上記のような疑問はありませんか?
従業員のエンゲージメントを向上させることは、企業経営の成功に直結する重要な要素です。本記事では、エンゲージメント向上施策のなかでも特に効果的な8つの方法と具体的な4つのステップについて解説し、最後にエンゲージメント施策の成功事例を併せて紹介します。
引用:中小企業・小規模事業者における人材の確保・育成|中小企業庁
従業員のエンゲージメントとは?
「従業員のエンゲージメント」とは、従業員が企業や組織に対して信頼や愛着をどれほど持っているかを示す指標のことです。
エンゲージメントの高い従業員は、企業や組織に対して強い関心や熱意を持ち、仕事に積極的に取り組むため、生産性や業務効率が向上し、企業の業績向上に貢献する傾向があります。
エンゲージメントと似ている言葉として「従業員満足度」がありますが、異なる側面があります。
両方とも従業員が仕事や企業・組織に「満足している」点では同じですが、従業員満足度が高いだけの従業員の場合は、強い関心や熱意を持っているわけではないため、全員が仕事に積極的とは限りません。
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エンゲージメントとは?企業内での意味や高める方法を徹底解説なぜエンゲージメントの向上が重要?
エンゲージメントの向上が求められる背景には、おもに以下の3つが挙げられます。
- 転職市場の変化
- 労働者の価値観の変化と働き方の多様化
- 「人材」を「 人財」とした経営戦略の主流化
現代の労働市場は流動化しており、かつては企業側が労働者を選ぶことができましたが、今は労働者が企業を選ぶ時代に移っています。そのため、エンゲージメントの向上は自社における定着率を高めるための重要な要素となっています。
また、労働者が自身のキャリアを自律的に選ぶ時代になったことや、自分のライフスタイルに合わせて働くことを希望する労働者が増加したことも、従業員のエンゲージメント向上が重視される要因といえます。
そして、人を最大の資源としてとらえ、育成や活用を行なう経営戦略は、従業員のエンゲージメント向上に直結し、組織の持続的な成功に重要な役割を果たすため、密接な関係にあります。
従業員のエンゲージメントを高める重要指標
エンゲージメントとは、従業員がどれだけ会社に対して愛着を持ち、自発的に貢献しようとする意欲があるかを示すものです。従業員のエンゲージメントを高めるためには、以下の3つの指標に注目する必要があります。
- 従業員満足度
- モチベーション
- ロイヤリティ
一つずつ解説します。
1.従業員満足度
従業員満足度とは、職場環境や給与、福利厚生、人間関係などに対して、従業員がどれだけ満足しているかを測る指標です。高い満足度は生産性の向上や離職率の低下に直結するため、事業者は給与や福利厚生の充実、働きやすい環境の整備、キャリアアップの支援などに努める必要があります。
従業員満足度はエンゲージメントの基盤であり、両者を適切に管理することで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。意識すべき点は、ただ満足度を高めるだけでなく、自己成長や企業目標への貢献を実感できる環境を整えることです。
2.モチベーション
モチベーションとは、従業員が日々の業務に取り組むうえでの意欲の源となる動機付けです。
モチベーションが高ければ業務への取り組みが積極的になり、エンゲージメントを高める土台となりますが、それだけでは十分ではありません。なぜなら、モチベーションの高い従業員が、必ずしも高いエンゲージメントを示すわけではないためです。
意識すべき点は、両者をバランス良く向上させることです。短期的なモチベーションの向上だけでなく、長期的な視点でエンゲージメントを高める施策を講じることが、持続可能な組織づくりには不可欠といえます。
3.ロイヤリティ
ロイヤリティは、従業員が会社に対して抱く忠誠心や帰属意識を示す指標です。この指標では会社と従業員の間に上下関係があり、従業員が会社に長期的に留まりたいと思うかに焦点を当てています。
ロイヤリティが高い従業員は、長期的な雇用を望み、企業の成功に貢献しようとします。つまり、従業員のロイヤリティが高い企業は人材の定着率が高く、長期的な組織の安定性や企業文化の強化が期待できるでしょう。
ロイヤリティを高めるためには、公正な報酬や成長機会、働きやすい環境を提供し、従業員の声を大切にすることが重要です。ロイヤリティの向上に努めれば、エンゲージメントも自然と向上するでしょう。
従業員のエンゲージメントが低くなる原因とは?
