ストレスなどが原因でメンタルヘルスの問題を抱える方が増加し、休職や退職するケースなども増えています。優秀な人材の確保や安定的な業務の運営のためにも、事業所全体で対策に取り組むことが必要です。
そこで、職場でのメンタルヘルスケアの理解の促進および対策として、「メンタルヘルスマネジメント検定」が注目されています。メンタルヘルス不調への対処法や予防策に関する基礎知識の習得を目的としており、積極的なセルフケアや心の健康状態に関する意識も向上するでしょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定とは
メンタルヘルスマネジメント検定とは、大阪商工会議所が主催する、メンタルヘルス不調への対処法や予防策に関する基礎知識の習得を目的とした公的な資格です。
近年、ストレスなどが原因でメンタルヘルスの問題を抱える方が増加しています。メンタルヘルス不調によって、従業員が長期にわたって休職したり、退職したりするケースも増えているため、事業所全体で対策に取り組むことが重要です。
従業員が主体的にメンタルヘルスマネジメントの知識を習得することで、業務環境を適切に整備し、あらゆる問題を未然に防げるようになります。また、心の健康状態に関する意識が向上し、積極的なセルフケア実施にもつながるでしょう。
【メンタルヘルス・マネジメント検定】3種のコース内容
メンタルヘルスマネジメント検定試験を受験するにあたって、特別な資格は必要ありません。求める専門性や職位および職種(対象)別に3つのコースが設定されており、いずれのコースからも受験することが可能です。
Ⅰ種(マスターコース)
人事労務を管理するスタッフや、経営幹部が対象となります。社内のメンタルヘルス対策を推進するのが目的で、3つのなかで最も難易度が高いコースです。
Ⅰ種(マスターコース)の内容を習得すれば、メンタルヘルスケアの対策計画を立て、産業保健サービスなど外部の専門機関と適切に連携を取ったり、従業員に向けてメンタルヘルスケアのためのトレーニングを行なったりすることもできます。また、社内に相談窓口を設ける際にも、この知識が大いに役立つでしょう。
Ⅱ種(ラインケアコース)
企業の管理職を対象にしたコースです。上司の立場から、部下のストレスや人間関係のトラブルなどに対処することを目的としています。
Ⅱ種(ラインケアコース)では、部下の心身の体調不良を未然に予防する、部下にメンタルヘルスの不調が見られた場合に迅速に対応する、といった力を身に付けられます。また、メンタルヘルス不調が原因で休職後、復職してきた従業員への適切なサポート方法を習得することもできます。
Ⅲ種(セルフケアコース)
自分自身への適切なメンタルヘルスケアを目的とした、一般社員向けのコースです。Ⅲ種(セルフケアコース)では、自分のストレス状態にいち早く気付き、積極的に対策をとること、周囲に助けを求めることの重要性を学びます。
具体的な出題内容は、メンタルヘルスケアの意義、基礎知識、セルフケアの重要性、ストレスの把握方法や対処法などです。
メンタルヘルスマネジメント検定試験の申込方法や費用について
本章では、メンタルヘルスマネジメント検定試験の申し込み方法や試験日、検定料金などについて解説します。
メンタルヘルスマネジメント検定の申込方法はインターネットから
メンタルヘルスマネジメント検定試験の申し込みは、個人・団体どちらでも可能です。
個人申し込みなら、申し込みの手続きも結果の確認もインターネット上でできます。
団体申し込みには、『公開試験(団体一括申し込み)』と『団体特別試験』の2つがあり、どちらも10人以上で申し込み可能となります。
公開試験(団体一括申し込み)はⅠ種からⅢ種まですべてのコースが受験できますが、団体特別試験はⅡ種とⅢ種のみとなっています。
メンタルヘルスマネジメント検定試験の日程
2022年度の試験日程は、以下のとおりです。
公開試験(団体一括申し込み)
第34回:2023年3月19日(日) ※Ⅱ種・Ⅲ種
※Ⅰ種と Ⅱ種、Ⅱ種とⅢ種の同日受験も可能。
※団体特別試験の日時と場所は、受験する企業、団体、学校で設定できます。
メンタルヘルスマネジメント検定試験の受験費用
メンタルヘルスマネジメント検定の受験料は、以下のとおりです。
Ⅱ種(ラインケアコース):7,480円(税込み)
Ⅲ種(セルフケアコース):5,280円(税込み)
