そもそも「モチベーション」とは?
ビジネスシーンでよく耳にする「モチベーション」という言葉ですが、本来どのような意味があるのかご存知でしょうか。
ここでは、モチベーションの定義や種類について説明します。
モチベーションの定義
モチベーション(motivation)とは、「やる気」「原動力」といったことを意味する言葉で「動機付け」とも呼ばれます。一般的には、人が目標に向かって行動を起こすためのきっかけや、その行動を維持するための意欲を表すときに用いられます。
モチベーションという言葉がビジネス分野で使われるときには、「仕事に対する意欲」を意味することが多いようです。労働者のモチベーションを上手に引き出すことができれば、目標達成への強い原動力となり、企業経営にも良い影響を与えることができるでしょう。
モチベーションの構成要素
モチベーションには、大きく分けて「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2種類があります。
外発的動機付けとは?
外発的動機付けとは、外的要因による動機付けです。
ビジネスシーンでは、給与や賞与、上司からの評価といった報酬を得るために行動することを指します。また、「上司に怒られたくない」「同僚の前で恥をかきたくない」といった、自分にとって嫌なことや面倒なことを回避することも、外発的動機付けに含まれます。
ただし、外発的動機付けには行動を変える即効性があるものの、多くの場合、その効果に持続性はありません。さらに、すぐに結果がともなわないと行動をやめてしまったり、「やらされている」という感覚から強いストレスを感じてしまったりすることがあります。
内発的動機付けとは?
内発的動機付けとは、自分の内面から湧き上がる意欲や興味、関心などによる動機付けのことです。「お客様の役に立ちたいから仕事をする」「興味がある分野を極めたいから資格取得を目指す」といった行動は、内発的動機付けによるものです。
内発的動機付けは、外発的動機付けに比べると持続性があり、質の高い成果を生み出しやすいといわれています。特にビジネス分野においては、労働者の内発的動機付けを高めることで、能動的かつ自発的な成長を促すことができるでしょう。
また、フレデリック・ハーズバーグによる「二要因理論」では、仕事におけるモチベーションには「動機付け要因」と「衛生要因」が関連していると提唱されています。動機付け要因とは仕事のやりがいや達成感、責任感などを示し、衛生要因には給与や福利厚生といった、労働条件にかかわるものなどが含まれます。
労働者のモチベーションを高めるためには、衛生要因だけでは不十分であり、動機付け要因も必要であると考えられているのです。
労働者のモチベーションが「上がった状態」「下がった状態」とは?
労働者のモチベーションが上がった状態とは、業務への集中力や意欲が高まり、仕事に対するやりがいや充実感を得られている状態のことです。
モチベーションが上がると「新しい分野の業務に積極的にチャレンジする」「難しい業務に粘り強く取り組む」といった姿勢が見られるようになり、その様子は周囲の労働者にも良い影響を与えます。
モチベーションの高い労働者が増えれば、組織全体の生産性が高まって、企業の業績アップにもつながるでしょう。
一方で、労働者のモチベーションが下がった状態とは、業務に対するやる気が持てず、仕事の質や効率が低下していることを指します。モチベーションの低い労働者が増えるほど、組織全体の生産性は下がり、会社の経営に悪影響を与える事態にもなりかねません。
高いモチベーションがビジネスにもたらすメリット
労働者のモチベーションの変化は、良くも悪くも組織全体にさまざまな影響を与えます。
ここからは、労働者のモチベーションを高めることが、企業にどのようなメリットを与えるのかについて具体的に説明します。
労働者のパフォーマンスが向上する
モチベーションが高い労働者は、仕事に対してやる気や情熱を持ち、業務にも前向きな姿勢で取り組みます。新しいことに積極的にチャレンジする意欲もあり、自己成長のために主体的に努力します。
集中して業務にあたったり、困難な事例にも粘り強く対応したりできるため、組織全体の仕事の質や効率が高まるでしょう。
業務の生産性が向上する
労働者が高いパフォーマンスを発揮することは、業務の生産性を向上させることにつながります。営業成績など目に見える形で成果が出れば、労働者は「自分は会社に貢献できている」という実感が湧き、自信がつくというメリットもあるでしょう。
また、仕事に対する労働者の満足度が高まると、離職率が低下して、より良い人材が集まりやすくなることも期待できます。
職場環境に良い影響をもたらす
モチベーションが高い労働者がいることは、職場環境に良い影響をもたらします。仕事への意欲が高い労働者は、「今の職場で管理職として仕事をしたい」「これまでの経験や知識を仕事に活かしたい」といった、明確な目標を持っている傾向があるからです。
モチベーションが高い労働者を中心に職場の雰囲気が明るくなったり、結束力が強まったりすることで、チーム一丸となって仕事に取り組むことができるでしょう。
労働者のモチベーションが低下するとどうなる?