日本は他の先進国と比較して従業員のエンゲージメントが低い傾向にあり、その背景には昔からの文化的・社会的な要因が存在します。ここでは、日本において従業員のエンゲージメントが低くなる原因について紹介します。
1. 終身雇用により社員が離職することをあまり考えられていない
日本の終身雇用制度は、従業員が短期間で離職することを前提にしておらず、エンゲージメントが低くなる一因となっています。企業は従業員が定年まで働くことを期待するため、個々の成長やキャリア開発への関心があまり高くありません。
その結果、従業員は自身のキャリアプランに対する不満やモチベーションの低下を感じやすくなり、エンゲージメントの低下につながってしまうのです。
2. 企業のビジョンを従業員に浸透させられていない
企業がビジョンを従業員に浸透させられていないことも、エンゲージメントが低くなる原因となります。企業の目標や価値観を理解していなければ、従業員も自分の仕事が組織全体の目標にどのように貢献しているのかがわからなくなるでしょう。
その結果、従業員の仕事への情熱やコミットメントが低下していくと、企業全体の士気や生産性にも悪影響がおよび、エンゲージメントも低下するおそれがあります。
エンゲージメントサーベイを導入し成功した企業事例
現状の日本は海外と比べてエンゲージメントが低い傾向にありますが、その重要性の認識は高まっており、改善に向けた取り組みが各企業で進められています。ここでは、エンゲージメントサーベイを導入したことで従業員のエンゲージメントを高めた成功事例を2つ紹介します。
株式会社福井
株式会社福井は創業110年を超える老舗企業ですが、離職率の高さに悩んでいました。そこで、社長自らエンゲージメントサーベイや従業員との1on1ミーティングを導入しました。匿名のサーベイでは厳しい意見が出ましたが、それらを真摯に受け止めて対応しています。
1on1ミーティングでは、「デスクでできない話」「あなた(部下)のための時間」「腹を割って話す」を大原則とし、双方向のコミュニケーションを重視しました。
上記のような取り組みの結果、人材の定着や管理職同士の一体感の醸成、そして職場の雰囲気の改善が実現しました。採用活動でもエンゲージメントの高さを強調し、多様な従業員の採用に成功しています。
ソフィアメディ株式会社
訪問看護サービスを提供するソフィアメディ株式会社では、事業拡大にともなって採用が増加しているものの、離職率も上昇していることが課題でした。そこで、働きがいの向上を目指して毎月4問のパルスサーベイを実施し、従業員の体調や働きがいを定期的に調査するようにしました。
回答の変化に注目して早期に対策を講じるようにした結果、定着率の向上に成功しています。また、年1回の組織診断を実施し、そこで出た意見を反映させることで、双方向のコミュニケーションを促進しています。
これらの施策を通じて、事前相談のない離職の減少や調査への前向きな回答の増加がみられるなど、従業員の働きがいや定着率の向上が実現しつつあります。
エンゲージメント向上施策8選!