メンタルヘルスマネジメント検定の出題内容と範囲について
ここでは、メンタルヘルス・マネジメント検定の出題内容と範囲について概要をⅠからⅢ種のコースの種別で解説します。
Ⅰ種(マスターコース)
Ⅰ種(マスターコース)の難易度:はⅡ種、Ⅲ種と比べて難易度が高く、専門知識・理解度だけでなく、論理的思考力も必要となります。人事労務を管理するスタッフや、経営幹部が対象で、習得することで、メンタルヘルスケアの対策計画を立て、産業保健サービスなど外部の専門機関と適切に連携を取り、従業員に向けてメンタルヘルスケアのトレーニングを実施できます。
出題範囲 | 出題形式 | 試験時間 |
---|---|---|
・メンタルヘルス概論 ・メンタルヘルス問題の予防 ・メンタルヘルス問題への対応 ・メンタルヘルス・マネジメント制度 ・メンタルヘルス・マネジメントの実践 ・労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 ・その他関連法令 |
【選択問題】(70%) L 4肢択一、5肢択一 【論述問題】(30%) L 記述式 |
180分 |
Ⅱ種(ラインケアコース)
部下の心身の体調不良を未然に予防する、部下にメンタルヘルスの不調が見られた場合に迅速に対応するなど、管理職として部下のメンタルヘルスを守るために必要な知識とスキルを習得できます。
出題範囲 | 試験時間 |
---|---|
・メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割 ・ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識 ・職場環境等の評価および改善の方法 ・個々の労働者への配慮 ・労働者からの相談への対応 ・社内外資源との連携 ・メンタルヘルスに関する基礎知識 ・労働者のメンタルヘルスを守るための法令 ・職場環境の評価と改善 ・ストレスマネジメント ・メンタルヘルス不調者への対応 ・産業カウンセラー等の社内外資源 |
180分 |
Ⅲ種(セルフケアコース)
セルフケアコースは、自身のメンタルヘルス維持・向上を目的としたコースです。自分のストレス状態にいち早く気付き、積極的に対策をとること、周囲に助けを求めることの重要性を学びます。
出題範囲 | 試験時間 |
---|---|
・メンタルヘルス概論: メンタルヘルスの重要性、概念、関連法令 ・ストレスマネジメント: ストレスのメカニズム、セルフケア方法、ストレスチェック制度 ・メンタルヘルス不調の理解: メンタルヘルス不調の種類、サイン、セルフケア ・セルフケア: 生活習慣、睡眠、運動、食事、リフレッシュ方法 ・コミュニケーション: コミュニケーションの基本、傾聴、アサーション ・職場環境: 職場環境とメンタルヘルス、ハラスメント対策 ・メンタルヘルス資源: 産業医、カウンセラー、相談窓口 |
60分 |
メンタルヘルスマネジメント検定の難易度と合格率について
メンタルヘルスマネジメント検定試験を受験するためには、試験勉強など事前準備が必要ですが、日々の業務との両立に不安を抱えている方もいるでしょう。ここでは、メンタルヘルスマネジメント検定の難易度や、必要な勉強時間について解説します。
メンタルヘルスマネジメント検定の合格率はどれくらい?
一例として、2021年11月7日(日)に実施された第31回公開試験の合格率を紹介します。
- Ⅰ種(マスターコース):19.8%
- Ⅱ種(ラインケアコース):46.4%
- Ⅲ種(セルフケアコース):71.2%
参考:結果・受験者データ|メンタルヘルス・マネジメント検定試験
メンタルヘルスマネジメント検定の難易度について
上記の合格率からわかるとおり、Ⅰ種(マスターコース)が最も難しく、Ⅲ種(セルフケアコース)は比較的簡単です。Ⅲ種とⅡ種はマークシート形式ですが、Ⅰ種はマークシートのほかに論述問題の出題もあります。
Ⅱ種には、細かい箇所の暗記が必要な問題も含まれます。専門用語やキーワードの意味を理解しておくことはもちろんですが、法律や制度で定められている数値などが問われる問題もあるため、覚えておくと安心です。
Ⅲ種は、常識の範囲で答えられる問題が多いため、難易度は低めです。テキストを読み、過去の試験問題を一通り勉強するだけで十分合格が狙えるでしょう。
メンタルヘルスマネジメント検定合格に必要な勉強時間とは?
