働者が心身ともに健康な状態を維持することで、企業の生産性の向上が期待できます。労働者がいきいきとした状態であれば、労働意欲が高まり、社内のコミュニケーションも活発になるでしょう。また、労働者が体調不良になってパフォーマンスが低下し、最終的に休職や退職をしてしまうリスクを減らすことにもつながります。
実際に経済産業省が上場企業に勤務する正社員1万人に対して実施した調査によると、所属企業の健康投資レベルが高いと感じている人のほうが、健康状態や仕事のパフォーマンスが良好であることがわかりました。
ワークライフバランスが充実する
健康経営の推進により働きやすい職場環境になれば、労働者はプライベートと仕事を両立しやすくなり、ワークライフバランスの充実につながります。例えば、長時間労働の削減や有給取得の促進、フレックスタイムや在宅勤務制度の導入といった労働時間に関する取り組みを行なうことで、プライベートの時間を確保しやすくなるでしょう。
労働者がプライベートの時間でしっかりと心身を休めることで、仕事へのモチベーションやパフォーマンスの向上が期待できます。
離職防止につながる
労働者の心身の健康状態が良ければ、体調不良により退職に至る事態を減らすことができます。また、時短勤務・テレワークといった勤務形態の導入や福利厚生などにより働きやすい環境が整うことで、出産や子育て、介護などによる離職を防止することもできるでしょう。
また、健康経営を積極的に推進する自社に対する労働者の満足度が上がり、組織全体として離職率の低下も期待できます。
企業イメージが向上する
健康経営を推進することで、企業イメージの向上が期待できます。なかでも「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の認定を取得できれば、しっかりと健康経営に取り組んでいる証明になるため、世間の人々だけでなく、取引先や投資家からのイメージも向上するでしょう。その結果、業績の向上や優秀な人材の獲得といった良い影響がもたらされます。
帝国テータバンクが健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の認定を初めて受けた1,215社に対して実施した調査によると、認定取得に取り組んで得られた効果として最も高かったのは、「企業イメージ・企業ブランド価値の向上」であり、 健康経営への取り組みが「労働者を大切にする会社」というイメージにつながったことがわかりました。
出典:健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析|帝国データバンク
健康経営の推進方法
では、実際に企業で健康経営を推進するには、どのように進めたらよいのでしょうか?基本的な流れについて具体的に紹介しますので、企業の担当の方はぜひ参考にしてみてください。
1.申請から認定までのスケジュールを把握する
上場企業を対象とした「健康経営銘柄」や、大規模法人および中小規模法人の「健康経営優良法人」の認定を受けるには、決められた期間内に「ACTION!健康経営」のホームページから申請する必要があります。そのあとは審査を経て、要件をクリアしていれば正式に認定されます。
詳細なスケジュールは、健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)の「ACTION!健康経営」のホームページで確認できます。参考までに、2024年度における健康経営度調査(大規模法人部門)の申請期間は8/19〜10/11で、翌年3月に審査結果が発表される予定です。
申請資料の作成は時間がかかることが予想されますので、申請期間から逆算して早めに準備しておくことをおすすめします。
2.健康経営に取り組む目的をまとめる
まずは、自社が健康経営に取り組む目的を明確にしましょう。目的が不明確だと、労働者からの協力を得られにくいだけでなく、健康経営のための施策も形骸化してしまう可能性が高まります。
目的を明確化するために、「なぜ健康経営に取り組もうと思ったのか」「健康経営に取り組むことで実現したいことは何か」などを関係者でしっかりと話し合い、すり合わせておきましょう。最初に目的を整理しておくことで、担当する方々はもちろん、会社全体の一体感が生まれるでしょう。
3.健康経営への取り組みを表明する
健康経営に取り組むことを社内外に向けて宣言しましょう。例えば、会社ホームページで健康経営に関するページを作成し、トップによる健康経営宣言や健康経営体制などを紹介します。もし同じグループ会社で健康経営を推進している企業があれば、担当者に話を聞いてみるのもよいでしょう。
特に、健康経営優良法人の申請にあたっては、中小規模法人部門においても大規模法人部門においても、健康経営を推進していくことを社内外へ発信することが認定の必須条件となっていますので、申請前に実施しましょう。
4.組織体制を整える
健康経営への取り組みを表明したあとは、健康経営を進めるための組織体制を整えます。会社の方針に応じて、専門部署の設置や、既存の部署に専任職員・兼任職員を置くなどの対応を検討しましょう。また、保健師などの専門資格を持つ職員を配置するのもよいでしょう。