労働者のモチベーションが低下すると、下記のような状況に陥ることが予測されるため、注意が必要です。
能動的な行動ができなくなる
モチベーションが低下すると、労働者は仕事への意欲が湧かず、自発的な行動ができなくなります。「仕事をやらされている」という感覚になるため、人から指示されたことを最低限こなすだけになりがちです。
そうなると、仕事の効率や質が下がって成果を出すことができないため、さらにモチベーションが低下するという悪循環に陥ってしまうでしょう。
生産性が低下し、売上の低迷につながる
モチベーションの低い労働者は、積極的に仕事に取り組むことができないため、新たな業務やスキル獲得にチャレンジする意欲も起きません。
このような労働者がいると、職場の雰囲気が悪くなったり、チームで協力して仕事をすることを妨げてしまったりするでしょう。最終的には、組織全体の生産性を低下させ、企業の業績悪化につながる可能性もあります。
離職のリスクが高まる
モチベーションが低下すると、労働者は働く意味を見出すことができなくなり、就労への意欲を無くしてしまうことがあります。そうなると自社への愛着も薄れるため、最終的には離職を考えるきっかけにもなり得ます。
さらに、モチベーションの低下によって仕事にともなうストレスや疲労感が高まると、心身の健康に悪影響をおよぼす可能性もあるでしょう。
モチベーション低下のおもな4つの原因
モチベーションが下がる理由は、人によってさまざまです。ここでは、労働者のモチベーション低下につながりやすい、4つの原因について説明します。
評価制度に不満がある
「一生懸命業務に取り組んでいるのに評価してもらえない」「自分より成果の低い人のほうが高い評価を受けている」といった状況があると、労働者のモチベーションは低下します。
特に、成果主義型の人事評価制度をとっている企業であれば、年齢や勤続年数を重ねていても評価にはつながりません。
本人の努力だけではどうにもならない理由で評価が上がらない状況では、労働者のモチベーションは下がってしまうでしょう。
仕事のやりがいや達成感がない
仕事に対して魅力を感じられないことも、労働者のモチベーションを低下させる原因になります。
「第一志望ではない企業に入社した」「本当は別の業務に携わりたかった」など、希望に沿わない働き方をしている労働者は、仕事に楽しさを見出しにくいでしょう。
また、知識やスキルに見合わない仕事を割り当てられることで、働くことにストレスを感じるようになり、モチベーションが低下することもあります。
業務量が多すぎる
自分のキャパシティを超える業務を任されると、時間外労働の増加につながり、労働者のモチベーションを低下させることがあります。
十分な休息が取れずに疲労が蓄積すれば、心身に支障を来すおそれもあるでしょう。メンタルヘルス不調を起こせば、集中力や注意力が低下して、労働災害や業務トラブルにもつながりかねません。
労務管理が適切ではなかったと判断されれば、企業側の安全配慮義務を問われる可能性もあります。
労働環境の変化
トップダウン方式の経営で上層部の力が強い企業や、業績悪化にともなって経営改革が必要になった企業などでは、急な配置転換や業務内容の変更が行なわれることがあるでしょう。しかし、希望に沿わない配置転換は、労働者のモチベーションを低下させる原因になります。
また、個々の裁量が小さい職場では、労働者が自身の考えやアイデアを仕事に活かすことが難しくなります。
労働者が主体性を持って業務に取り組むことができない環境では、働きがいを感じにくく、モチベーションが下がってしまうでしょう。
労働者のモチベーション低下は、社会情勢とも関連がある
労働者のモチベーション低下には、日本の社会情勢の変化が影響していることも理解しておく必要があります。
かつての日本企業では、「終身雇用制度」や「年功序列制度」に基づき、年齢や勤続年数などを中心とした人事制度が主流でした。しかし、バブル経済の崩壊などによって国内の経済状況が悪化すると、欧米流の評価制度である「成果主義」が台頭するようになったのです。