各コースを受検するにあたって、合格するために必要な勉強時間の目安は以下のとおりです。
- Ⅰ種(マスターコース): 110時間程度
前述したように論述問題の難易度が高いので、かなりの勉強時間が必要です。早めに取りかかるとよいでしょう。 - Ⅱ種(ラインケアコース):40時間程度
一日1時間程度の勉強を1ヵ月続ければ、合格レベルに達することが可能です。 - Ⅲ種(セルフケアコース):15時間程度
一日2時間程度の勉強を1週間行なえば、十分合格が狙えるでしょう。
ただし、上記の時間はあくまでも目安です。各自に合った勉強方法で、十分な準備を行なうようにしましょう。
メンタルヘルス・マネジメント検定に合格するメリットはなに?
メンタルヘルス・マネジメント検定に合格するメリットとは何でしょうか。合格のメリットについて、具体的な効果を解説します。
職場のメンタルヘルス対策につなげられる
ストレスマネジメント、コミュニケーション、メンタルヘルス不調の理解など、職場におけるメンタルヘルス対策に必要な知識・スキルを体系的に学べます。
そのことにより、それぞれの立場の理解を深めながら、職場においてメンタルヘルス不調の早期発見や早期対応をすることができ、主体的に職場におけるメンタルヘルス改善に貢献できます。
社員ひとりひとりのメンタルヘルスが向上することで、周囲への影響もポジティブになり、職場の活性化にもつながります。
労働者のモチベーション改善による生産性UP
メンタルヘルス・マネジメント検定合格は、労働者のモチベーション改善による生産性向上に貢献できます。検定で得た知識を活かし、従業員個々の状況に合わせた相談対応、ストレスマネジメント研修、メンタルヘルス不調者への支援などを行います。
安心して働ける環境や個々の悩みに寄り添う姿勢は、従業員の帰属意識やエンゲージメントを高め、モチベーション向上に繋がります。また、メンタルヘルス不調による離職を防ぎ、人材育成コストを削減できます。
さらに、その取り組みは、企業イメージ向上にも貢献します。従業員の健康を重視する企業イメージは、採用活動や顧客との信頼関係構築にもプラスの影響を与えるでしょう。
社会の市場価値や経歴を高められる
メンタルヘルスに関する知識やスキルを身につけ、自身の市場価値を高めキャリアアップに役立てることができます。
ストレスマネジメントやコミュニケーション能力などのスキルは、様々な職種で役立ちます。
Ⅰ種合格者は、企業におけるメンタルヘルス対策の専門家として評価され、採用や昇進に有利に働く可能性があります。
Ⅱ種・Ⅲ種合格者も、メンタルヘルスに関する知識や理解を持っていることをアピールでき、採用や評価にプラスになることでしょう。
メンタルヘルスマネジメント検定の試験対策 2選
メンタルヘルスマネジメント検定の具体的な試験対策としては、以下のような方法があります。
セミナー・講座を受ける
商工会議所で、受験対策講座を受ける方法です。オンラインで受講できる講座もあるため、自宅で受講することも可能です。自分で勉強の計画を立てたり、集中して取り組んだりすることが苦手な方は、受験対策講座を受けてみるのがよいでしょう。
独学で勉強する
過去の問題集やテキストを購入し、独学で勉強することも可能です。独学であれば、自分のペースで勉強できる、講座よりも金銭的な負担が少ない、といったメリットがあります。自ら主体的に勉強時間を確保し、モチベーションを維持することができる方におすすめの方法といえるでしょう。
メンタルヘルスマネジメント検定と他の関連資格との違い比較!