ここからはエンゲージメント向上のための施策として以下の8つの施策を紹介します。実際に、エンゲージメントが高い職場の特徴としても挙げられる内容であるため、必ず確認しましょう。
- 目標、ビジョンの共有
- ワークライフバランスの改善
- 労働環境の整備
- 社内のコミュニケーションの活性化
- 人事評価の見直し
- 従業員のストレスチェック
- マネジメント力の向上
- 従業員の主体的な取り組みの後押し
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ワークエンゲージメントを向上させるには?測定方法や必要な理由、メリットを解説目標・ビジョンの共有
自社の従業員が企業・組織の目標やビジョンを理解し、共有することは、組織全体の方向性を明確にし、エンゲージメントを高めるために重要です。具体的な取り組みとして、以下のような例が挙げられます。
- 企業の経営陣が従業員に向けた説明会を定期的に行ない、目標やビジョンについて説明する
- チームごと、従業員ごとに目標を設定し、進捗状況や課題を共有するミーティングを定期的に行なう
- 目標達成やビジョンに合致した従業員に対して、表彰やインセンティブを提供する
ワークライフバランスの改善
従業員が仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境を整備することで、柔軟な働き方が可能となるため、休職率や離職率の低下が期待でき、エンゲージメントが高まります。具体的な取り組みとして、以下のような例が挙げられます。
- フレックス制度の導入やリモートワークの促進
- 育児休暇や介護休暇などの柔軟な休暇制度の導入
- 産業医による面接指導やセミナーなどの健康管理支援
労働環境の整備
快適な職場環境は従業員の集中力やモチベーションを高めたり、労働負荷やストレスが軽減されたりするため、エンゲージメントの向上が期待できます。具体的な取り組みは、以下のとおりです。
- 快適なオフィス環境の整備(室温、明るさ、騒音、整理整頓など)
- オープンなコミュニケーションを促進する場所やツールの導入
- 社内外への研修やトレーニングなどの参加支援
社内のコミュニケーションの活性化
適切なコミュニケーション環境が整備されることで、従業員同士や上司と部下間におけるコミュニケーションが円滑に行なわれ、チームの結束力や従業員の心理的安全性が確保できるため、エンゲージメント向上が期待できます。具体的な取り組みは、以下のとおりです。
- 円滑な情報共有や意見交換を目的としたチャットツールの導入
- チームや部署、一対一などの定期的なミーティングの実施
- アウトドア活動やワークショップ、ランチミーティングなどのイベントの開催
人事評価の見直し
従業員が公平かつ適切に評価されることは、エンゲージメントに直結します。人事評価の見直しにより、従業員の目標達成や成長の機会が得られやすくなります。具体的な取り組みとして、以下の例が挙げられます。
- 個人、チームごとの具体的な目標設定と四半期ごとのフィードバック
- 従業員に対する評価基準やプロセスの透明化
- 360度フィードバックの導入
従業員のストレスチェック
従業員のストレスを定期的に把握し、適切な対策やサポートを提供することで、従業員の健康やモチベーションを維持し、エンゲージメントを高めることができます。具体的な取り組みは、以下の例が挙げられます。
- 定期的なストレスチェックの実施と分析による課題や原因の把握
- ストレスマネジメントに関するセミナーの開催
- 産業医や保健師による相談窓口の設置
マネジメント力の向上
上司や管理職のマネジメントスタイルや能力は、従業員と企業・組織をつなぐ重要な役割を持つため、従業員のエンゲージメントに与える影響は大きいです。具体的な取り組みの例は、以下のとおりです。
※マネジメントスタイル・・・目標達成に向けた特有のアプローチや振る舞いのこと
- 上司や管理職に向けたリーダーシップ研修やセミナーの開催
- 上司や管理職に向けたコミュニケーションスキル向上のトレーニングや研修の実施
- 上司や管理職に対する定期的なフィードバックの実施
従業員の主体的な取り組みの後押し
従業員が自発的に取り組むことを促し、その取り組みを支援することで、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まります。具体的な取り組み例は、以下のとおりです。
- 従業員自身の目標設定や成果の測定方法に関するセミナーの開催
- 社内外の研修への参加支援
- 従業員が考えたアイデアや取り組みを積極的に導入できる仕組みづくり
エンゲージメントサーベイを活用する流れ
従業員のエンゲージメントを高めるための取り組みを、以下の4つのステップに分けて紹介します。
