1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が1対1の面談を行なうことです。1on1ミーティングというと評価面談を想像しがちですが、目的や実施頻度は異なります。
1on1ミーティングの目的は人材育成や心身の健康状態の確認などで、週1回、隔週1回など実施頻度が高い点が特徴です。短時間・高頻度で行なうことに意味があるため、多くの企業では1回あたり30分程度の面談時間をもうけます。
一方の評価面談は、四半期に1回、または半年に1回程度行なわれることが多く、人事考課の結果や上司からのフィードバック、今後の方針などが部下に伝えられます。
1on1ミーティングを効果的に導入するためには、事業者や企業担当者が評価面談と異なる点や必要性を理解することが重要です。
1on1ミーティングの導入で期待できる4つのメリット
1on1ミーティングを導入することで期待できるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、おもな4つのメリットを紹介します。
1on1ミーティングのメリット(1)心理的安全性を高められる
心理的安全性とは、メンバーが臆することなく安心して発言できる状態のことをいいます。心理的安全性を高めることで、チーム内の信頼や協力関係を築きやすくなるため、企業全体の成果につながります。
1on1ミーティングを気軽に上司と話せる場として活用すれば、仕事・プライベートに関わらずさまざまな話題でコミュニケーションを取ることができます。その密なコミュニケーションを通じて、「何をいっても拒絶されない」「自分をさらけ出せる」といった心理的安全性が確保された環境を作り出すことが重要です。
【あわせて読みたい関連記事】 組織に必要な心理的安全性とは?高めるメリットや取り組みをわかりやすく紹介1on1ミーティングのメリット(2)ワークエンゲージメントの向上につながる
ワークエンゲージメントとは、仕事に対するメンタル面での健康状態を表す概念のことです。ワークエンゲージメントが高い状態では、「仕事に熱中できる」「仕事に楽しさを感じる」「挑戦意欲が増す」など、仕事とのつながりがポジティブになりやすいといわれています。
定期的な1on1ミーティングによって、部下の抱える課題や悩みをタイムリーに知ることができれば、解決に向けてすばやいサポートができます。
さらに、部下の心理的負担を下げることで、仕事に対する集中力や熱意が高まったり、主体的に活動できるようになったりして、ポジティブな発想が生まれることも期待できます。
【あわせて読みたい関連記事】 ワークエンゲージメントを向上させるには?測定方法や必要な理由、メリットを解説1on1ミーティングのメリット(3)離職率低下につながる
定期的に1on1ミーティングを行なうことで、上司と部下の信頼関係が強固になります。そのうえで、仕事やプライベートに関する悩みを聞き、必要なサポートを行なえば、部下の離職を未然に防ぐことにもつながるでしょう。
実際に、「上司との関係が悪い」「職場環境が合わない」といった理由で離職を決断するケースは少なくありません。1on1ミーティングを通して部下の話を丁寧に聞き、不安や悩みを解決することで、「面談で話したことを覚えていて、必要な対応をしてくれている」という信用を得ることができます。
また、上司や担当者側にとって、1on1ミーティングは従業員の不満を直接聞くことができる貴重な機会です。現場のニーズをヒアリングすることで、より適切な職場改善の施策を打ち出せます。
1on1ミーティングのメリット(4)人事評価・フィードバックがしやすくなる
従業員が増えれば増えるほど、一人ひとりの努力や成果をすべて把握するのは難しくなります。
そこで、定期的に1on1ミーティングを行なえば、部下の置かれている状況や業務の途中経過、成果に至るまでのプロセスなどをタイムリーに把握したうえで、公平な人事評価・フィードバックができるようになるでしょう。
結果だけではなくプロセスも含めて評価することで、「自分の頑張りを見てもらえている」という部下からの納得や信用も得やすくなります。
1on1ミーティングの実施手順【3ステップ】
効果的な1on1ミーティングを実施するには、事前におおまかな流れを知っておくことが重要です。ここでは、1on1ミーティングの実施手順について説明します。
【ステップ1】実施前の準備
1on1ミーティングを実施する前に、部下に面談の目的や効果について伝えておきましょう。目的もなくただ面談をするだけでは、「特に話すことはありません」で終わってしまうおそれがあります。
1on1ミーティングの導入前に、社内で説明会や研修を行ない、従業員に目的や効果、必要性を理解してもらうとよいでしょう。説明会や研修では、できる限り本人が話したい・相談したい内容を話せるように、「本人の気持ちを尊重する面談」であると伝えることが大切です。
例えば、業務進捗、仕事への悩みや不安、成功・失敗体験、キャリアについて、プライベートについてなど話す内容やテーマを事前に決めることで、限られた時間で質の高い面談ができるでしょう。
【ステップ2】ミーティング開始
1on1ミーティングの主役は部下です。上司は部下の話を傾聴する(相手の気持ちや考えを否定せず、共感しながら理解する)ことが求められます。
面談の緊張感を解くために、最初は世間話をするのも一つのテクニックです。雑談も交えながら、部下が話しやすい状況や部下との信頼関係を作ることが大切です。
ただし、雑談だけで終わらせないよう、ステップ1で決めた目的やテーマなどをもとに、部下に質問をすることも忘れてはいけません。前回の1on1ミーティングの記録があれば、それも積極的に活用します。
現在の目標・課題を再確認して、次に何をすべきか、目標設定は適切であるかを、部下と一緒に考えていくことができると理想的でしょう。
もし、部下から「話したいことは特にありません」といわれた場合にも、上司から質問をしつつ、気になることがあれば少し深掘りしてみると、話が広がるかもしれません。