メンタルヘルス・マネジメント検定と他の関連資格との違いについて、仕事内容など具体的な視点から解説します。
産業カウンセラーとの違いについて
メンタルヘルスマネジメント検定と産業カウンセラーは、いずれも職場におけるメンタルヘルス対策に役立つ資格ですが、メンタルヘルスマネジメント検定は、組織全体のメンタルヘルス対策に役立つ知識を習得できる検定です。一方、産業カウンセラーは、労働者の個別相談やカウンセリングを行う専門家です。
メンタルヘルスマネジメント検定は、企業の人事・労務担当者、管理者、一般社員など、メンタルヘルス対策に関わる幅広い職種で役立ちます。また、産業カウンセラーは、企業、カウンセリング機関、医療機関など専門的なカウンセリングスキルを活かせる職種です。
メンタルケア心理士との違い
メンタルヘルスマネジメント検定は、職場におけるメンタルヘルス対策に役立つ資格です。メンタルケア心理士は、個人へのカウンセリングに役立つ資格です。それぞれ目的と対象が異なります。
メンタルヘルスマネジメント検定は、 職場におけるメンタルヘルス問題の予防、早期発見、対応を行い、職場のメンタルヘルス対策を推進する人向けです。メンタルケア心理士は、心理学に基づいたカウンセリング、心理療法を施し、個人へのカウンセリングを行う人向けと言えるでしょう。
心理相談員との違い
メンタルヘルスマネジメント検定と心理相談員は、それぞれ異なる役割を持つ資格です。
メンタルマネジメント検定は基礎知識を学び職場におけるメンタルヘルスの予防に努めます。企業や組織におけるメンタルヘルス対策の推進を目的とした活動に携わります。
心理相談員は個人へのカウンセリングや相談業務に携わります。心理療法やカウンセリングなどの専門的な知識やスキルを活かして、相談者の悩みや問題解決をサポートします。
メンタルヘルスマネジメント検定の勉強や書籍の入手方法について
メンタルヘルスマネジメント検定試験の過去問題集や予想問題集は、書店などで購入できます。また、メンタルヘルスマネジメント検定を主催する大阪商工会議所では、公式テキストを販売しています。
本番の試験では、公式テキストから多くの試験問題が出題されるため、公式テキストを積極的に活用するのが合格への近道といえます。さらに、公式パンフレットにも各コースの過去問題が1問ずつ紹介されているので、こちらも併せて確認しましょう。
参考:大阪商工会議所|メンタルヘルス・マネジメント検定試験 公式テキスト
メンタルヘルス・マネジメント検定に関するよくある質問
Q. メンタルヘルス・マネジメント検定は何に役立つ?
メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場や個人の生活、社会全体など、様々な場面で役立つ資格です。
メンタルヘルスに関する知識や理解を深めることで、職場におけるメンタルヘルス問題の予防や早期発見・対応に貢献できます。
また、企業や組織におけるメンタルヘルス対策の重要性が高まっているため、メンタルヘルスに関する知識やスキルを持つ人材はますます求められているため、転職や昇進に有利に働きます。
メンタルヘルスに関する知識やスキルは、日常生活においても役立ち、人間関係の改善やコミュニケーション能力の向上に役立ちます。
Q. メンタルヘルス・マネジメント検定は国家資格?
マネジメント検定は国家資格ではありません。民間資格であり、メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所が主催する民間資格です。民間団体が独自に実施する試験に合格することで取得できる資格です。
メンタルヘルス・マネジメント検定は、国家資格ではないものの、企業や組織におけるメンタルヘルス対策の重要性が高まっていることから、近年注目を集めている資格です。
特に、1級合格者は、メンタルヘルス対策の専門家として高い評価を得られるため、キャリアアップを目指す方にもおすすめです。
Q. メンタルヘルス・マネジメント検定の1種・2種の違いは?
メンタルヘルス・マネジメント検定は、1種と2種で試験内容や難易度、対象者が異なります。
1種は、企業や組織におけるメンタルヘルス対策の企画・立案・実行・評価に携わる人材を対象とした上級試験です。2種は、職場におけるメンタルヘルス問題の予防や早期発見・対応に携わる管理監督者や人事労務担当者などを対象とした中級試験です。
メンタルヘルス対策の専門家としてキャリアアップを目指す方は1種、職場におけるメンタルヘルス問題の予防や早期発見・対応に携わりたい方は、2種の受験がおすすめです。
Q. メンタルヘルス・マネジメント検定の2種・3種の違いは?
2種は、職場におけるメンタルヘルス問題の予防や早期発見・対応に携わる管理監督者や人事労務担当者などを対象とした中級試験です。3種は、自身のメンタルヘルス維持や向上に関心を持つ一般社員などを対象とした初級試験です。
メンタルヘルス・マネジメント検定は、難易度により3つのコースに分かれています。 直近3回の平均合格率がⅠ種19.4%、Ⅱ種58.5%、Ⅲ種68.6%であり、Ⅰ種の難易度が最も高く、Ⅲ種が最も合格しやすい難易度です。