- 従業員エンゲージメントの定義の具体化
- 課題の分析
- エンゲージメント向上施策の決定
- 効果測定・改善
1.従業員エンゲージメントの定義の具体化
従業員エンゲージメントを定義し、どのような要素で測定されるのかを明確にします。従業員エンゲージメントを定義づけるためには、具体的なイメージが重要です。例えば、以下のような例が挙げられます。
- 組織の目標達成に向けて自発的に行動している状態
- チームメンバーとのコミュニケーションを楽しんでいる状態
- スキルやキャリアの成長に積極的に取り組んでいる状態
- 仕事とプライベートの両立ができている状態 など
2.課題の分析
従業員エンゲージメントを定義づけたあとは、自社の課題の分析を行ないます。従業員の意見やエンゲージメントに与える要因などを調査し、エンゲージメント向上施策の方向性を明確にしましょう。具体的な取り組み例として、以下の方法が挙げられます。
- エンゲージメントサーベイの実施
- 従業員離職率と離職理由の分析
- 組織の文化や労働環境の分析 など
従業員へ調査する際は、率直な意見を得るために匿名性を確保することも大切です。なお、エンゲージメントサーベイについて、詳しく知りたい方は下記の関連記事をご参照ください。
【あわせて読みたい関連記事】
エンゲージメントサーベイとは?調査のおもな目的と実施の流れ、注意点を解説3.エンゲージメント向上施策の決定
従業員の意見やエンゲージメントサーベイなどの調査をもとに、エンゲージメント向上施策を決定します。調査から得られた自社の課題や従業員のニーズに対して、優先順位をつけて対応しましょう。
エンゲージメント向上施策が企業の風土に定着するためには、長期的に取り組むことが必要です。また、長期的な取り組みは、持続的な従業員エンゲージメント向上にも不可欠であるため、短期的な判断は禁物です。効果を測定する頻度や方法は、実行中にあらかじめ決めておきましょう。
4.効果測定・改善
実施したエンゲージメント向上施策の効果を測定し、評価します。従業員の満足度やモチベーション、離職率などの指標をもとに評価・分析し、改善計画をたてましょう。その効果を再評価することで継続的な改善を行ないます。
このように、継続してPDCAサイクルを回すことで、従業員のエンゲージメントを持続的かつ永続的に向上させることが期待できます。効果測定・改善を行なう際は、従業員の声に積極的に耳を傾けましょう。
エンゲージメント向上の第一歩!メンタルヘルスケアならリモート産業保健
従業員が働きやすい職場環境であれば、ストレスや不安などの心理的な負担が少ない状態を維持できます。
その結果、安定して高いパフォーマンスを発揮することができたり、コミュニケーションが円滑になりやすくなったりするため、エンゲージメント向上を図る取り組みとして不可欠といえます。
リモート産業保健では、成功事例で紹介した産業看護職面談(オンラインを含む)はもちろん、メンタルヘルスケアの中心的役割を担う産業医の選任やストレスチェックの代行、職場巡視、衛生委員会の立ち上げ・運営支援など、充実したサポートを行なっております。
エンゲージメント向上施策の第一歩として従業員のメンタルヘルスケアに取り組む際は、リモート産業保健のサービスをご活用ください。
産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、「ストレスチェック」や「衛生委員会の支援」など、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を大幅軽減し、従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
まとめ
従業員のエンゲージメントは、従業員が企業や組織に対して信頼や愛着を持っているかを示す指標であり、高めることで企業の成長や対外的な信用の確保などのメリットを得られます。
従業員のエンゲージメントを高めるための施策や具体的なステップは本記事で紹介していますが、企業が従業員のニーズや関心を理解し、PDCAを繰り返し回しながら、迅速かつ誠実に対応することが重要です。
リモート産業保健では、産業保健活動の関連業務を通して、より健康で生産性の高い職場環境を構築することでエンゲージメント向上のための徹底したサポートやご提案を行なっております。まずはお気軽にご相談ください。
コンディションサーベイは、従業員の潜在的な健康課題や休職・離職アラートを早期にキャッチできます。さらに、従業員の健康状態を把握することに留まらず、具体的な解決策が用意されるため、効果検証まで行えます。企業が健康経営に向け活動するための強い味方です。
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