【ステップ3】記録・クロージング
1on1ミーティングをする際には、面談内容を記録して、お互いがそれぞれ確認できるようにしておきます。話し合った内容のまとめや課題、目標達成のために何をするのかなど、適切なクロージングを行なうことが重要です。
事前準備からクロージングまでしっかり行なうことで、1on1ミーティングのメリットを十分に享受できます。ただ闇雲に始めるのではなく、土台から一つずつ積み上げて、上司・部下ともに意味のある1on1ミーティングを実施しましょう。
1on1ミーティングで話すべきおもなテーマ例4選
いざ1on1ミーティングを導入しても、「面談で何を話せばいいのかわからない」という上司も少なくありません。ここでは、1on1ミーティングで話すべきテーマを4つ紹介します。
1on1ミーティングのテーマ例(1)仕事の悩み
仕事がうまく進まずに悩んでいる、社内の人間関係で困っている、会社に〇〇をして欲しい、などの「仕事の悩み」は、テーマとして最も多い内容です。
1on1ミーティングで上司に相談することで、課題解決や悩みの共有、部下のモチベーション低下の予防などにつながります。普段の業務中では周囲の目や忙しさなどで相談しにくくても、1on1ミーティングという1対1の場であれば、率直な気持ちを話してもらえるかもしれません。
また、部下が相談した内容に対して上司が真摯に向き合い、解決に向けて積極的な姿勢や対応を見せることで、「上司に相談して良かった」とプラスにとらえてもらうことができます。
1on1ミーティングのテーマ例(2)健康状態
健康状態は仕事へのモチベーションやパフォーマンスに大きく影響します。心身に不調を抱えている部下がいれば、いち早く対処することが重要です。
健康状態について話す際には、以下のような質問をしてみましょう。
- よく眠れているか(睡眠時間や睡眠の質)
- しっかりと食事を取っているか
- 体調で気になることはないか
- 仕事でストレスを感じていないか
- 業務量や業務時間が増えていないか
- 職場での人間関係に困っていないか など
ただし、部下の相談に対して「こうしたらいいんじゃない?」とすぐに解決策を伝えたり、「それは君が悪いよ」と言動を否定したりしてはいけません。まずは、相手を尊重する姿勢を見せましょう。
面談では肉体的な疲労や体調不良だけでなく、メンタルヘルス不調についてもフォローできるとよいでしょう。
1on1ミーティングのテーマ例(3)キャリアプラン
1on1ミーティングの大きな目的の一つに、「人材育成」があります。「数年後どうなっていたいのか」「やりがいを感じられる仕事は何か」といったテーマで話をすれば、部下が将来を意識するきっかけを作ることができます。
また、キャリアプランについて話して上司からアドバイスをもらうことで、モチベーションの向上やキャリアイメージの明確化にもつながります。
1on1ミーティングを通して、本人が気付いていなかった能力や才能が花開く可能性もあるため、上司として部下の飛躍をサポートすることを意識しましょう。
1on1ミーティングのテーマ例(4)プライベート
アイスブレイクとしてプライベートの話をするのも効果的です。例えば、休日の過ごし方や趣味、リフレッシュの方法、最近夢中になっていることなどを聞いてみるのもよいでしょう。
興味・関心のある話題についての質問から始まれば、部下の緊張がほぐれ、安心して話し始めることができるはずです。ただし、不快感を与える話題や踏み込みすぎた内容は避け、ハラスメントにならないように注意してください。
1on1ミーティングを行なううえでの注意点
しっかり事前準備をして1on1ミーティングを導入したものの、思ったほどの効果が得られなかった、というケースもあります。そこで最後に、1on1ミーティングを行なううえでの注意点を紹介します。
最初から完璧を目指さない
1on1ミーティングは、1回で効果が出るものではありません。ある程度の時間を要することを理解したうえで、根気よく続けていくことが大切です。
また、毎回完璧を目指す必要はありません。「思ったより話せなかった」「聞きたいことが聞けなかった」と反省する回もあるかもしれませんが、その記録をもとに次回のミーティングを実りあるものにすることを意識しましょう。
あまり気負い過ぎず、まずはお互いがリラックスした状態で話せるような雰囲気作りと、信頼関係の構築を目指すのがおすすめです。
双方向のコミュニケーションを意識する
1on1ミーティングは、緊張感のある面談ではなく、部下のことを知るためのコミュニケーションの場です。部下の話を一方的に聞くのではなく、自分の失敗談を話すなど、ときには上司のほうから自分の話をしてもよいでしょう。
また、1on1ミーティングでのハラスメントを避けるには、日頃から部下とコミュニケーションを取り、部下の性格を知っておくことが重要です。面談で話す内容を固定化せず、それぞれの部下に合わせた話題で1on1ミーティングを行ないましょう。
部下が自ら「話を聞いて欲しいです」と相談してくるようになれば、1on1ミーティングは大成功です。部下が自主的に1on1ミーティングを提案してくる状態を目指し、内容を少しずつ改善していきましょう。
まとめ
1on1ミーティングは短いサイクルで上司と部下が行なう面談のことで、心理的安全性やワークエンゲージメントの向上、離職率の低下につながる大切なコミュニケーションの場です。
1on1ミーティングの効果を最大化するには、目的の明確化、実施手順や話す内容の確認、上司の面談スキルの向上、日頃からの関係構築など、事前準備が必要不可欠です。ただし、最も重要なのは、「部下の悩みや課題に寄り添い、成長をサポートすること」である点を忘れないようにしましょう。
そして、1on1ミーティングを通じて、部下の健康不安やメンタルヘルス不調を感じ取った場合には、速やかに産業医や産業看護職などの専門家に相談する必要があります。
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