成果主義とは、目に見える成果を人事評価や処遇に反映させる人事制度のことを指します。年功序列による人事制度を廃止する企業が増えるなかで、長きにわたる貢献が評価につながらないことに不満を感じる労働者も少なくないでしょう。
また、終身雇用制度が崩れ始めたことで、「安定した収入が定年まで保障される」といった安心感を得ることもできなくなりました。
高い成果や業績を上げ続けられる労働者であれば、成果主義でも仕事への意欲を高めることができます。しかし、そうでない労働者や、売上に直結しない業務を担当する労働者にとっては、モチベーション低下の要因になり得るでしょう。
従業員のモチベーションの測定方法
目に見えない従業員のモチベーションを把握するためには、モチベーションサーベイ(従業員満足度調査)の活用が効果的です。
厚生労働省では、魅力ある職場作りのために「顧客満足度」だけではなく、「従業員満足度」も重視することを勧めています。実際、顧客満足度と従業員満足度の両方を重視する企業は、顧客満足度だけを重視する企業に比べて業績が高く、十分な人材を確保できていることが明らかになっています。
従業員満足度調査を実施する際には、まず目的を明確にしたうえで、調査項目を決定することが必要です。業務内容や職場の人間関係、給与、福利厚生などへの満足度を測定するのが一般的ですが、目的や対象者の属性などによって調査項目は異なるでしょう。
調査方法には、アンケートやインタビューによるものがありますが、いずれの場合にも、対象となる従業員に調査の目的をわかりやすく説明することが大切です。
調査結果を集計・分析することにより、「従業員のモチベーションが高いのか低いのか」「どのような要因にモチベーションが影響されているのか」といったことを把握できます。調査結果については従業員にもフィードバックし、課題となる部分については解決に向けた対策を講じるようにしましょう。
従業員満足度調査については以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
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時間外労働の多い状況が慢性的に続いていたり、メンタルヘルス対策が不十分であったりすると、従業員は高ストレス状態に陥り、モチベーションが低下するおそれがあります。
そのため、事業者は高ストレス者への産業医面談の実施や、社内外の相談窓口の設置といった適切な対応を実施することが必要です。
「産業保健体制を整えてモチベーションサーベイを実施したいが、社内にノウハウがない」「従業員のモチベーションを高めるために、産業医を選任して産業保健活動を活性化させたい」といった企業担当者の方は、ぜひ以下の資料をご一読ください。
産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、「ストレスチェック」や「衛生委員会の支援」など、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を大幅軽減し、従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
モチベーションマネジメント|従業員のモチベーションを高める方法4選
モチベーションマネジメントとは、自社の従業員のモチベーションを維持・向上させることで意欲的に業務に取り組めるよう、企業側が積極的に働きかけることです。
モチベーションマネジメントでは、外発的動機付けと内発的動機付けの双方を組み合わせながら、従業員のモチベーションを上手に引き出すことが重要です。
ここでは、モチベーションマネジメントに役立つ4つの方法を紹介します。
明確で適切な目標設定を促す
業務について明確な目標を設定することにより、従業員のモチベーションを高めることができます。企業理念やビジョンを共有し、従業員自身の働きがどのような形で企業に貢献しているのかを意識しながら、業務内容や能力にあった目標を設定することが大切です。
また、数値で表すことができる成果重視の目標だけではなく、個々の能力やスキルの向上を重視する目標も、同時に設定するとよいでしょう。自身の成長につながる目標に向かって努力することにより、従業員はモチベーションを維持しやすくなります。