また、健康経営は会社全体で取り組んでいく必要があるため、経営層にも健康経営の取り組みや必要性などを適宜共有しましょう。そのため、役員会での議題に盛り込むなど、健康経営の進捗状況を報告できる体制を作ります。
5.健康課題を明確化する
まずは、自社の労働者の健康上の課題を把握しましょう。労働者の健康診断結果や長時間労働の状況、ストレスチェックの結果など、企業や健康保険組合が保有しているデータをもとに課題を見つけていきます。
最初のうちは新しく何らかのデータを集めるよりも、すでに持っているデータをもとに分析し、そのあとで不足しているデータや深堀したい内容について新たに収集しましょう。
分析のなかで、特定の部署に健康状態の悪い労働者が集中していることが発覚した場合、原因は長時間労働なのか、対人関係なのかなどデータを照らし合わせて考えていきます。その結果により、職場環境の改善や業務負担の見直しといった対策につなげましょう。
6.計画の策定・推進を行なう
自社の健康課題を把握したあとは、改善のための計画を立てましょう。計画を立てる際は健康課題を一気に改善しようとするのではなく、優先順位を付けて段階的に改善していく計画を立てます。
計画段階で、評価指標や評価方法を設定することも重要です。さらに、戦略マップを作成して健康経営戦略を見える化すると関係者間で情報を整理・共有しやすくなるので、一緒に作成することをおすすめします。
また、自社だけでなく健康保険組合や外部の専門家に協力を依頼するなど、自社以外にも目を向けてみましょう。人員などのリソースは限られているため、必要に応じて外部に協力を依頼することも大切です。
計画を策定したあとは、計画に沿って施策を実施しましょう。実施中は、担当者の方が進捗状況を確認し、トラブルなどがあれば早めに対応するようにします。例えば、ストレスチェックの回答率が予想より低い場合、あらためて回答への協力を呼びかけるなど、進捗状況に応じて対応しましょう。
取り組みの改善を行なう
あらかじめ設定した方法で実施した施策を評価し、その効果を検証しましょう。評価結果をもとに施策を改善し、担当部署だけでなく経営層にも報告して認識を共有することが大切です。
また、施策にもよりますが、健康経営の成果はすぐに出ないものもあります。方向性を確認しつつ、粘り強く取り組む必要があることを理解しておきましょう。

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健康経営を進める施策
健康経営を推進するための施策をいくつか紹介します。企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
勤務時間・休暇の制度を見直す
業種や職種にもよりますが、可能な範囲で勤務時間や休暇の制度を見直してみましょう。例として、ノー残業デーや有給休暇奨励日の設定、フレックスタイム制度の導入などが挙げられます。
制度を作ったあと、実際に制度が使われているか確認することも大切です。制度が使われていなければ、制度の利用に対して何が障害になっているのかを確認するようにしましょう。
長時間労働や休日がとれないことが常態化している職場環境では、脳血管系疾患や精神疾患のリスクが高まります。勤務時間や休暇制度の見直しは、長時間労働による労働災害の防止だけでなく、労働者のパフォーマンスや満足度の向上、離職率の低下も期待できます。
感染症を予防する
ノロウイルスやインフルエンザなどの感染力が高い感染症が社内で広がると、人員不足で工場の生産をストップせざるを得なくなる、取引先との商談ができなくなるなど、大きな損失につながる可能性があります。
そのため、予防接種の推奨や感染症対策の周知などを実施し、労働者の感染症に対する意識を高めることが大切です。流行前の時期に衛生委員会で取りあげるのもよいでしょう。
定期健診の受診・再診を促す
労働安全衛生法第66条に基づき、事業者は労働者に対して健康診断を実施する義務があり、労働者も事業者が実施する健康診断を受診しなければなりません。また、健康経営銘柄や健康経営優良法人の認定要件に「健康診断の受診率100%」が盛り込まれていますので、健康経営の第一歩として、確実に定期健康診断を受けるよう呼びかけましょう。
業務が多忙な労働者でも定期健診を受診できる環境作りも必要です。例えば、業務時間内に受診できるよう業務調整をしたり、閑散期に受診したりして、受診率100%を目指しましょう。
労働安全衛生法第66条の4では、健康診断の項目に異常の所見のある労働者がいた場合、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聞かなければならないと定められています。将来的に病気で入院が必要になる、後遺症で働けなくなるといった事態を未然に防ぐためにも、再診が必要となった場合は対象の労働者へ受診勧奨をしましょう。
出典:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう|厚生労働省
ストレスチェックを実施する