客観的な評価制度を取り入れる
人事評価の基準が不明瞭であったり、評価者が直属の上司だけに限定されていたりすると、評価制度に対する従業員の不満を招くおそれがあります。明確な評価基準を設けるとともに、多角的な視点で評価するよう心がけましょう。
評価した結果を伝えるときには、指導や助言なども併せて行なうことが大切です。「どのような点が良かったのか」「なぜ評価の低い項目があるのか」といったことを、根拠を添えて説明するようにしましょう。
また、業務に対する姿勢や職場への貢献度など、日頃の仕事ぶりをきちんと把握していることが、従業員に伝わるような声かけも効果的です。
仕事でミスをしたり、思うように成果が出せなかったりする従業員がいる場合には、ただ叱責するのではなく、解決策を一緒に考えるようにします。日常的に小まめな評価やフィードバックを行なっておくと、従業員が取り組むべきことをより把握しやすくなるでしょう。
従業員が挑戦・成長できる環境を整える
新しいことにチャレンジできる場を設けたり、能力開発の機会を充実させたりすることも、従業員のモチベーションを高めるのに効果的です。
「新規事業のアイデアを社内で公募する」「社内ベンチャー制度を設ける」といった取り組みを行ない、従業員が積極的に挑戦できる場を設けてみてはいかがでしょうか。
また、定期的にOJTやOFF-JTといった教育・研修を実施したり、自己啓発支援を行なったりすることも一つの方法です。
個々の適性に見合った人員配置を行なう
従業員のモチベーションを高めるには、個々の能力やスキルを十分に発揮できるよう、最適な部署へ配置転換することも有効です。ただし、配属先を決める際には、従業員が成長できる部署であることや、従業員本人の希望を考慮するようにしましょう。
また、配置転換に至った理由について、対象となった従業員が納得できる説明を心がけることも大切です。「どのような能力やスキルが活かせると考えているのか」「新しい部署でどのような業務に取り組んでほしいのか」などを伝えると、納得してもらいやすくなります。
従業員のモチベーション管理の際に気を付けること
最後に、従業員のモチベーション管理に取り組むうえで、気を付けたいことを確認しておきましょう。特に注意したいのは、以下の2点です。
給料や待遇面以外のやりがいを意識させる
好待遇や高収入といった外発的動機付けは、モチベーションを高めるのに有効であるものの、その効果は一時的です。従業員自身の成長にもつながりにくいため、内発的動機付けを併せて提供する必要があります。
「昇級のためにやむを得ず新しい業務に取り組んでいたら、興味が湧いて自発的に学び始めた」といったように、外発的動機付けが内発的動機付けにつながることもあるでしょう。仕事に対して達成感や貢献感、使命感などを持てるよう、職場環境を整えていくことが大切です。
従業員一人ひとりの話に耳を傾ける
モチベーション管理に必死になるあまり、従業員自身の気持ちが置き去りにならないよう注意しましょう。
さまざまな施策を実施しても、一方的な押し付けになってしまっては、従業員のモチベーションアップにはつながりません。まずは従業員の話をじっくりと聞いて、心理的な距離を縮め、信頼関係を築いていくことが大切です。
「自分の思いに耳を傾けてもらえている」といった安心感を与えることで、従業員の目線に立った最適なモチベーション管理の方法を見出すことができるでしょう。
まとめ
労働者のモチベーションが高まると、業務生産性の向上や離職率の低下につながります。
多くの企業で人材確保が難しくなっている昨今、いかに労働者のモチベーションを維持するかが、人材マネジメントにおける重要な課題の一つであるといえるでしょう。
また、モチベーションマネジメントに取り組むことは、企業の健康経営にもつながります。労働者の健康管理や健康増進に配慮している企業としての評価が高まれば、新たな人材確保もしやすくなります。
とはいえ、社内に健康経営に関する知識を持った人材がいない、といった理由で、実践できないでいる企業もあるでしょう。
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