2015年より、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、1年以内ごとに1回ストレスチェックを実施することが義務付けられました。ストレスチェックには「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止」や「ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる」といった目的がありますので、結果をもとに職場環境を改善しましょう。
これにより、精神疾患による休職や退職のリスクの低減、労働者の満足度やパフォーマンスの向上などにつながることが期待できます。
出典:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について|厚生労働省
保健指導を実施する
健康診断の結果で「生活習慣病の発症リスクが高い」と判定された労働者に対し、特定保健指導を受けられる体制を作っておきましょう。具体的には、勤務時間中でも指導を受けられるように業務調整をするなどして、実施率の向上を目指します。
特定保健指導とは、対象者の生活習慣病を予防するために、管理栄養士や保健師がサポートをしてくれるものです。実施主体となるのは健康保険組合といった保険者ですが、企業としても生活習慣病による労働者の休業・退職のリスクを減らすことにつながりますので、ぜひ活用しましょう。
食生活改善の指導を行なう
先述した特定保健指導に加えて、生活習慣病予防のためには食生活の見直しも大切です。社員食堂のメニューをヘルシーなものにする、栄養バランスの良い弁当を安価で提供するといった取り組みもあります。
また、食生活に関する健康講話を開くのもよいでしょう。社内に産業医や保健師などの産業保健スタッフがいなければ、外部に依頼することも一つの手です。講話をする際には、事前に自社の健康課題や働き方を講師へ伝え、それに適した講話をお願いしましょう。
健康に関するセミナーを実施する
労働者の健康に対する意識を高めるために、定期的に健康に関するセミナーを実施しましょう。テーマはメンタルヘルスケアや生活習慣病、運動などさまざまありますが、自社の健康課題に関連するものであればより効果的です。また、セミナーの冒頭で自社の健康課題について説明すると、労働者も課題意識を持ちやすくなるでしょう。
セミナーの実施方法は、自社の産業保健スタッフに依頼する、外部講師を招く、e-learningなどさまざまありますが、テーマや人員などを考慮して適した方法を選びます。
社内イベントを計画する
労働者が楽しみながら健康意識を高めるために、社内イベントを実施するのもよいでしょう。イベントに参加することで当事者意識が芽生えるだけでなく、労働者間のコミュニケーション促進も期待できます。
例えば、ウォーキングイベントで歩数が多い部署を表彰する、ヨガの講師を呼んで参加者でヨガをするなどが挙げられます。健康保険組合でイベントを実施していた場合、健康保険組合と企業で協力するとより効率的に実施できるでしょう。
メンタルヘルス不調者に対する制度を整える
近年は、精神障害による労働災害補償の請求件数・支給決定件数が右肩上がりの状況です。業務に起因したメンタルヘルス不調が発生しないよう、職場環境を改善するのはもちろんのこと、メンタル不調者が出た場合の支援体制を整備しておく必要があります。
社内に産業保健スタッフがいれば面談の場を設け、カウンセリングなど関連する福利厚生があれば案内しましょう。ラインケア研修などで管理職へ対応方法を周知することも大切です。
また、休職が必要になる場合に備え、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」などを参考に体制を整備します。
職場復帰支援を行なう体勢を整える
健康経営を推進することにより、心身の不調による休職者は減るかもしれませんが、ゼロにできるわけではありません。心身の不調による休職者が発生した場合でも、スムーズな職場復帰ができる体制を整えておきましょう。
例えば、私傷病休暇制度について、最大何ヵ月まで休むことができるかは企業ごとに異なります。自社の状況に合わせて検討し、労使間で審議しましょう。そのほかにも、復帰後に治療と仕事を両立できるよう、時間単位での有給休暇や時差出勤制度を導入するなどして体制を整備するのも有効です。
まとめ
ここまで健康経営のメリットや推進方法について紹介してきましたが、企業によって健康経営に取り組む目的や健康課題は異なるため、企業の個性が出ます。ぜひ本記事を参考に、自社で健康経営を推進しましょう。
とはいえ、自社だけで健康経営を実施することに対して不安を感じている担当者様もいるでしょう。そこでおすすめしたいのが、当社のリモート産業保健です。
リモート産業保健では、産業医の選任やストレスチェック代行、面接指導実施、衛生委員会の立ち上げといった産業保健活動を一括サポートしています。健康経営の施策で紹介した定期健康診断やストレスチェック、メンタルヘルス不調者の面談など、健康経営のためにサポートできることもたくさんあります。
担当者の方の業務負担軽減にもつながりますので、これから健康経営を推進したいと考えている企業担当者の方は、ぜひご検討ください。

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